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麻雀と生態学 (7)その眼に映る景色は ~鷲巣麻雀~

概要
生き物は、いろんな眼で世界を見ている。
いつもと違う卓上。私はもはや、ヒトではない。


初回(概論)リンク↓

前回リンク↓

※注意
このコラムに登場する牌姿は、有志に許可を得て使用させて貰っている。
ルールが普段より複雑になっていることもあり、打牌の検討や場面の指摘自体はありがたい。
ただし、他家の批判や中傷だけは無い様ご注意願う。


導入
雀魂にて、アカギコラボが開催中。

コラボキャラの実装に加えて、特殊ルールの対局が追加されている。

供託を払って捨て牌を伏せられる『闇夜の戦』と、
手牌の3/4が透けている『明鏡の戦(通称:鷲巣麻雀)』の二本立てだ。

今回は、『明鏡の戦』の牌譜を交えたコラムとなる。
コラボは11/17の早朝まで開催されている様なので、ぜひ実際に遊んでみて頂きたい。


本題
目に見える情報が全てではない。
確かにその通りだが、視覚を馬鹿にする様では生物失格だ。

光は生き物にとって、最大級の情報源なのだから。

ヒトの目だって、ものすごく発達している。
もちろん、個体差(個人差)はあるのだが……

色彩を見分ける能力や、立体視で輪郭を捉える能力など。
ヒトの優れた特徴のひとつだと言えるだろう。

ただし、勘違いをしてしまっては良くない。
眼という器官は、ヒトの専売特許ではない。

光を感知する為に重要な、ロドプシンという光受容タンパク質がある。
似たものを含めると、ロドプシンは動物全体で8グループ・2000種類にも及ぶ(*1)。

まぁタンパク質とはそういうものではあるのだが、
それでも動物にとって、如何に光という情報が重要かを察することができよう。

動物よりも小さな単細胞生物だって、光を感知する仕組みを持っている。
ミドリムシの走光性や光驚動といった反応が良い例だ。

※Tips
走光性:光源へ向かうor遠ざかる反応
光驚動:光の強さが急に変わったときに、動きの向きを変えたり止まったりする反応

さらに言えば、植物なんて光とともにある存在だ。
光合成による独立栄養生物なんて、光を感知できなければ成り立たない。

いささか暴論ではあるが、
葉っぱだってある意味「眼」のようなものだ。

前置きが長くなったが、
生き物はそれぞれの眼で世界を見ている、という事だ。

明鏡の戦での麻雀は、いつもと違う景色が見られる。
それはまるで、ヒトとは別の生き物になったような気分を味わえる。

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8巡目に七対子を聴牌。普段の景色なら結構悩むかもしれない。
1枚切れだが場況が良さげな2m待ちか、生牌の字牌である發待ちか。

しかし、この日の私はいつもと違った。
發が3枚山に残っているという景色が、はっきりと見えていたのだ。

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打点も欲しいのでリーチ。
非透明牌での単騎待ちは、他家から待ち牌が見えないことも大きい。

(逆説的に、「非透明牌の所在が分かる牌はすべて安牌になってしまう」というリスクも存在する。)

なんにせよ、「發が持ち持ちとなっているのではないか」
といった不安は一切無い。見えているって素晴らしい。

さながら、ナミアゲハにでもなった気分だ。
ヒトと昆虫では眼の構造も、捉えられる光の波長も違う。

ヒトやクモのレンズ眼に対して、昆虫は複眼を持っている。
またどんな構造の眼にしろ、見分けられる光の波長(色覚)は生物の種によって大きく異なる。

ヒトの色覚はいわゆるRGB、赤緑青の3色性だ。
三色といえばマンピンソー。ややこしいおじさま方には、どうかお引取り願いたい。

一方でナミアゲハのそれは、RGBに紫外を加えた4色性と示唆されている(*1)。
字牌も加えて、景色がバッチリ見えている故の發単騎、というわけだ。

待ち牌選択だけではない。
危険回避の場面でもやはり、普段とは見え方が違っていると面白い。

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上家からのリーチが飛んできた場面。
普段なら、一段目リーチに戦々恐々となっていただろう。

しかし、今回は相手の手の内に気がついている。
同じ牌4枚のうち不透明牌は1枚だけ、という環境から待ちが推理できる。

一見すると不透明牌で58pが埋まった索子待ちか、
2枚とも索子を埋めての58p待ちになりそうだ。

ところが、河と自分の手牌にて、不透明な索子は2367sとほぼ消費している。
つまり上家の不透明牌は5sと5or8p、待ちは36sノベタン一択だ!

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こうなると、自分の放銃は無くなる。
3sが切れないので和了りは厳しいが、放銃による転落からは逃れられた。

眼の付けどころが変わったおかげで、視野が広がり危険を察知できた。
まるでシマウマである。なんだかサラダを食べたくなってきた。

ここまで調子に乗った事ばかり書いたが、情報量に比例してミスも増えた。失敗例もしっかりと載せておこう。

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ドラ3sを固めて持っている相手がいないのが見えており、
意気揚々とカン・ポン1000点のクソ仕掛け。8sが残っていない。

しかし、よく見ると上家が透明な3pを切って24pを残している。
不透明牌のうち1枚が3pであることは、容易に想像ができる。

残り2枚の不透明牌がマンズなら、ペンチャン3s待ちだ。
それなら誰も持っていないため、流石にリーチを打つだろう。

そうなると、不透明3sも抱えたマンズ待ちしか残っていない
上家の不透明牌、最後の1枚が……

1m:36m待ち
3m:16m待ち
4m:5m待ち
5m:47m待ち
6m:136m待ち
7m:58m待ち
といった具合になる。

ロシアンルーレットなんてやっている場合ではない。
こちらは1000点、相手は槓ドラが乗ってダマ7700点だ。

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警戒を怠ったシマウマは、しょせんライオンの餌食でしかない。
いつもと違う眼に慣れるには、もう少し経験を積んだ方がよさそうだ。


まとめ(おまけ)
見えている景色がガラリと変わる、麻雀の特殊ルールも一興だ。
まるで別種の生き物に生まれ変わったかの様な、新鮮な気持ちになれるだろう。

ちなみに。

画像7

どんな眼を持ってしても、未来は見えない。

蜜を蓄えた和了り牌という花がこんな山奥にあっては、
蝶の飛行ではなかなか辿り着けないかもしれない。

私はいろんな生き物になるという体験こそできたが、ついぞアカギにはなれなかった様だ。


謝辞
今回は自分の募集で立てた卓ではないにも関わらず、牌譜の使用を3名に快諾して頂きました。
本当にありがとうございます。

参考文献・図書
*1 動物の多様な生き方 1 見える光、見えない光 動物と光のかかわり
(編:日本比較生理生化学会、発行:共立出版)


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