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麻雀と生態学 (6)タカさん、ハトさん、断么九ドラ3
概要
予測、統計。
飲み物を片手に。そう、数字はオモチャだ。
初回(概論)リンク↓
前回リンク↓
※注意
このコラムに登場する牌姿は、有志の協力のもと採譜したものである。
今回の内容に於いて数字の議論は歓迎されるが、
打ち手の批判や中傷に繋がることの無い様、留意されたし。
本題
タカ派-ハト派ゲームというものがある。
(タカハトゲームなど、呼び方はいくつかある)
ざっくり言えば、シミュレーションゲームの一環だ。
掻い摘んで説明していこう。
※一部、わかり易くするためフランクな表現に置き換えている。
この分野のスジモノがもしご覧になっていたとしても、ご容赦願いたい。
資源(餌だったり、パートナーだったり)という表現が多いが、
ここではもっと簡潔に『利益(M)』と置こう。
利益Mをめぐって、個体同士が争う関係にあるとする。
ここで、個体の性格が2種類に分かれる。
攻撃的に利益を奪いに行くタカ派と、
穏便に済ませたがるハト派だ。
(図は無関係な一索。面倒ならば、次の画像まで読み飛ばそう。)
タカ派同士では五分五分のバトルが発生し、負ければ『負傷(H)』する。
また、タカ派を見ればハト派は撤退すると仮定する。
ハト派同士では、五分五分の我慢大会になるとしよう。
この場合、利益Mをめぐる争いは4通りのマッチアップが考えられる。
(左側を主人公として)
a. タカ派-タカ派
b. タカ派-ハト派
c. ハト派-タカ派
d. ハト派-ハト派
a. の場合
50%の確率で利益Mを得られ、同確率で負傷Hのダメージを受ける。
すなわち、『0.5M-0.5H』の収入となる。
b. の場合
ノーリスクで、『M』の収入を享受できる。
c. の場合
撤退。無理無理。というわけで、収入は『0』となる。
d. の場合
どちらかが利益Mを手にするが、特に失うものは無い。
したがって、『0.5M』の収入となる。
このシンプルな4つのケースだけでも、
結構いろいろなシミュレーションが可能だ。
集団内でタカ派とハト派の割合が決まっている場合、
総収入(専門用語を出すならば、適応度)が試算できる。
タカ派の総収入
=(ハト派の割合)*M + (タカ派の割合)*(0.5M-0.5H)
ハト派の総収入
=(ハト派の割合)*0.5M
MとHに様々な数値を入れて、
タカ派とハト派のどちらが有利かを計算して遊ぶことが可能だ。
大まかにまとめると、
M>H → みんなタカ派になっていく
M<H → タカ派はM/H、ハト派は(1-M/H)の割合に落ち着く
といった具合になる(*参考1)。
進化と自然選択についての、一種のシミュレーションという訳だ。
ここまで読んで、面倒くさいと思った方もいるかもしれない。
こんなシミュレーションを真面目にやるのは、確かに億劫だ。
膨大な統計も取れる、数字のゲーム……
そう、我々には麻雀があるではないか。
この牌姿。
上家の仕掛けと、下家のリーチ。
自身は生牌の中を切れば愚形1300のリーチが打てる。
追っかけリーチのタカ派と、ベタオリのハト派。
どちらが有利だろうか?
統計データを載せた文献も多くなっており、
こういう場合のシミュレーションも楽しくなっている。
下家のリーチだけならば、もしかしたら微妙かもしれない。
愚形でも子vs子の2600聴牌なら追っかけ、
ノミ手でも切る牌によっては打ったほうがマシな場合も、
というデータもある。(*参考2)
ただ、上家が仕掛けて危険牌を切って押している。
中が結構ヤバそうだし、現物は足りそうだ。
よってここは、ハト派に倣ってベタオリ優位といったところか。
何故攻めた。
逆に、追っかけて攻めるタカ派が圧倒的に優位な場合も考えられる。
このようなケースでは、計算すらしない方も多いだろう。
利益が負傷のリスクを上回る。
両面の時点で、安くても追っかけ有利というデータもある(*参考2)。
タカ派-ハト派ゲームでは簡単な数字を仮定しただけだが、
実際の麻雀においてはリーチだけではない、複雑な要素が存在する。
まず相手が2~3人いる。
そのうえで、打点、速度、守備力といった要素を計算しながら、
何切る、リーチ、鳴きといった行動を選択している。
それを膨大な回数繰り返し、
やっとたった一回のゲームが終局する。
我々は麻雀を打っているだけで、
とんでもない数字の暴力に耐えて、計算を楽しんでいる事になるのだ。
とどのつまり、麻雀は生態学に適している。
結局、これが言いたいだけだったりする。
まとめ(おまけ)
予測や統計で、数字をいじくって遊んでみよう。
その楽しさはどんな分野でも共通だ。
オーラス、下家は腹を括って3mチー。
自分の和了りで、二着を決めにいく。
全体の場の動きの少なさからして、おそらく順位期待値は最大だろう。
今回は上家への放銃となった。これでも2000点までなら良い訳だ。
開けてびっくり、そして絶望。
大激痛。この理不尽さがあるから、
麻雀というゲームはまったくもって憎たらしいし、面白い。
謝辞
今回採譜にご協力頂いた方々、誠にありがとうございます。
放銃シーンも貴重な記事の元となりました。
参考文献・図書
*1 生態学入門 第2版(編:日本生態学会、発行:東京化学同人)
*2 新・科学する麻雀(とつげき東北他 著、ホビージャパン)
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