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麻雀と生態学 (24)喰われて、広がる可能性


概要 
一牌食わせる”離れ業”。まったく、食えない奴である。


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本題

筆者が参加させて頂いている雀魂リーグ戦「LMリーグ」での出来事。
チームの初陣を任され、意気揚々と大三元逃しを披露
……などいろいろあったものの、トップ目で迎えた南三局。

親リーの直後、対面が2sチーした局面

親リーチに対して、単純な安全度であれば9mあたりが候補だろうか。
しかし、ここで私は白を選択。

対面のチーがタンヤオでは無く、役牌バック発進の場合は白しか考えられない。
親への対抗馬をつくり、自身の失点リスクを最小化する意図
での一打であった。

ドンピシャ


控室での応援配信でも、強者揃いのチームメイトからかなり肯定的な意見を頂けた。

余談ではあるが、なんとNAGA(ニシキ)でも打白推奨。
拾える要素から好手を捻り出せたときの快感は、何物にも代えがたいものである。

鳴きは「仕掛け」とも呼ばれるが、他にも「食う(喰われる)」と表現されることもある。

そんなこんなで、まさに今回の一打は”一牌食わせた”妙手だと言えよう。


そして、ちょうど最近「食われる」ことを逆手にとった戦略がニュース記事になったばかりだ。

神戸大の研究で、ナナフシが鳥からの被食をきっかけに生息域を広げる戦略をとっている可能性が示唆された。


被食で生息域を広げて繁栄する戦略といえば、
植物の種子散布が有名であろう。

果実を食べさせて、代わりに消化しづらい種子を糞として排出させることで
自身の種子を様々な場所に散布させる狙いである。

寄生植物のヤドリギにおいては、粘り気のある果実を鳥類に食べさせることで
糞を木の枝に擦り付ける行動を誘発するなどという、実に巧妙な戦略にたどり着いている(※1)。

こうした戦略が、植物だけでなく動物でも可能性はないのか?という
興味深い動機で行われたのが、今回の研究ということらしい。

ただし記事中にもあるが、動物でこの戦略を成立させるには結構な高さのハードルがあろう。
端的に言えば、「メスが食べられても卵が残って糞として排出される」というまぁまぁな条件戦をクリアしなければいけない。

そのためには、
・単為生殖が可能(=受精前のメス体内の卵が孵化可能)
・卵が丈夫で、消化されにくい
などが必須条件だ。
先行研究で、その可能性は示唆されていた様である。

ナナフシのような翔べない昆虫は、生息域を広げづらい。
そのぶん分化は生じやすく、分布距離と遺伝的差異に相関が生じやすいはず
……にも関わらず、離れた場所でも遺伝子型が似たりよったりだった
≒被食で生息域を広げることに成功している可能性が高い、というのが今回の研究内容の様だ。

あくまで緊急手段とはいえ、被食を戦略に組み込むというのは
生き物たちが膨大な時間をかけて進化してきた中で編み出した、見事な「逆転の発想」といえよう。

これだから、生き物の世界は面白い。
麻雀もまた然り。


では、また。


参考文献・図書

※1 生態学入門 第2版(編:日本生態学会、発行:東京化学同人)

Phylogeographical evidence for historical long-distance dispersal in the flightless stick insect Ramulus mikado” (= 飛べない昆虫ナナフシモドキにおける歴史的な長距離分散の分子系統地理学的証拠)
DOI:10.1098/rspb.2023.1708
Kenji Suetsugu et al. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences(CC BY)



↓次回コラム


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