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“人の幸せ”とは「変化することが幸せ、選べる期待」 #自分ごと化対談(プロ登山家 竹内洋岳氏)≪Chapter6≫

※本記事は、YouTubeで公開している自分ごと化対談【政治とリアリティ「下山の哲学」に学ぶいま、日本に必要なこと】について、Chapterごとに書き起こし(一部編集)したものです。

竹内洋岳氏が考える“人の幸せ”とは

<加藤>
さっきの話の延長線上で、次のピークといっても色んなピークがある。政治とか国をどうするかというところで、一番大事なのは「人の幸せとは何か」。

これは非常に抽象的なんですけれども、竹内さんはどうお考えか、伺いたいなあと思います。

<竹内>
「幸せ」という言葉は、誰もが知っている言葉なんですけど、口にすると恥ずかしいみたいなもので、なかなか考える機会がない。ですから、そう言われると、ちょっと考えなきゃいけない。
私は幸せとは常々変化するものだと思うんですよ。

昨日の幸せと今の幸せは多分違うでしょうし、望むものが違うでしょう。日本における社会も同じで、良くなることもあれば、悪くなることもあって、どんどん変化していくなかで、私たちの幸せというのもどんどん変化していくと思うんですね。

それは、私は「変化をしていく」ということが、幸せなんじゃないかなと思うんです。「これが幸せです」と言われるのではなくて、自分で何が幸せなのか、自分で感じた幸せを見つけていくとか、実現させていける社会が幸せなのかな、と思うんです。

私にとってみれば、山登りを始めた時には、ひとつの山を登ることが幸せだった。それを続けていくことで14座を登るという目標に向かっていけることが幸せだったかもしれないし。

これからの幸せっていうのは、私にとってはまだよくわからないですけども。それはなんなんだろうと、自分で「選び取れるんじゃないか」という期待が、私にとっての幸せかなあと思うんですね。

<加藤>
昔、大学生とか、あるいは総理だったような、そう言う意味で偉い人、企業の経営者、色んな人に「あなたにとって今までに一番幸せだった瞬間のことは何ですか?」と聞いたらね、みんな大した事を言わないんです。

それこそ、「受験に通った時」とか言うのです。良い年したおじさんがね。それから、仕事やって上司から褒められた時とか、一仕事終えてビール飲んだ時とか、温泉入った時とか、大体そんなんですよ。高校生に聞いたものと、60数歳の経営者に聞いたものも、大して変わりない。

だから、ある意味では、幸せとは「そんなもの」かもわからない。これというものが決まったものではなく、竹内さんがおっしゃるように、その時その時で思い返すと、何十年前のあの時はすごく幸せだったなあというのが、いくつか蘇ってくるということかもしれないですね。

<竹内>
これからも色々あるかもしれない。

<加藤>
そうですよね。例えば政治というのは、そういう瞬間がなるべく大勢の人にたくさんあるような日々を、つくるということなんでしょうけどね。

<竹内>
これが幸せですよという風に決められることが、実はすごく不幸せなような気がする。

<加藤>
そう!そうだと思いますよね。本当にそうだと思います。

<竹内>
豊かさとか、幸せっていうのは、もっといっぱいあっていいはずで、傍から見るとたいしたことのないことでも、本人からするとすごく豊かで幸せ。幸せとか、豊かさの種類が増えることで、おそらく人々は皆、幸せや豊かさを感じられるようになるんじゃないかと思うんですね。

<加藤>
そう言う意味では、今日はとっても、豊かで幸せでした。

<竹内>
私はすごく、リラックスできました。
どうもありがとうございました。

今日の一言「下山」

<加藤>
今日の一言は「下山」です。昭和、平成とずっと、竹内さんの話に例えると我々、ピークを、右肩上がりの頂上を追い求めてきたわけです。

実際には、昭和で多分ピークを打って、そこから下山だったのではないかと。ところが、政治家あるいは企業経済人、更には日本の多くの国民がまだ右肩上がりの夢を追い求めているような気がします。

令和になって、しかし右肩上がりの中にだけ幸せ、あるいは、本当の意味での豊かさがあるということではないのではないか。

竹内さんのお話のように、次に登るために下山をする。

8000m以上の山だけに価値があるということではなくて、それぞれに価値があるわけですから。右肩上がりから一旦下山をして、次の令和にどういう山に登るのか、それは、そんなに尖ってない、なだらかな山かもしれない。

しかし、そこにもまたいろんな味わいがあるわけでしょうから。そういうもののために、早く下山すべき時なのに、まだ上にあがろうとしているのは、大変危険なことですから。一度下山をして、次の山にきちんと登らなければいけない。

今日は、そういうことを竹内さんとの話から、学ばせていただきました。

ありがとうございました。

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