「食旅脳内メモリーズ」北東北編
飛行機が離陸する瞬間は日常から解き放たれる格別な瞬間だが、船が港から出発する時もまた、ゆったりとした時を感じながら非日常へ誘われていく味わい深い時だ。
船は函館から津軽海峡へ。
2018年家族四人テント持参で「北東北夏祭り」&「八甲田山・八幡平の山中にある温泉巡り」旅に出かけた。
快晴のフェリーデッキの上で爽やかな風を感じ、晴れやかな心持で旅が始まる。
発祥から数えると300年近い歴史を持つと言われる「弘前ねぷた」を観に弘前に入る。
友人と待ち合わせ、商店街のお店ごとに特徴のある屋台を覗き、山車が見える場所で祭り前の夕暮れ時間を堪能する。
右手には麦酒。
ねぷた絵師が描いた幽玄な美の世界。
扇型の平面絵がほんのり灯された灯りに映され、奥深い淡い美しさが祭りを彩る。
静のねぷた・動のねぶたと表現される。
弘前ねぷたの淡い美しさは、夏のお盆に先祖を迎え、過ごす前の時期にとても相応しい時間と感じた。
青森に移動し、八甲田山の北口に位置するキャンプ場で過ごす。
車で「酸ヶ湯温泉」や「蔦温泉」までもアクセスが良く、贅沢なキャンプ生活。
歴史ある趣深い温泉の建物や空間を味わうところから温泉の味わいは始まる。
お湯に入る前から、雰囲気だけで気持ちが温まる。
温泉までの八甲田・十和田ゴールドラインからの幻想的な山の景色も時間帯によって美しさが変化し堪能した。
友人からねぶたのハネト衣装も借りて「青森ねぶた」の準備万端であったが、その日は雨模様。
「跳ねてこそのねぶた!」と聞いていましたが、ねぶた師の作る壮大な人形灯籠の迫力、ハネトたちの作り出すリズムとグルーブを沿道からでも十分満喫。
翌日は秋田へ旅の舞台を移す。
八幡平最古の秘湯「蒸ノ湯温泉」へ。
つげ義春の漫画にも出てきたという温泉宿。岩魚の骨酒呑みつつ、流れる昭和の空気感味わう。
最終日は秋田市内にて提灯並ぶ長い長い竹竿を操る「竿燈まつり」の力強い妙技に酔いしれる。
小さな子供たちも伝統を引き継ぐように小さな竿燈で舞っていた。
ありがとう美しい北東北の夏の日々。
また子供たちと再訪したい。
(季刊誌@h 2020年秋号掲載)
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