「食旅脳内メモリーズ」トルコ編
トルコと言えば見所が宝石箱のように詰まったイスタンブールが有名だが、日本の二倍もの面積を有する広いアナトリアの大地には魅力的な地方都市も多い。
自然が作り出した奇岩が美しいカッパドキアでは壺入りケバブを、
夏のバカンスで国内外の人で賑わうエーゲ海沿いのイズミールでは新鮮な魚介料理を、
素敵な民族衣装で踊るダンスで有名な黒海沿いのトラブゾンでは鰯料理を、東側にはノアの箱船が漂着したという謂れがあるアララット山が美しくすぐ国境を越えれば隣国はイランやアルメニアというエルズルムではジャーケバブを、
南のウルファでは熱々で辛い挽肉ケバブを。
東西南北に魅力的な街と美味しいものが点在している。
物思いに耽りながら揺られるには丁度良いトルコの都市間長距離バス旅。
個人的に好きな地方都市は山間の小さな街サフランボル。
オスマン帝国時代には宿場町として栄えたが、鉄道のルートから外れ過疎化の道を辿るが歴史ある伝統的な木造建築群が並ぶ美しい街が評価され世界遺産に。
小さな田舎町の子供達は笑顔がたまらなく眩しい。
小さな町と思ってぐるりと歩くと意外と険しい坂道が多く、懐かしさを纏った木造の宿で一休み。ほっとする味わいのサフランティなどを味わいつつ、小さな市場を散歩。
イスタンブールなどではアンティークショップも洗練されていたが、この街のアンティークショップは時を忘れた品々が埃をかぶって眠っていた。
ちょっと邪悪な顔をしたサンタクロースのマトリョーシカがなぜか売っていてちょっと笑った。
そして夕暮れの時刻に街に響き渡るモスクからの礼拝への呼びかけ合図であるアザーンの声を聴きつつトルコ式の蒸し風呂ハマムへ。
こちらも歴史ある建築。
悠久の時を超えて温まり続ける風呂でしっかり温まった後は髭のおじさんの垢すり。
リフレッシュしてから食したレストランの食事は絶品。
ヨーグルトスープ・新鮮なサラダ・トルコピザ・羊肉ソテー、そして冷えたトルコビール。
この満足感はどこかで味わったことがあると思った。
日本の山間にある秘境温泉宿で温まり、地物ご飯と冷えたビールで満足したあの満足感。
それと同じだとその時思った。
(季刊誌@h 2019年夏号掲載)
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