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【中編】「セカンドレイプ」なんて言葉、本当は使いたくなかったのにな。

先日、このnoteで「真実にはオチも救いもないけれど、これが地方移住で受けた性被害と現実です。」というタイトルの記事を公開しました。

他人にとっては、触れにくい、とても関わりたくないようなテーマだと思います。
だからこそ「シェアもイイネもしてくれなくていいです。ただ、特に今、地方に携わる事業をしている人。田舎暮らしがしたい女の子に。ぜひ知ってほしいです。」という煽り文をつけてツイッターに投稿しました。

そして、その結果はみなさんの知るところだとも思います。

今回の件を受けて、発信をしていく身でありながら説明不足であった点の多くを感じました。

少し、背景をお話しさせてください。

「地方移住の文脈で語られるべきではない話」

そんな意見を数多く目にしました。もちろん、地方に住んでいる方や、地方創生に尽力している方にとっては「すべてをひとくくりにしてほしくない」という想いもあったと思います。

ですが、考えてほしかったのです。
確かに、田舎だって、都会だって、どこでだって起こり得る話です。しかし、この件が起こった原因に関してだけ言えば、”地方移住”がその多くを占めていました。
もしかしたら今日にでも、自分や、自分の周りの大切な人の身に降りかかる問題かもしれない。あなたが知らないだけで、もしかしたら今日目の前で笑顔で笑っていた人も、一人で泣いている夜があるかもしれない。
あえてターゲットを絞ることで、そんな危機感を持ってもらうことが今回の切り取り方における狙いでした。

「なぜ出るところに出なかったの?」その答えは、意味がないと思ったからです。

わたしは今、フリーライターという職業をメインに生計を立てています。
「どうして独立したんですか?」「独立する前にどんな準備をしたんですか?」そんな質問をされる機会も少なくはありません。

正直に言います。独立したわけじゃないんです。
会社を辞めざるを得なかった理由があるんです。

それは、2年以上前に知人男性から受けた強姦被害でした。

もちろん警察にも行きました。ですが、そこで受けた対応は「セカンドレイプ」と言われるような対応そのもの。
調書をとるために事細かに状況を聞かれたり、警察官を相手に、実際に遭った行為のジェスチャーをさせられたり。
「あなたはなぜそんな行為をするような男性と親しくしていたのですか?」「その男性はなぜあなたにそんなことをしたのですか?」なんて質問も投げかけられました。思わず「そんなことわたしが知るわけないじゃないですか!」と声を荒げたこともあります。

朝、何事もなかったかのように会社に行って、休憩時間の合間を縫って助けを求めに警察署へ向かい、そんな取り調べを受けた結果は「管轄が違うのでお住まいの地域の警察署に行くか、民事裁判を起こしてください」というものでした。

また同じことを聞かれたり、やらされたりする苦痛を考えると、それ以上行動を起こす気にはなれませんでした。

その後は体調を崩しがちになってしまい…会社に通えなくなったため、退職する運びとなりました。

少し体力が回復してきた頃、思い切って環境を変えてみようと決意したのが”地方移住”です。
時間を気にせず自然の中でのびのびと過ごすことや、新しい人間関係。そんなものたちが、確かにわたしの心のリハビリになってくれたからです。

あの記事で被害に遭った友人女性は、そんなわたしの前向きな様子を見て「自分も行ってみたい」と言ってくれました。
彼女のプライバシーのために詳しくはお伝えできないのですが、当時彼女は別の性被害に遭って仕事を休職中だったんです。

だからわたしたちは、決して警戒心を怠ったわけではありません。 露出の激しい格好をして相手を誘ったわけでもありません。距離を詰めすぎた、というわけでもないはずです。

自分たちの人生の風向きを変えてみたくて、もう一度人と関わることにした。ただそれだけだったのに。

なので、みなさんのおっしゃるところの「都会でも田舎でも関係なくそんなことは起こるし、そんな人はいる」というのは、自分の身を持って理解していたことです。

嘘だろ?創作だろ?と思う方も、中にはいるかもしれませんね。
わたしも、そうであったらよかったと何度も願ってきました。

そういったわけで、警察に被害届けを出したり、相手を訴えたりなんて気力は、わたしたちにはもう残ってなかったんです。

そして、もう一つ。そんなことになってなお、彼女が「この地域で頑張っている子たちの未来を邪魔したくない」と思いやってくれたからです。

地域も組織も、”人”でできている。それに勝る体裁なんて、どこにあるの?

後で聞いた話ですが、事件が起こった一週間ほど前に、外部から地域に短期滞在していた方への、当該の人物によるまた別のセクハラ騒動があったそうです。

わたしたちは、その時それを容認してしまった周囲のせいで加害者が味を占めてしまったのではないかと考えています。
「どうせ違う場所に帰るのだし」「今回はもっといけそう」そんなよこしまな気持ちが、少なからずあったはずです。

当該の団体には、何度も何度も話し合いを重ねて訴えてきました。お願いだから、被害に遭った人たちのためにもこれからは対処して欲しいと。
「本人がなにもしていないと言っている以上、あなたたちの話だけを信じることはできない」
そう言われるうちに、いつの間にか自分の方が”邪魔者”になってしまっていることに気づきました。

東京では、情の辛さこそあっても、付き合いのコミュニティを変えることは容易でした。
環境自体を大きく変えてみようと、地方へ移住する選択肢があることもわかりました。

しかし、人口自体が少なく、出かける足のない田舎に住み始めてしまったことで、それは叶わなくなったのです。

被害に遭ったわたしは疎外され、加害者はまるでイメージキャラクターのように宣伝に使われている。

どうかせめて。事実を知ってそれに気づいたならば、自分の身は自分で守って欲しい。そんなメッセージを込めて、あの記事を綴りました。

告発なんかじゃなく、ただの告白だったんです

実はあの記事には続きがありました。それは「中編」とタイトルにつけたこの記事のことではなく、わたしの人生に起こった、地方移住によって人生が好転した話です。
それを自分の誕生日である、来月の4月1日に公開する予定でした。

救いようのない現実から、希望のある未来だって起こり得る。次はそんなストーリーを伝えたくて、今このタイミングで書く必要があったんです。あのことは、あれで終わらせるつもりだったんです。

しかし、世間の反応は思ってもみないものでした。

面白半分で騒ぎ立てたり、事実確認もせずに特定の個人や団体の実名を挙げて糾弾したり。わざわざまったく関係のない、ネームバリューのある人物を取り上げて記事にするジャーナリストが現れたり。

わたしや友人が、必死になって守ろうとしたものとはなんだったのでしょう。

そして、身を削る想いで、散々思考を巡らせて、最大限の配慮をして、やっとの想いで起こした行動に対して、「もっと〇〇のことを書け」と追及するのは残酷なことだとは思いませんでしたか?

都会も田舎も関係ない。未来に向かう権利は全員にある

本当は、誰も巻き込むつもりなんてありませんでした。これ以上なにか動いてほしいなんて望みは、すでに諦めきっていました。
ただ、騒ぎがあまりにも大きくなってしまったこと。当該の団体の「公的機関へ相談する」との発表を受けて、自らコンタクトをとることにしたのです。

自分が出すところに出されることになったとしても、辞さないと決めてそれを伝えました。覚悟を、責任を持って起こした行動に対して、それを取り下げたり、逃げたりする選択肢はわたしにはありませんでした。

しかし、新たな発表にあった通り、これからは最大の善処をしてくれる予定であると聞いています。

そう思い直してもらえたのはきっと、この件に関して心を寄せてくださったみなさんのおかげだと思います。

「自分も地方で拠点運営をする身として、男という誰かを守るべき立場として、身を引き締めていくキッカケになりました。」
「地方とは関係ないけれど、同じような目に遭ったのに今まで言えずにいました。」
そんな声をあげてくださった方々がいたからこそ、ズレていた論点が修正されたのだと信じています。

また、不本意ながら、この件をお祭り騒ぎのように広めていった外野の方々にも、結果的にありがとうございますと伝えておきます。
ここまでの事態にならなければ、この件に関わったはずの人たちに考えを改めてもらえる機会はおそらくなかったはずです。

最後に、どうしても伝えておきたいことがあります。

この「中編」を書くにあたって、被害に遭った友人から頼まれたことがあります。
それは、世の中の頑張っている、または頑張らなければいけなくなってしまった女性に向けて、以下のメッセージを発信して欲しいということです。

◆◆◆

・被害に遭ったら、とりあえず3日以内に警察か婦人科に行ってDNAをとってもらうこと。・すごく気持ち悪いけど、お風呂に入らずにいくこと。・それができなければ、着ていた洋服などに相手の体液や毛が付着していれば証拠になるから、脱いでビニールに入れて保管しておくこと。
警察は証拠があれば動いてくれるから。証拠を残すことを最優先にして欲しいと発信してもらえないかな??
やっぱいろいろ心残りは証拠がないことで信用されないことなんだよね。 もちろん信用してくれる人もいるんだよ!!ひよりちゃんみたいにね。
女子でも、やりたいことを我慢しないで生きていける社会であってほしいよね。

◆◆◆

わたしたちは、思いがけずに二度も”被害者”という立場となってしまいました。
今これを読んでくれているあなたの人生においては、一度だって”被害者”にも”加害者”にもなって欲しくはないのです。

どうか、関係がないとは思わずに、頭の片隅にでもいいから「こんなことがあったんだ」と覚えておいてはいただけないでしょうか。

そして…自分の中で想定していた「後編」ですが、事態が大きく変わってしまったため、公開することをためらっていました。
ですが彼女から「被害に遭った人は、自分を責めて、なんとなく不幸に生きなければと思ってしまう。だからその話を聞いて、未来に凄く希望を持てたよ」という言葉をもらうことができました。

だからやっぱり、書こうと思います。
だってそれは、誰かの勇気にもなることかもしれないから。

求人の時のように、本当は150円で販売をする予定でした。それは、届けたい層にだけ、確実に届けることができる方法だからです。
今回の件を受けて、なおさら「読者に情報を自分で選んでもらうこと」の重要さが身に染みてわかりました。
でもちょっと、どうするかはまだ考え中です…(笑)

だからその暁には、短絡的に「金かよ!」とは思わずに「この人もいろいろ考えたんだなあ」と感じてくれるとありがたいです。

次にお目にかかる時は、きっと明るい話題でありますように。

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さとうひより
原稿料代わりに・・!?