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初めて一人旅をした時のこと。
とある駅のホテルに宿泊するため駅から歩いていると
焼き鳥屋からいい匂いがしてきて足が止まった。
店先で何種類もの焼き鳥が焼かれ並べてあった。
持ち帰りのお客さんが何人か待っていた。
店に貼ってあった焼き鳥メニューを指差しながら思い切って店の親父さんに
「カツラ」ってなんですか?と聞いてしまった。
「それはカシラ」
「カシラって何ですか?」
「豚の頭の部分」
この忙しい時に「カシラ」の事を思いっきり「カツラ」と言ってくる
得体の知れない女を、面倒臭い奴が来よった、という顔の
親父さんを含む店員達とお客さんが見ていた。
焼き鳥を食べていた仕事帰りのおっちゃんがその空気を読み「お勘定」
と言って帰ってしまった。
私は実は「カツラ」と言ってしまった時点でおかしな空気に気づいていたが
もうこの際後の祭り、カシラを注文してしまった。
焼き鳥が焼かれている台からここぞとばかり煙がモクモク私の方へくる。
帰れサインはもう今の私には効かない。
この店を見つけたのも何かの縁、滅多に来れないから
我慢するのは勿体無い、ここまで来たからにはカシラを食べる。
タチの悪い客になった私は初めて「カシラ」を食べてみた。
美味しい
姉からのお下がりの綺麗めコートとよそ行きの服は見事に焼き鳥炭火臭にモクモク
巻かれていたがもうそんな事は「カシラ」を頼んだ時から色々覚悟していた。
私の中で後悔と期待が戦いながら
カシラをもう1本と軟骨、チキンボール(つくね?と書いていた)
とおしんこを買ってホテルへ向かった。
これもおひとり様の強みなのか。
自分でも恐ろしい。