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マイクラでリシテアが丹精込めてつくったトラップタワーをマリアンヌが壊してしまう話

「ふぅ。よし、ようやく完成したわ。こうやってちゃんと動いてるのを見ると中々感動するものね……」
「あれ、あそこにいるのはリシテアさん……?」
 見慣れない道があったので辿ってみると、開けた場所に大きな建造物ができていた。遠目に見ていると、リシテアさんが周囲を確認していたので、恐らく彼女が作ったのだろうか。

 と、そうしていると向こうも私の事に気が付いたのか、通話をかけてきた。

「マリアンヌ! 良い時に来ましたね。ちょうどみんなにも見せようと思っていたんです」
「これは……?」
「トラップタワーです」

 トラップタワー……あの、なんだか色々な仕組みでアイテムを集める設備……の筈……。私には難しくてよくわからないけれど、とにかく大変な事だけはわかるので、素直に凄いと驚いてしまう。

「凄いですね、リシテアさん……こんなものを作ってしまうなんて……」
「仕組みさえわかればこれぐらい、マリアンヌにだって作れますよ。
 ……まあ、モノが大きいので相応の手間はかかりますが」
「そうですか……? 私はそういうのはよく、わからなくて……。
 作り方を見ても、複雑すぎるとどうもうまく……」
「はぁ……それはねマリアンヌ。あんたが上っ面だけ見て作ろうとするから失敗するんですよ」
「う、上っ面……?」
「そうです。ちゃんとどこがどういう動きをするのか理解して、その仕様に従って考えながら組み上げれば、設計図を見なくたって作れるんですよ。……いえ、流石に設計図は用意しますが。
 あんたは頭が悪いわけじゃないんだし、そのくらい勉強すればすぐですよ、すぐ」
「そ、そうですか……?」

 リシテアさんがはきはきと褒めて……? くれるので、私もたじろいでしまった。
 そして、さらりと勉強と言ったが、彼女はこのゲームでもちゃんと勉強しているらしい。以前から努力家だとは思っていたが、彼女はそういう性質なのだろうか?

「とにかく! この際いい機会です。私が丹精込めて作ったこのトラップタワーの構造を解説してあげますので、ついてきなさい。いいですね」
「……? え? ええ!? か、解説ですか……!?」
「そうです。この外壁は見かけだけなので、内部の湧き層から見ていきますよ。ほら、ついてきて」
「え、あ、は、はい……」
 そうして、有無を言わせないリシテアさんとのお勉強会が発生してしまった。
 私、そこまで作る予定はないのに……。


「ここが湧き層です。ここの構造は……」

「ここは移動の為の設備ですね。単純な仕掛けで……」

「ここは処理層です。上から落ちてきた……」

「ここも見ておきましょう。回収したアイテムを……」

「え、えっと……」
 リシテアさんの解説にたじろぎながら付いていきながら、私はえっと……やその……から言葉を続けられずに、結果としてただ見ているだけになってしまった。
 けれど、どうやら次で最後らしい。勉強したかいがあったのか……多少はわかる? ようにはなったけれど、活かせるときはくるのでしょうか……。

「そしてここは……本当なら塞ぐはずなんですけど、みんなに紹介する時の為に立ち入れるようにしてある、湧き層から処理層への輸送ルートですね」
「こ、これが……凄いですね」
 とても大きな空間で、思わず身がすくんでしまう。
「ああ、気を付けてくださいね。塞ぐって言うのは落ちると上がれないからなので」
「え?」

 と、その忠告を聞いたのが悪かったのか。
 あるいは、忠告を聞かなかったのが悪かったのか。
 私はその言葉に気を取られて、足を滑らせて落ちてしまった。

「あ、あああ! だ、大丈夫ですかマリアンヌ!」
「ええと……だ、だいじょうぶです……すぐに上がりますから……」

 幸い水流だったが、落ちていたら不味いと思い、急いでブロックを置き、上に上がろうとする。

「あー! そこに置いちゃダメです! 水の流れがあるんですよ!」
「え、ええ!? す、すみません……。じゃあこっちを……」

 慌てて壁を壊して上がる方に切り替えて、すぐ横の壁を壊して足場代わりにする。

「ああああ! そこもダメです! そこには回路があるので水が……ああ……」
「え!? ええ!?」

 そう言われてもそこからどうしようもなく、壊した壁の上で立ち尽くしてしまった。リシテアさんは『ああ……』と言ってから黙ってしまった。
 そうして、すっかり綺麗な形をしていたこのトラップタワー内部が、ぼこぼこになってしまった。

「すみませんリシテアさん……私なんかに構ってくれたせいでこんなことに……」

 思えば、どうしてできてすぐの所を見つけてしまったのだろう……あの時私が関わらずにいれば……。
 いえ……そもそももっと強く断るべきだったのです……私なんかが貴重な時間を奪ったせいでもっと時間を奪う事に……。

「私のせいですよね……あの、なんとかして直しますので……」
「……さい」
「え……?」
「私を! 舐めないで! ください!」
「え、ええ?」

 そう言って彼女も下に降りてきた。
「何をそんな不幸を背負った態度でいるんですか! いいですか、こんなの大したことじゃないんです!」
「で、でもこんなに壊れてしまって……」
「あーもう! あんたは上に上がって見ててください! ここから復習ですよ!」
「ふ、ふくしゅう……?」

「ここの水流はこことここを止めてここから置きなおすだけ!」
「お、おお……」

「ここは水で壊れてるけどこうやって置きなおすだけ!」
「な、なるほど……」

「ここの回路は……頭に構造が入ってますので置きなおすだけです!」
「そ、そうなんですか……!」

「はぁ……はぁ……見ましたか。あんたがやったことなんて大したことないですよ! わかりましたね!」
 なんと、瞬く間に解説をしながら全ての壊した箇所を巡って次々と直してしまった……!
 その間呆気を取られて見ている事しかできなかったが、まるで頭に設計図が入っているかのように、少しの淀みもなく私が壊す前の形に戻してしまった。
「す、すごいです……!」

「努力! してますから!」
 リシテアさんってすごい、改めてそう思った。

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