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世界の平和に貢献するために、今すぐにでもできること【キャッシュレス決済を使おう】
「日々、世界平和」マガジン運営者のはるなです。
今回は、私たちが街で買い物をする時、飲食代を払う時、友達と勘定を割る時などに、キャッシュレス決済を選ぶのと、現金決済を選ぶの、どちらがより世界の平和に貢献できるか、考えたいと思います。
※筆者がこれまでに得た知見をベースにし、研究機関の論文や企業HPも参考にしながら執筆しています。他にも様々な視点や意見、事実があると思うので、ぜひ教えて頂きたいです。
1.自然環境面から考える
現金の生産には資源が必要
自明ですが、現金には形があります。
日本の硬貨に使われている金属は、アルミニウム、銅、スズ、亜鉛、ニッケル、紙幣に使われている植物は、みつまたやアバカ(マニラ麻)です。また、製造の過程で薬品との混ぜ合わせが行われます。(※1)
ちなみに世界には合成樹脂を使用したポリマー紙幣(プラスチック紙幣)を用いている国もあります。ポリマー紙幣のメリットデメリットについてはまたいずれ…。
私たちが現金を使い続けるということは、金属や植物などの’’資源’’を、消費し続けるということです。
銀行券(お札)の平均的な寿命は、一万円券では4〜5年程度です。五千円券と千円券では、つり銭などでやり取りされることが多く、傷みやすいこともあって、1〜2年程度となっています。
世の中を流通して日本銀行に戻ってきた銀行券のうち、汚損などにより再度の流通に適さないものは、日本銀行の本店または支店において、細かく裁断されます。
裁断により発生する裁断屑については、現在、トイレットペーパーなどにリサイクルされています。それ以外の裁断屑は、一般廃棄物として、各地方自治体の焼却施設において焼却処分されています。
キャッシュレス決済の使用により、私たちが現金を使う機会が減れば、それだけ現金の流通量は減り、これらの資源の消費量が減ることに繋がります。
また、現金を人々に行き渡らせるための配送、ATMの稼働をしなくてもよくなるため、これらにかかるコストも削減できます。
よって、現金決済よりもキャッシュレス決済を使う方が、自然環境に優しく、持続可能的であると言えるでしょう。
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硬貨に使われる金属はどこから?
先ほど、日本の硬貨に使われている金属の話をしました。アルミニウム、銅、スズ、亜鉛、ニッケルの5つです。
もう一歩踏み込んで、これらの金属がどこからきているのかを見ていきたいと思います。
鉱物(≒金属)を生産するためには、その資源が眠る鉱山を採掘しなければなりません。鉱山開発は、環境や生物多様性に大きな影響があります。
そして、日本では鉱物資源(≒金属)を、ほぼすべて輸入に頼っています。
先ほど羅列した硬貨に使われる金属の中の一つ、かつレアメタルに分類されるニッケルを例に考えてみましょう。
日本では、ニッケル鉱石を主にフィリピンとニューカレドニアから輸入しています。(※3)
もちろん輸入されるニッケルのほとんどは、硬貨に使われているわけではありません。自動車やスマートフォン、医療機器、調理器具などに使われています。
そのため、現金を使わなくなることがダイレクトにニッケルの消費量を減らすことに繋がるか?と問われたら、そうではないのかもしれません。しかし、無関係でもありません。ニッケルの消費量を減らすためには、もっと他にもできることがたくさんありそうですが、それは別の機会に論じたいと思います。
フィリピンで進むニッケル鉱山の拡張計画
ほとんどのニッケル鉱山は、自然林のある場所にあるため、ニッケルの採掘が進むと、荒廃や森林破壊が進行します。
さらに、ここに暮らす住民の権利も認められていないと言います。
たとえば何かの計画が、住民の暮らす土地で行われる時、決定が住民によって行われるのではなく、権力者によって行われています。
鉱山開発による自然環境への影響の害を被るのは、ここに暮らす人たちなのに。鉱山開発によって影響が出るのは、地域の人たちの生活なのに。
ニッケル開発事業で危機に立つニューカレドニアの生物多様性
鉱山開発は探査段階、採掘・操業段階で、環境・生物多様性に多面的に大きな影響があります。この現場では
1)森林破壊
固有種が90%という貴重な森林を広範囲にわたって破壊する。
2)精錬関連の影響
硫酸を大量に使用し、操業開始直後に硫酸流出事故が起きている。
3)廃棄物問題
廃硫酸を含む廃棄物が年500万トン以上出て、それを堆積させたテーリングダムの上澄み水を海底に流す。
4)赤土問題
雨が降ると採掘場から海まで流出し、川や湿地、サンゴ礁を汚染する。
など多くの問題があります。
これらの問題による害を被るのは、もちろん現地の人たち。
この地に暮らす先住民たちは、ニッケル開発事業に反対し、抵抗運動をしますが、強大な資本力と行政府、フランス本国の力で抑え込まれ、分断が起きてしまします。正しくは、分断させられてしまいます。
強大な資本力と行政府、フランス本国の力で抑え込まれ、先住民族やNGOが分断されました。若者には「仕事を与える」「電気製品や車を買って豊かになれる」と言って協力させ、世代間でも分断させられています。
しかし、何十年かして資源がなくなれば、鉱山からは撤退し、後に残るのは荒廃した土地と貧困のみとなってしまいます。
500円玉、100円玉、50円玉を見て
![](https://assets.st-note.com/img/1693659134935-kYczjDVqun.jpg?width=1200)
日本の硬貨でニッケルが使われているのは、500円玉、100円玉、50円玉の3種類です。
これらを使い続け、消費し続けるということは、間接的に、フィリピンで進むニッケル鉱山の拡張計画や、ニューカレドニアで生物多様性が危機に立つ状況を、後押しすることに繋がるのではないでしょうか。
遠い土地に暮らす人たちのことや、遠い土地の鉱山のことを考える機会は、日常生活であまりないかもしれません。
しかし、硬貨は、日常生活で目にします。手で触れます。
そのタイミングで、立ち止まって、意思決定してほしいのです。
現金ではなく、キャッシュレス決済を使おう、と。
日々の買い物や友達との割り勘で、カードで払うこと、QRコード決済を使うこと、それが、これらの問題にNOを突きつけることに繋がります。
2.衛生面から考える
現金に付着している汚れ
新型コロナウイルスの流行により、現金を使う際の衛生上の懸念が表面化してきているのではないのでしょうか。
2020年末、世界保健機関(WHO)が「紙幣がコロナウイルスを拡散している可能性があるため、現金の代わりに非接触技術を使用するように」と提案したことは、記憶に新しいかもしれません。
過去には、ぎょう虫卵が接触感染することから、硬貨および紙幣に感染源として存在するぎょう虫を検索するという研究も行われました。(※4)
現金に付着する汚れには、人々の皮脂や体液、細菌や微生物、ウイルスなどがあります。これらが食中毒や腸炎、感染症の原因になっている可能性も示唆されています。(※5)
衛生面から考えても、現金決済よりもキャッシュレス決済を使う方が、私たちが感染症にかかるリスクも減り、健康でいられる確率がより高くなるため、私たちに降り注ぐ心身の負担も減ると言えるでしょう。
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3.店側の負担から考える
手数料の問題
キャッシュレス決済を使用する際、その手数料はいったい誰が払っているのでしょうか。
答えはお店側です。消費者がキャッシュレス決済を使用する度に、その決済金額の数パーセントを、お店側が手数料として負担しています。
つまり、お店側からすると、現金決済の場合100%入ってくるお金が、キャッシュレス決済の場合には、96~99%しか入ってきません。(※決済サービス毎に手数料は異なります。)(※6)
たかが数パーセント、されど数パーセント。売上が大きければ大きいほど、その差分も大きくなり、無視できない金額になるのではないでしょうか。
指標で読み解くスーパーマーケットの実像 キャッシュレス決済は手数料に見合うだけのメリットがあるか|書誌詳細|国立国会図書館オンライン (ndl.go.jp)
一方で、「現金でも入金、小銭の用意などのコストがあり、(キャッシュレス決済の手数料が)2.16%(以下)なら現金を上回るメリットがある」というお店側の声もあります。(※7)
客単価・客足への影響は?
キャッシュレス決済により、客単価の増加も期待されると考える方もいるかもしれません。しかし、2021年の経済産業省の調査(※8)によると、導入率が高いのは数千円程度の単価帯であり、キャッシュレス決済の導入により客単価が増加するとは、言い切れなさそうです。
しかし、客足についてはどうでしょう。
現金決済のみを採用している店舗への来店をやめた経験がある消費者が3割を超えているという調査や、現金しか使えないことで、困った経験がある人が59.1%いるなどの調査結果が出ています。
キャッシュレス決済を利用している人の場合、「支払いが現金のみ」という理由でその店舗への来店を取りやめた経験がある、と答えた人が3割を超えた。
現金払いしかできずに困った店舗、場面等があったとする回答者は59.1%
私自身も現金を必要最低限しか持ち歩かなくなり、日常の買い物は9割以上キャッシュレス決済を使用しています。現金しか使えないことで、購入を取りやめた経験もあります。
キャッシュレス決済を導入していないことにより、店側が不利益を被っている事実も、否定できないのではないでしょうか。
事業者にとっては、キャッシュレスを単なる決済の手段の効率化としてだけ捉えるのではなく、自社の顧客データ分 析に活用し、より進んだマーケティング等を通じた売上・利益向上に生かしていくことが望ましい
4.私たちの生活と持続可能性から考える
私が大なり小なり日々世界平和のためにできることを考える際には、その生活が持続可能か?という視点をもつようにしています。
たとえ世界の平和に貢献するためとはいえ、それを実行することで私たちの心や体が疲弊していまうのであれば、それは持続可能ではなく、いつか限界がきてしまうからです。
現金決済のメリット:お金の管理がしやすい?
現金決済のよく言われるメリットとして、お金の管理がしやすいことが挙げられます。財布に入っている現金を確認すれば、あとどれくらい残っているか・どれくらい使ったのかが一目瞭然という主張です。
現金が自分のもとから離れていくシーンを目にすることで、使った実感を得られます。この実感は「ちょっと使いすぎたな」「今月はそろそろ節約しないと」と、消費行動をコントロールする抑止力にもなります。
たしかにこれは一理ある主張といえるでしょう。
しかし、私たちはホモサピエンスです。
ホモサピエンスが、お金(貨幣)というフィクションを信じることができる種族であったからこそ、貨幣というものが浸透しているわけです。
そして、名著『サピエンス全史』でユヴァル・ノア・ハラリは、私たちはそのフィクションを塗り替えることができる種族だとしています。(※9)
すなわち、私たちは貨幣そのものを使わずとも、画面上の数字を、お金と認識し、そこに価値を見出すことができる種族だということです。
現金を使わずとも、その数字の増減を見れば、あとどれくらい残っているか・どれくらい使ったのかは一目瞭然です。ぜひとも毎月の支出と口座残高を確認する習慣を身につけてください。
私たち消費者側もマインドを変えることが大切です。そこで最も重要なのが「お財布からおカネを出すシーンを体験しなければ、支出を実感できない」という思考からの卒業でしょう。
現金決済のデメリット①脱税や犯罪に利用されることもある
現金による取引では匿名性が確保されるため、その特性から脱税や犯罪に利用されることもある。
誰がいつどこでどれだけお金を使ったか、現金決済ではデータとして記録されません。
裏を返せば、お金の流れを知られたくない人にとっては、非常に扱いやすいということです。そのため、現金決済は脱税や犯罪に利用されることもあると指摘されています。
現金決済のデメリット②インターネット決済での手数料がかかる
ネット通販を利用する際、決済方法はいくつか提示されることが多いですが、現金払いの場合、商品代金とは別に、手数料が必要になるケースがほとんどです。
そのため、他の決済手段を使えば払わなくていいはずのお金を、現金決済にするという理由だけで、払わなくてはいけません。
インターネットでの買い物の際、現金払いは別途手数料が必要になるケースがほとんどです。
例えば、カード決済であれば商品代だけの支払いで済むところ、現金払いだと代金引換手数料や振込手数料としてプラス数百円が必要です。
現金決済のデメリット③都度ATMでお金を引き出さなければならない
現金が手元にない場合、ATMまで足を運ばなければなりません。近くにATMがあるとも限らず、探す手間がかかります。
さらに、時間帯や対応銀行によっては、現金の引き出しに手数料がかかることもあります。
現金決済は持続可能ではない
現金を使い続ける以上、私たちは、時間やお金を必要以上に削り続けることになります。また、1.自然環境面から考えるでも述べたとおり、現金の生産・流通のコストも持続可能的ではありません。
つまり、私たちの生活と持続可能性から考えても、現金決済よりもキャッシュレス決済を使う方が、私たちに降り注ぐ負担が減ると言えるでしょう。
災害時は現金しか使えなくなることもあるため、備えは必要
最後に一つだけ注意です。
ここまで私は、現金決済よりもキャッシュレス決済を使う方がいいと結論づけ続けてきました。
しかし、自然災害の多い日本に住んでいる私たちは、常に災害に備えておくべきです。
クレジットカードや電子マネーは、基本的には電源や通信が絶たれればその時点で利用できなくなります。もし使える可能性があるとすれば、QRコード決済ですが、インターネットが遮断されれば、それも無力です。(※10)
災害時には復旧に数日~数週間要することも稀ではないため、その間生活できるだけの現金を、手元に用意しておくべきとも言えます。
キャッシュレス化が進む東京中心部でも,災害が想起される降雨事象では引き続き現金需要があり,リスクに備えた早めの資金確保を行う傾向がある
私自身は、普段の買い物は全てキャッシュレス決済で行い、友人との割り勘も基本的にはQR決済サービスを使用しています。
しかし、災害時に備え、自宅にある非常用持ち出し袋には、数週間の飲食費をまかなえる分の現金(紙幣よりも硬貨多め、なぜなら災害時にはぴったりのお釣りがもらえるか分からないから)が入っています。
財布の中にも、少しばかりの現金を常にいれています。
リスクヘッジです。
昨今の大災害を教訓として分かったことだが、“キャッシュレス原理主義”的な考えでは、突発的な事態には対応が難しい。現金やコード決済のような代替手段を用意しておき、その時々で使い分けられるようにしておくのがいいだろう。
まとめ
世界がより平和になるのは「キャッシュレス決済」
・現金は生産にも維持にもコストがかかる。
・現金を使い続けるということは、金属や植物などの’’資源’’を、消費し続けるということ。
・その資源を得るための鉱山開発は、環境や生物多様性に大きな影響がある。
・鉱山開発が行われている場所に暮らす住民の権利が、認められていない事実がある。
・何十年かして資源がなくなれば、鉱山からは撤退し、後に残るのは荒廃した土地と貧困のみ。
・現金を使う際の衛生上の懸念がある。
・キャッシュレス決済を導入していないことにより、店側が不利益を被っている事実も、否定できない
・現金を使い続ける以上、私たちは、時間やお金を削り続ける。
・災害時は現金しか使えなくなることもあるため、備えは必要
参考文献
引用したものは、引用部とともに出典を載せています。ここでは本文中で(※0)と示した箇所の記述の際に参考にした文献を載せています。
※1 独立行政法人 国立印刷局 - お札の製造工程 (npb.go.jp)
※2 オフィス・オートメーション 2003 Vol24,No.2 ■研究論文 電子地域通貨に ついて(特集:環境と人間--持続可能な社会の実現に向けて) 松山大学 経営学部 上杉志朗
※3 鉱物資源マテリアルフロー2019ニッケル(Ni) (jogmec.go.jp)
※4 蟯虫の感染源に関する研究(Ⅱ)—硬貨および紙幣からの蟯虫卵の検索について清水 重矢 , 二橋 功 , 中林 正子 日本獣医畜産大学医動物学教室pp.361-363 発行日 1961年6月15日
※5 Money and transmission of bacteria Habip Gedik, Timothy A Voss, and Andreas VossAntimicrob Resist Infect Control. 2013; 2: 22. Published online 2013 Aug 28. doi: 10.1186/2047-2994-2-22
※6 キャッシュレス決済9社比較 各サービスの特徴・費用・導入手順を解説 | ツギノジダイ (asahi.com)
※7 中小店舗が抱えるキャッシュレス決済の課題 “手数料問題”は解決できるか?:モバイル決済で店舗改革(1/2 ページ) - ITmedia Mobile
※8 キャッシュレス決済 実態調査アンケート 集計結果 20210618002-1.pdf (meti.go.jp)
※9 サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福 2016 by ユヴァル・ノア・ハラリ (著), 柴田裕之 (翻訳)
※10 災害発生時の「現金最強説」は本当か キャッシュレス決済の現実(1/3 ページ) - ITmedia NEWS