【フラクタル解説】FNFE Project #15「あれ苔じゃないよ」
どうもこんにちは。FNFE Projectへようこそ!
FNFE Projectでは「FNFE=For New Fractal Enthusiast(新たなフラクタル愛好家のため)」という理念の上、フラクタルについて分かりやすく解説していきます。
フラクタルについて全く知らなかったり、記事を読んだだけではなにがなんだかという人も楽しめるので是非読んでみてください!
今回は「拡散律速凝集」についてやっていきます。
会話
この前、このような会話がありました。
解説おにいさん「この前石垣島でダイビング行ってきたんだよね?」
俺「シュノーケリングな?」
解説おにいさん「まじか。なんか面白いもの見れた?」
俺「熱帯魚めっちゃいたし、色んな種類のサンゴいて楽しかったで。」
才木珠莉亜「サンゴかぁ~~。私も最近海行ってないから行きたいんだよね~。」
古堀函菜「私も海行きたい!」
解説おにいさん「ごめんめっちゃ話逸れるけどいい?」
俺「どした?」
解説おにいさん「なんかサンゴと木に付いてる苔っぽいアレって形似てない?」
古堀函菜「あ~~~地味に似てるかも。ちなみにあれ苔じゃなくて地衣類って言うんだよ。」
才木珠莉亜「どっちも中心から放射状に広がってるよね。雷とか木とかみたいな感じ?」
俺「中心から放射状に広がると言えば、この前理科で硝酸銀水溶液に銅入れた時のアレ思い出すわ。」
解説おにいさん「結晶も地味に似てるよね。何か関係があるのかな?」
???「フッフッフッ…君たち、いい視点ですね!!!!」
才木珠莉亜「!?!??!!!」
古堀函菜「ど、どういうこと?」
いい視点ですね君「実は今あげられたサンゴやら結晶やら地衣類やらは君たちが言ってくれた通り共通点があるんだ。それは、どれも拡散律速凝集によって生成される図形だということ。そしてそんな図形をブラウン樹というんだ。」
そう言っていい視点ですね君は空の彼方に消えていってしまいました。
残された僕たちはしばらく呆然としていましたがなんやかんやでブラウン樹について調べ始めたというわけです。
本篇
ということで拡散律速凝集について解説していきます。
拡散律速凝集とは、核となる点とその周りをランダムに移動する点からフラクタルが生成されるプロセスのことです。この時生成されるフラクタルをブラウン樹と言います。
先にどんな図形が登場するのかだけ見せておきます。
マジでサンゴやん。
ということで拡散律速凝集がどういう感じなのかを説明していきます。
まず2種類の粒子を考えます。仮にこれらを「核」「自由粒子」と呼びます。
次に、核を1つ配置し、その周りに自由粒子を大量に配置します。
で、ここで3つのルールを設けます。
①核となる粒子は移動しない。
②自由粒子はブラウン運動をする。
③核と自由粒子が接触したら、その自由粒子は核に変化する。
ブラウン運動とは微粒子が不規則に移動する現象のことで、ここでは簡単にモデル化した以下のような動きとします。
➀上か下かをランダムに選び移動する
②左か右かをランダムに選び移動する
➂①②を繰り返す
要はランダムな移動です。
そして自由粒子が核に接触すると、その自由粒子は核に変化します。
新しくできた核に触れても、自由粒子は核に変化します。
これを繰り返してできるのがブラウン樹、このプロセスが拡散律速凝集というわけですね。
特性
というわけでここからはブラウン樹や拡散律速凝集の特性を紹介していこうと思います。
まずブラウン樹はこれまで見てきたフラクタルとは違う確率的フラクタルです。確率的フラクタルは名前の通り生成に乱数が関わってくるフラクタルを指します。
確率的フラクタルは乱数を用いるので、生成するたびに形が変化します。そのためフラクタル次元を厳密に求めることが出来ません。しかし二次元平面上での拡散律速凝集の場合、フラクタル次元は平均1.7ほどになると考えられています。
しかし、ここで厄介なことが起こります。ブラウン運動をどう実装するかでフラクタル次元が微妙に異なってくるのです。
ブラウン運動は元々「微粒子が液体中で不規則に移動する現象」を指すので、本来は以下のような実装が正確です。
➀ランダムな角度に向ける
➁その方向に移動する
しかし、ブラウン運動の実装にはこれ以外にも先ほど紹介したような「縦と横にランダムに移動する」というものや「格子の中をランダムに移動する」というものなどいろいろあり、どれか一つに決められません。
ブラウン運動の実装の部分を変えると、自由粒子の挙動が微妙ながら変化します。そしてその微妙な変化がフラクタル次元に影響を及ぼすのです。実際、格子上の実装だとブラウン樹のフラクタル次元が正確な実装のものより少し小さくなることが知られています。
面白いですね。
卉木
これはちょっとしたおまけなのですが、最初に核を配置するとき、配置を変えてみるとこんな感じになります。
木々とその間に生える草花みたいですね。
生活
さて先ほど見てきた通り拡散律速凝集は身近なところで起こり、結果ブラウン樹は身近なところで現れます。理由としては拡散律速凝集の仕組みが関わってきています。
冒頭の会話で色々例が挙げられましたね。サンゴがブラウン樹のような形になる仕組みは、コロニーを核に、プランクトンを自由粒子になぞらえると仕組みが解りやすいと思います。
サンゴは自力で移動することが難しいです。そのため、昼は基本共生している微生物に光合成をしてもらい、できた栄養を微生物とサンゴで分け合っています。しかし夜になると光合成ができなくなるため、サンゴは小さな触手でプランクトンを捕まえて栄養としています。
この時捕まえたプランクトンの栄養分がサンゴの成長の元となります。ここまで来たらもう大体わかりますね。
「プランクトンを捕らえたところでサンゴが成長する」
「自由粒子を捕らえたところで核が増える」と、対応しているのが分かりますね。これは地衣類でも似たような事が言えます。
同じように硝酸銀水溶液に銅を入れると、
➀銅が電子を放出し
➁水溶液中の銀イオンが電子を受け取ります。
これは銅を核に、銀イオンを自由粒子に例えて考えると理解しやすいですね。
他にも非常に強い電圧を絶縁体にかけると、ある地点で急に電気抵抗が大きく下がって電気が流れることがあります。これを絶縁破壊といい、絶縁破壊が起こるとリヒテンベルク図形と呼ばれる、ブラウン樹のような形の模様が発生することがあります。
雷は空気で絶縁破壊が起こることで発生します。雷が直撃した人の肌にヤバそうな模様がついてることがありますが、あれもリヒテンベルク図形のひとつです。
拡散律速凝集は身近なところに現れていますね。これら以外にも拡散律速凝集はあなたたちの身近なところに隠れています。ぜひあなたも探してみてはいかがでしょうか。
まとめ
いかがでしたか?今回は拡散律速凝集とブラウン樹について取り上げました。
拡散律速凝集は核とランダムに移動する点からフラクタルができる過程で、それで出来るフラクタルをブラウン樹ということが分かりました。
ブラウン樹は今までと違い確率的フラクタルで、実装や生成結果によって形や性質が大きく変わることが分かりました。また身近なところに現れることも分かりましたね。
今回は結構身近なものにフォーカスして話してみました。あと導入で会話を見せることで興味を持ってもらうことを狙ってみました。受けが良かったら会話シリーズ不定期に続けます。
今回は書くことがあんまなかったので短めでしたが嵐の前の静けさだと思っておいてください。
#16と#17は「ニュートンフラクタル」について取り上げます。長くなりそうなので2回に分けます。#16は9月22日、#17は9月29日公開予定です。お楽しみに!!!
参考にしたサイト
※この記事で使用した画像は余談のものを除いて全て自作かパブリックドメインのものです。
余談
ファンアートを描きたい人(そろそろ投稿されてほしいです。)に言っておきたいのですが、函菜ちゃんの身長は150cm、珠莉亜ちゃんの身長は169cmです。その2人以外の身長は勘でなんとかなります。
2時間くらいかかった。
#14本編は伸びんと補助資料だけ伸びてるのなんで??