あーん、してもらう。

入院した翌日、朝ご飯がやってきた。
何が来たかは覚えてないが、病院食っぽい朝ご飯。
「ベッドで食べられますか〜?」
と聞かれ
「あ、はい。」
と答える。
ウィーンとベッドを起こしてもらい、ベッドの上の補助机に配膳してもらう。
がしかし、手が動かないので食べられない、、、。
ナースコールを鳴らすのも申し訳ないので、近くの看護師さんに声を掛けてみる。
「あの、すいません、ちょっと僕手が動かなくて。」
食欲もないし、下げてもらおうかなと思ってたところ、
「あー、そうなんですね、すぐ行きますね!」
とのこと。
どうするんやろか、まさか食べさせてくれるんやろか。
程なく看護師さんがやって来る。
「どれから食べられますか??」
食べさせてくれるんや、この歳で見ず知らずの若い女性にあーんしてもらうとは、、、恥ずかしい。
「じゃあ、飲み物からお願いします、、、。」
と伝えると口まで飲み物を運んでくれる。
アイコンタクトで「もう大丈夫」と伝えると、
「次はどれにしますか?」と聞かれる。
このやりとりを、食事を終えるまでに何回やるんやろう、、、。

この後、90日ほど自分でご飯を食べられない日が続く。
初めは恥ずかしいのだが、「だって動かないんだもん」と開き直り、あーんに抵抗がなくなって来る。
「次はどれにしますか?」問題も程なく解決する。
「飲み物から時計回りでお願いします。」という戦法を編み出したのだ。
リハビリ病院に移る前、腕が徐々に動く様になりスプーンを使って自分でご飯を食べられるようになった。
スプーンもちゃんと持てず、お口までの道のりも遠いのだが、自分でご飯を食べられるって幸せだなぁとシミジミ思った。
そういえば、自分で食べられるようになるまでの食事の内容はほぼ覚えていない。
思えば、食事が作業になってたのかなぁ。

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