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社会福祉法人ではリース会計は強制適用?

との質問を受けました。「中小企業だとリース会計は適用せずに(リース資産とリース債務を計上せずに)、リース料を費用とすればいいみたいだけど、この社会福祉法人も規模は小さいので」とのこと。賃貸借処理をする余地はあるのか?という質問でした。

社会福祉法人会計基準での記載
 をまず調べてみたところ、会計基準の本文には「リース」の文言自体がありません。
 「別表第一 資金収支計算書勘定科目」に「ファイナンス・リース債務の返済支出」、「別表第三 貸借対照表勘定科目」に「有形リース資産」「無形リース資産」「1年以内返済予定リース債務」「リース債務」が定められているのみです。
 支出及び費用に「リース料支出」「リース料はありませんが、「賃借料支出」「賃借料」はあります。
 リース会計を適用し、リース資産およびリース債務を計上するための科目は用意されているのですが、賃貸借処理をしてリース料を「賃借料」にするのでもよいのかどうか、会計基準だけ見てもはっきりしません。

「運用上の取扱い」と「運用上の留意事項」
 答えは厚生労働省が公表していました。厚生労働省のウェブサイトの「社会福祉法人会計基準」と題したページのリンクを張っておきます。

 このページに、「社会福祉法人会計基準の運用上の取扱いについて」と「社会福祉法人会計基準の運用上の留意事項について」という2つの通知があります。いずれも厚生労働省から都道府県に周知徹底を図るよう指示されています、ということは社会福祉法人に強制されるものです。
 「社会福祉法人会計基準の運用上の取扱いについて」の8にリース取引に関する記載があり、そこでは
・ファイナンスリース取引は売買取引に準じた処理
・オペレーティングリース取引は賃貸借取引に準じた処理
とされています。
「社会福祉法人会計基準の運用上の留意事項について」には「運用上の取扱い」よりさらに具体的な記載があり、その中で
・少額のリース資産(リース料300万円以下)の賃貸借処理
が容認されています。
 ただし、どこにも「規模の小さな社会福祉法人は賃貸借処理をしてよい」との記載はありません。そういう意味で「社会福祉法人はリース会計は強制適用」ということになります。
 
 なお、「運用上の取扱い」に明記されているのはファイナンス・リースとオペレーティング・リースの2区分だけです。ただし、「運用上の留意事項」では、社会福祉法人においても「リース取引の会計処理はリース会計基準に準じて行う」とされています。このため、所有権移転ファイナンスリースと所有権移転外ファイナンスリースを区分している解説がネット検索で発見されますが、誤りではありません。

中小企業とリース会計
 一般企業の場合、事実上リース会計基準の適用が公認会計による会計士監査を受けている会社(上場会社及び会社法監査の対象会社)に限られることから、「上場会社及びその子会社以外は、リース資産及びリース負債は計上せず、賃貸借処理をすればよい」と言ってよいでしょう。
 ただし、「中小企業の会計に関する指針」及び「中小企業の会計に関する基本要領」には賃貸借処理が明記されているものの、これらを意識的に適用している会社ばかりではありません。
 この点を詳述すると長くなるのでこの記事ではこれ以上記載しませんが、「事実上問題視されない」という歯切れの悪い言い方が正しい言い方になります。


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