見出し画像

田舎の不動産の売却と確定申告(宅地建物取引業者の利用)

 「低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」を利用できるかもしれません。
 譲渡所得の金額から最大100万円を控除できるというものなので、約20万円の税額減少となります。
その主な条件は
・売った土地等が、都市計画区域内にあること
・売った金額が、建物との合計で500万円(一定の条件を満たす場合は800万円)未満であること
・譲渡前が未利用であること(空き地及び空き家・空き店舗であること、利用されていても駐車場や資材置場等であること)
・譲渡後は利用されること
です。
 なお簡単に書いていますので、詳細は以下をご覧ください。

制度趣旨と利用する際の手続及び注意点
 この制度の趣旨は、地方部を中心に全国的に空き地・空き家が増加する中、新たな利用意向を示すものへの土地の譲渡を促進することです。
 地方部の空き地・空き家は売れたとしても多額にならず、相対的に譲渡費用(測量費、解体費等)の負担が重く、さらに課される譲渡所得税の負担感が大きいため、売らないで放置される傾向がある、それを防ぎたいということです。
 このため、特に「売る前に低未利用で、売った後に利用されること」を確かめることが必要です。
 具体的には、確定申告の際に、市町村からの確認書を提出することが求められています。その際に特徴的なのは、宅地建物取引業者を介したかどうかでかなり必要な書類が変わることです。
 宅地建物取引業者を介した場合は、「売る前に低未利用で、売った後に利用されること」を宅地建物取引業者が証明する書面を市町村に出せば、市町村はそれに基づいて確認書を出してくれます。
 宅地建物取引業者を介さなかった場合は、「売った後に利用されること」については買主による証明書が必要です。
 「売る前に低未利用であったこと」については、「電気、水道又はガスの使用中止日が確認できる書類」が必要で、それがなければ2方向以上からの写真及び市町村による現地調査やヒアリングとなります。
 これ、特に写真や現地調査は、譲渡した後では確かめられないことがあるでしょう。新しい建物が建った後だったりしたら、その前が低未利用だったかは現地を見てもわかりませんし、写真も撮れません。事前に市町村に相談することが重要ですね。
 岡山県笠岡市の該当ページのリンクを貼っておきます。他の市町村でも同じのはずです。

「都市計画区域内」という条件
 主な条件の最初に「売った土地等が、都市計画区域内にあること」と書きました。私は当初、都市計画区域内とはごく狭い範囲かなと思っていました。実際は逆で、たいていは都市計画区域内になると思われます。
 「都市計画区域とは」といったキーワードで検索して定義を見ても、「都市計画法によって知事や国土交通大臣が指定する地域」という感じでなかなかピンときません。
 しかし、「市街化区域」「市街化調整区域」は「都市計画区域内で区域区分が定められた区域のこと」、つまり「市街化区域」のみならず「市街化調整区域」も全て「都市計画区域」となります。このほか「非線引き都市計画区域」も「都市計画区域」です。「たいていは都市計画区域内になると思われます」と書いたのはこのためです。
 Wikipediaの「都市計画区域の一覧」のリンクを貼っておきます。

 ここからは感想です。
 市町村の立場から見ると、宅地建物取引業者を介してほしいなと思うものと推測します。介してない場合、「売る前に低未利用であったこと」の確認が市町村の仕事になるためです。事前相談だの現地調査だの、最大20万円程度の税の減免のために、そういったことをするのは正直言ってつらそうです。
 以前記事にした空き家特例でもそうですが、所得税の特例なのに必要な証明をするのは市町村、というのは市町村側では「仕事を増やさないでよ」と思うかも。
 以前の記事へのリンクです。

 宅地建物取引業者を介して譲渡することは、知人間の取引であっても後々のトラブルを避けるためにも重要と思いますが、この特例を使えそうなときはなおさら、宅地建物取引業者を介したほうがよいでしょう。宅地建物取引業者を介するかどうかで特別控除額に差をつけることも考えられると思います。

いいなと思ったら応援しよう!