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「被相続人は帰化された方ですか?」(相続業務における必須の質問候補)

相続と被相続人の戸籍
 被相続人の出生から死亡までの戸籍を揃える必要があるのは、ご存じのことと思います。それによって、相続人を確定するためです。
 例えば、夫が亡くなり相続人は妻と子と思っていていたところ、亡夫の戸籍を揃えてみたら、前妻との間に子があったことが判明したといったことです。
 相続人の確定をして、相続税申告、不動産の相続登記、金融機関の名義変更等の相続手続が可能になります。
 では、被相続人が帰化した方であった場合はどうなるでしょうか。日本の戸籍には、帰化した時から後しか記載されていません。
 このときは「帰化する前の家族関係の公的な証明を収集する」ということになります。

出身国に戸籍制度がある場合(あった場合)
 出身国に日本のような戸籍制度があれば、それを取り寄せればよいのですが、そういう国はほとんどありません。従来あっても、韓国は2008年に廃止しました。
 韓国の場合、2007年までに帰化した方であれば、韓国籍であった期間の韓国の戸籍がありますので、戸籍謄本や家族関係証明書を取り寄せ、翻訳することで、韓国籍であった期間の家族関係と相続人の有無を確定することができます。

出身国に戸籍制度がない場合
 アメリカ等戸籍制度がない国の場合は、出生証明書、結婚証明書、死亡証明書等の個別の証明書を入手し、それらによって相続人を特定することになります。
 そのうえで、相続人全員で他には相続人はいない旨の宣誓書を作成して、当該国の大使館等での認証を受ける必要があります。

公正証書遺言による対策
 ここまで書いてきて、その面倒さを想像するとうんざりします。事前の対策として、不動産の相続登記については、公正証書遺言を作成しておくと、被相続人の出生から死亡までの戸籍がなくとも相続登記ができます。
 
 この記事は、帰化した方の相続について対応する必要が生じたため、取り急ぎ調べたものをまとめて作成しています。私自身の実務経験に基づく記事ではありません。こういうテーマがあることの情報共有及び注意喚起として作成していますので、該当しそうな方は検索等行ってください。
 税理士としての実務対応としては、相続業務の照会があったときに「被相続人は帰化された方ですか?」と聞いてみるくらいでしょうか。必須の質問とまでは言えないように思うので、その候補とします。

 


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