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(分類3)と(分類4)の繰延税金資産計上額の乖離(退職給付と税効果続き)

 税効果会計と繰延税金資産の計上について「今日の実務では少しの見積の違いが多額の繰延税金資産の取崩又は計上につながり、企業の利益を乱高下させることがあります」と前の記事に書きました。

公開草案へのコメントを振り返る
 これについて、現行の会計基準である「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26 号)が平成27年に公表された時の、公開草案へのコメントを見てみました。
 そうしたら、まさに「(分類3)と(分類4)の間の乖離について、対応を
図る必要がある」という論点(論点9)が検討されていました。
 コメントの概要は
「(分類3)と(分類4)の繰延税金資産計上額の乖離が実務上障壁となることがあり、
・(分類3)においても、一定の要件を満たさない場合には、将来課税所得の見積期間を5 年よりも短くすること
長期解消将来減算一時差異について繰延税金資産の計上を制限すること
など、(分類3)と(分類4)の乖離幅が小さくなるような明示的な定めを設けるべきと考える」というものです(改行と点は筆者追加)。
 長期解消将来減算一時差異の主要なものが、前記事で取り上げた退職給付 引当金です。
 それへの回答は
・(分類4)の要件を満たすが(分類3)に該当する場合の取扱い
・(分類3)に該当する企業における合理的な見積もり可能期間が5年以内のより短い期間となる場合の取扱い
を定めているから、取扱の乖離について一定程度の配慮をしている、とのことでした。でも肝心の、退職給付引当金等の長期解消将来減算一時差異については何も触れていません。

実務上の障壁
 この論点は、新日本有限責任監査法人のコメントにおいて提起されていました。
 「分類③では、将来5年間の課税所得により回収が見込まれる将来減算一時差異等に係る繰延税金資産に加えて、退職給付引当金のような長期解消将来減算一時差異に係る繰延税金資産が計上されることがある。
 一方、分類④では、翌年度の課税所得により回収が見込まれる将来減算一時差異等に係る繰延税金資産しか計上されない。
 このように、分類③と分類④は隣り合わせの会社分類にかかわらず、それぞれの繰延税金資産計上額には、大きな差が生じるケースもしばしばみられる。このことが、分類③から分類④への変更の抵抗感や、分類④に変更した際の財務的なインパクトの経験から反対に分類③への再度の変更に係る抵抗感に繋がっている場合があるように思われる。
 それぞれが将来確実に見込まれる税金の減額分を適切に見積ったものであるという見方も可能かもしれない一方で、企業と監査人との関係を考えると、この乖離幅が大きいことにより、(社会的な)コストを発生させているとも言える。」
と、非常に実務的な、切実というか正直なコメントがされています。

考えられる対応
 「実務上の乖離への対応」についての新たな提案は、力不足のため本記事で書くことはできませんが、こと退職給付引当金については「税務上退職給付引当金を認めてほしい」というのが本筋のように思います。
 なお前記事で、私は解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異への取り扱いは「できる規定」であり強制されているものではないとの理解と書きました。
 コメントの論点95において、「判断できるという表現が用いられているが、繰延税金資産の計上要否を任意に判断できる趣旨ではないことを明確にする必要があると考える」というコメントが記載されていました。ASBJのコメントへの対応ではそれについては触れていませんが、原則論ではそうかもしれないが、つらいなあという感想です。
 記事の最後に、コメントのウェブページを貼っておきますので、参考にしてください。とっても興味深いですよ。

 


 


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