【提案】外国人旅行者向け消費税免税制度の休止(リファンド方式導入まで)
悪用されている外国人旅行者向け免税制度
いわゆる免税店を経営する事業者が、外国人旅行者等に対し、消費税を免税で物品を販売することができます
これは、対象物品を国内で消費せず国外に持ち出すことが前提となっており、輸出免税制度と同じ考え方になっています。
ただし、対象物品を国内で転売したり消費したりしたらその前提が満たされません。本来は、出国時に消費税を納税する必要があるのですが、事実上徹底されておらず、国税庁が「不正な免税110番」を設けているような状況です。
抜本的な見直しはまだ先
悪用への抜本的な対策として、令和6年度税制改正大綱において、輸出物品販売場制度の改正が決定しました。
いったん課税で販売を行い、旅行者が出国時に返金手続きを行うことで免税対象の消費税の還付を受ける、いわゆるリファンド方式への変更です。海外ではそれが通常であることから、当然の変更と思います。
ただし、令和7年度税制改正大綱で施行日を含む詳細決定がされる予定で、それからシステムの整備等を行うことから、2026年ごろからの導入と思われます。まだ1年以上先です。それまで悪用され続けるのではかなわないと思います。
外国人旅行者向け消費税免税制度は必須?
実は、外国人旅行者向けの消費税免税制度は、全ての国にあるものではありません。読者の方には、税務業界の方、税務知識がおありの方が多いでしょう。そういった方は、輸出免税の一種として、あって当然と思われるかもしれませんが、そうでもないのです。
ニュージーランドにはありません。カナダでは2007年に、英国では2020年12月末で廃止されました。フィリピンでは、2024年9月30日から導入されました。
これらの国の導入理由や廃止反対理由は、近隣国との観光客誘致での有利不利が多く、「輸出免税だから当然」とは言われていません。外国人旅行者は最終消費者でもあるわけだから、通常の輸出免税とは同一視する必要はありませんね。
ここからは意見です。
リファンド方式への変更まで、免税制度を休止すべきと思います。理由は、悪用の度が過ぎているからとすればよい。かつてセブンイレブンがセブンペイを導入後短期日で廃止したように。必須ではないのです。
日経新聞の、外国人旅行者向けの消費税免税制度悪用についての記事です。
無視された平成22年の指摘
このような問題点が指摘されている論文を見つけたので紹介します。税務大学校の「税務大学校論叢」に記載された宮川博行教授による研究論文です。一部引用します。
発表された平成22年当時は消費税は5%です。「実効性に問題がある」という教授の当時の危惧が、税率が上がり外国人旅行者が増加した今日、現実のものとなってしまっています。嘆かわしい限りです。
論文は、海外の状況など変わっている点もありますが、一読をお勧めします。