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土地や建物の売却益の申告(段階的に取得した場合の所有期間)

 土地や建物を売ったときの売却益は、譲渡所得として所得税がかかります。給与所得他の所得と合計するのでなく、土地や建物の売却益を他の所得と分けて課税されます(分離課税)。譲渡所得(分離課税)は、次のとおり所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得の2つに区分し、税金の計算も別々に行います。

・長期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの
・短期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のもの

 所有期間の判定を、譲渡した時点ではなく1月1日を基準に行うことにご注意ください。
 長期譲渡所得と短期譲渡所得では税率が異なります。
・長期譲渡所得 所得税及び復興特別所得税 15.315% 住民税 5%
・短期譲渡所得 所得税及び復興特別所得税 30.63% 住民税 9%

先日相談を受けた事例では、同じ土地でも段階的に取得したものでした。
・持分 3分の2 平成10年相続
・持分 3分の1 令和4年贈与
こういう場合はどうなるでしょうか。長期?短期?

相続や贈与により取得した場合の所有期間
 試験問題で選択肢を作るとしたら「一部でも最初に取得したとき?」「最後に取得したとき?」「全体の1/2を超えた時点?」等といった感じでしょうか。
 この相談の場合は、段階的に取得と言っても全て相続と贈与による取得でした。
 相続や贈与により取得したものの所有期間は、原則として、被相続人や贈与者の取得した日から計算することになっています。
 令和4年に贈与を受けた分も、贈与者が相続で取得した土地だったので、贈与者の取得日がその時の相続の被相続人の取得日に遡ることになるため、いずれにせよ所有期間5年超であることは間違いない、ということになり別の論点の相談に移りました。

段階的に購入した土地や建物の所有期間
 
先日の相談はさておき、以下のように段階的に購入した場合はどうなるでしょうか。
・持分 3分の2 平成10年購入
・持分 3分の1 令和4年購入

 結論は「同じ物件でも別の物件として譲渡所得の計算を行う」です。前述の選択肢は、もっともらしく見えますが全て誤りです。無理に1つの取得日にしないということですね。
 こういう場合は、平成10年購入分を長期譲渡所得、令和4年購入分を短期譲渡所得として、収入金額や譲渡費用を持分割合で按分して、別々に税金の計算を行うことになります。
 
 土地や建物を、相続や贈与以外で段階的に購入ということはあまりないでしょう。最初に聞いたときに「ひょっとしたら何らかの特例があるのかも」と考えてしまいました。


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