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上場株式の贈与と取得価額(特定口座との関係)
上場株式の贈与と取得価額
上場株式の贈与について、耳にする機会がありました。親族でない人から上場株式の贈与を受けられるという話です。親子間での贈与は相続対策としてよくある話ですが、親族でない人からとは珍しいなと聞いていたら、一般口座への受入れという話となり、続いて売却時の税金の話になりました。
「タダでもらったのなら取得価額はゼロでしょ?売却額に約2割の税金がかかるんだよね?」
みたいな話が出ましたが、そうではありません。
贈与の時は、相続の時と同様、贈与者の取得価額を引き継ぎます。含み益のある株式の場合、贈与時の時価を基準として贈与税がかかるのに、売却したら売却益に課税される、二重ではないか?というのも相続の時と同様です。
上場株式の贈与と特定口座
この雑談の時は、贈与の場合は受贈者の一般口座への受入れとなるということについて、取得価額の引継ぎが難しいから当然かな、と思っていたのですが、これは理解が浅かったです。
贈与者が特定口座で保有している上場株式を、受贈者の特定口座への移管を行うことは可能です。
ただし「受贈者の特定口座に、移管される上場株式等と同一の銘柄があるときは、贈与者が特定口座で保有する当該銘柄の一部のみを移管することはできない」という制限がかかっています。
贈与対象の銘柄について、
・受贈者が同一銘柄を保有していたら、贈与者が当該銘柄を全部贈与したら移管可能(一部だけの贈与では移管できず、一般口座へ)
・受贈者が同一銘柄を保有していなければ、贈与者が当該銘柄を一部だけ贈与する場合でも移管可能
つまり、受贈者が同一銘柄を保有していたら、複数回(複数年)に分けての贈与は特定口座への移管はできず、売却した際の確定申告等で不便になるということです。相続対策ですこしずつ贈与するといったことがしづらいですね。
なんでこんな制限があるのかな?と思って調べたら、日本証券業協会の税制改正要望を見つけました。
制限の趣旨は「一般的には、特定口座間で同一銘柄の一部贈与を行うことによって受贈者における取得価額を意図的に調整することを防ぐ観点から措置されているものと理解されております」とのこと。
これに対して、日本証券業協会としては、投資者の利便性を著しく低下させているものとして撤廃を要望しています。私も撤廃してほしいです。利便性の低下が制限の趣旨に見合わないと覆います。
贈与財産としての上場株式
この記事を書くにあたり、証券会社各社の贈与手続を調べてみたところ、様々ですね。
・贈与者、受贈者とも証券口座を有する場合に限る
とか、
・親族間のみに限る(第三者への贈与は受け付けない)
とか
・贈与契約書に実印を押印し、贈与者及び受贈者の印鑑証明書の提出を求める
とか、様々です。「自分の財産なのに、条件を付けるのはおかしい」と思う方もおられるでしょうが、証券会社としては資金決済機能は本業ではないので、トラブルを避ける観点ではやむを得ないでしょう。
これでさらに、取得価額を証明する書類も渡すとなると大変です。また、贈与手続をしているうちに時価が下がるかもしれません。贈与をするにしても、特に思い入れがなければ上場株式以外を贈与するほうが合理的と思います。