臨床家のための投球バイオメカニクス
関東の某大学病院 スポーツ医学センターで理学療法士として勤務してます。
Jr.アスリートからプロ選手までのリハビリテーション、アスレティックリハビリテーションからパフォーマンスアップまで携わっています。
最先端の医療環境下で働いているからこそ皆さんに伝えられる事をnoteを通して発信していきます。
今回は臨床家のための投球バイオメカニクスについて紹介していきます。
米国スポーツ医学研究所(ASMI)は少年野球からメジャーリーガーまで数多くの投球メカニクスを分析しています。
そのASMIが2023年に「The Clinician’s Guide to Baseball Pitching Biomechanics」の論文をSports Healthに掲載しました。
今回はその論文を中心に投球バイオメカニクスについて説明します。
投球動作のPhase分類
一般的に投球動作は以下の6つのフェーズに分けられます。
①Wind-up(ワインアップ期)
②Stride(ストライド期)
③Arm cocking(コッキング期)
④Arm acceleration(加速期)
⑤Arm deceleration(減速期)
⑥Follow thought(フォロースルー期)
Wind-up
Wind-upは投手がリード脚を動かし始め、リード脚の膝が最大の高さに達するまで。
Wind-upの主な目的は以下の3つです。
Wind-up後の動作の正しいタイミングを得るためのリズムを確立すること
ボールの推進力に貢献できるポジションに身体を置くこと
ボールを隠し、バッターの注意をそらすこと
Wind-upの動作の特徴は以下の通りです。
身体重心が高重心となる
筋活動が最小限に抑えられる
リード脚の膝が高く上がるにつれ、体幹は約90°回旋し、軸足の股関節と膝関節は屈曲する
軸足の股関節外転筋群、伸展筋群、内転筋群が体重吸収の役割を担う
腹筋群は体幹を回旋させながら安定させる
Stride
Strideは投手が膝を最大に達した後から始まり、リード脚のfoot contactまで。
Strideの動作の特徴は以下の通りです。
肩関節は90°外転、20°水平外転、45°外旋する
foot contactの瞬間、着地の力を吸収するために膝は屈曲位(約45°)
ストライド長は投手の身長の約85%
foot contactはマウンドの正中線から内側に接地
(右投げ投手は3塁側へ接地)foot contactの足の角度はマウンドの正中線から内側に接地
(右投げ投手はつま先がわずかに3塁側へ向く)
foot contactは骨盤回旋や身体上方へのエネルギーの伝達に影響を与えます。
Fleisigは、foot contactがオープン側へ1cm増すごとに肩の前方への力が3.0N増加し、足の角度が1度増すごとに肩の前方への力が2.1N増加すると報告しています。
foot contactの肩関節外旋角度は、ストライド長と上肢のバイオメカニクスの両方に左右されます。
例えば、foot contact時の肩関節外旋が不十分の場合は短いストライドと関連している可能性があります。ストライドを長くすることで、foot contactまでの肩を外旋させる時間を増やすことができ、外旋の遅れを修正することができます。
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