【PTOTST向け】保育所等訪問支援ってなに?
最近では「学校作業療法」などを筆頭にPTOTSTが園や学校で支援を届けようとする動きが多く見受けられます。その中で実際によく使われている事業に「保育所等訪問支援」という事業があります。
実際、養成校などでもこういった福祉事業について学ぶ機会も少なく、どんなことをしているのか知らない方も多いのではないでしょうか?
今回は、保育所等訪問支援の事業、成り立ち、支援についてまとめてみました。
①保育所等訪問支援の現状
皆さんは「保育所等訪問支援」という事業をご存知でしょうか?
最近では地域に「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」の看板を掲げた事業所を見かけることも多くなっています。
皆さんも聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「保育所等訪問支援」は児童発達支援や放課後等デイサービスと同じ児童福祉法の障害児通所支援事業の1つです。
保育所等訪問支援は平成24年の児童福祉法改正で創設された比較的新しいサービスで、お子さんの地域社会への参加・包容(インクルージョン)を推進するうえでとても重要な事業として位置づけられています。
しかし、まだまだ全国的にも他の通所支援事業に比べ、利用者数が少ないのが現状です。
②保育所等訪問支援の成り立ち
先ほども紹介した通りお子さんの社会参加・包容を推進するために重要な位置づけである保育所等訪問支援ですが、なぜこの事業が必要とされ、出来たのでしょうか?
平成28年(2016年)に厚生労働省から出された「保育所等訪問支援の効果的な実施を図るための手引書」には、以下の4つの課題があると記述されています。
①発達上の課題が保育所等の集団場面で気づかれることが多いこと(家庭や個別対応では問題が見えにくく、通所支援に至らないことも多いこと)
②通所支援で身につけたことが保育所等の集団場面に般化しにくく、不適応を起こすことも少なくないこと(保育所等での集団適応のための別の支援が必要であること)
③通所支援を終え保育所等へ移行した後のフォローアップが不十分であること(フォローアップが制度上確保されていないこと)
④障害特性の個別性からくる支援の困難さが保育所等の職員を疲弊させる一方で、保護者が保育所等に対してもどかしさを感じ、結果として保育所等と保護者の間にあつれきが生じてしまうことも少なくないこと(立場の違いによるニーズの違いがあること)
つまり、お子さんが通所して支援を受けるある意味で特殊な場所だけでは、お子さんの本質的な課題が見えにくく、通所施設で身に着けたスキルが園や学校という多くの時間を過ごす場所で般化できないという課題がありました。
また、多くのお子さんを見る園や学校の先生だけでは、1人の障害を抱えるお子さんの対応が難しい部分もあり、保護者との認識の齟齬が生まれていることもありました。
以上の様な課題を解決するために保育所等訪問支援が成り立ちました。
③保育所等訪問支援で届けられる支援
保育所等訪問支援で届けられるのはどのような支援でしょうか?
まず、「保育所」という名前がついていますが支援先としては保育所や幼稚園、認定こども園、学校、放課後児童クラブなどお子さんが通う様々な場所で支援を提供することができます。
また2018年の児童福祉法改正により、乳児院や児童養護施設への訪問が可能になるなど支援対象は広がってきています。
上記のような施設の中でお子さんへの「直接支援」とスタッフへの「間接支援」を届けることができることが保育所等訪問支援の特徴です。特にこのお子さんへの直接支援が出来ることが類似する事業との大きな違いになります。
集団から抜き出して固有の発達課題について支援する場合もありますが、一般的には訪問先での生活の流れや保育・教育活動の妨げにならないよう十分に配慮しながら集団活動に加わって支援することになります。
お子さんが生活する場所で、特性と環境双方の観察、分析をすることでお子さんにあった環境調整やスタッフの関わり方、活動の組み立てを支援していくことが訪問支援員の役割になります。
訪問支援員はあくまでお子さんの学びや自信、スタッフの届けたい保育・教育、保護者の安心に繋げる一員で意識が重要かもしれません。
最後までご覧いただきありがとうございました。
【参考・引用文献】①厚生労働省:保育所等訪問支援の効果的な実施を図るための手引書