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算数と野菜にかかわる不思議

※これは2009年12月16日から2010年7月13日にかけて、ココログ「ノオト —— 科学と、人間と、日常と、僕がめぐり会ったモノたちと。 —— 科学者で、大学教師で、人間と脳の研究者で、ダジャレ研究者のたまご(自認)で、あまのじゃくで、他人のミスに寛容で、Apple社の製品を愛用している僕によるメッセージ。」に投稿した、4本の記事のまとめです。

第1回(2009年12月16日)

脳、人間、心理に関心がある人に迷いなく薦められる本、そして僕のネタ本のひとつでもある「MIND HACKS ― 実験で知る脳と心のシステム」の内容について、2年半ぶりに会った知人Tと話をした。

プライミングの項目に、ピザと10回言わせた後で、(「ひじ」を指さして)ここは?と聞くと、つい「ひざ」と答えてしまう例が紹介されている。
(プライミングのその他の例はこちらを参照。)

英語では、ひじとひざは混乱しないはずだから、日本人に分かりやすく工夫されたいい翻訳をしてるよね、と共感した。
と同時に、算数と野菜に関するくだりは、当然のように書かれているけど理解できないね、と、こちらも共感した。

子供の頃によく遊んだよね、みんな理解できるよね、というニュアンスで書かれているのは次のようなものである(Mind Hacksの内容とは一部異なります)。

━━━━━━━━━━━━━━━
質問にテンポよく答えて下さい。
2+4は?
3+3は?
5+1は?
2+2+2は?
では、最初に思い浮かぶ野菜は?
━━━━━━━━━━━━━━━

みなさんは何が思い浮かびましたか?

日本人にはまったく理解不能でありながら、英米人の大半の共通認識であるというこのゲーム、とても気になったので、知人Tと情報交換しながら調べてみると、詳しい解説に遭遇した。

解説には、

ある実験によれば66%〜90%が同じ野菜を答えること。
英語を母国語とする人が相手じゃないとそうはならないこと。
まだ未解決の謎であるらしいこと。
などが記されている。
※ 解説Web頁はこちら (英国のサイト)。
僕は、日本人がこの質問にどう答えるか調査を開始したところである。

英米人の大半の答えは人参(にんじん)だそうだ。

因みに、この質問に「なすび」と答えたある知人は、僕の調査結果を楽しみにしてくれているとのこと。

第2回(2009年12月22日)

算数と野菜にかかわる不思議の質問に対する日本人の回答がいくらか集まったので紹介したい。

知り合いの学生に協力してもらい、僕自身の調査と合わせて35名から回答を集めることができた。

回答者の年齢は、19〜24歳が33名、40歳代が2名である。

回答数の多い上位5つは

人参 23%
白菜 23%
キャベツ 17%
トマト 11%
ナス 6%

となった。

人参(にんじん)が多めではあるが、英米人の場合の大多数にはほど遠い。

この結果を受けて、知り合いの学生たちから、日本人の場合は計算なしでいきなり「野菜といえば?」と聞いた場合の回答も大差ないのではないかとの仮説が提示された。

なので、引き続き回答の収集を依頼したところ、快く引き受けてくれたので、来月中には紹介できると思う。

第3回(2010年1月12日)

実験の続編データが集まった。

それは、テンポよく足し算をしてもらった後に「野菜といえば?」と尋ねるのではなく、ただ「野菜といえば?」と質問した場合の回答である。

27名の回答の上位5つは、

人参 19%
キャベツ 19%
白菜 15%
トマト 15%
ピーマン 11%

であった。
今回も前回と同じ、知人大学生4名が協力してくれた。回答者は大半が20歳前後であった。

第2回で述べた結果、つまり、テンポよく足し算してもらった後に「野菜といえば?」と尋ねたときの結果
/ 人参 23% / 白菜 23% / キャベツ 17% / トマト 11% / ナス 6% /
と比べると、事前の計算問題の有無は回答には、あまり影響しないようである。

つまり、英米人にとって事前の計算問題はプライミングとして機能するが、日本人には事前の計算問題にはプライミングの効果がないということである。

第4回(2010年7月13日)

続報。

コールドリーディングについて書かれている本「なぜ、占い師は信用されるのか?」(石井裕之著、フォレスト出版、2005年初版)を眺めた。

そこには、コールドリーディングの実践テクニックとして「パッと思いつくもの」が紹介されており、その中に「野菜と言われてパッと思いつくのは → にんじん」と書かれている。

パッと思いつくものというのは、余計な思考が働かなければ思いつくものという意味だから、その本の考え方に従えば、計算には本質的な意味はないことになる。思考を野菜から遠ざけて、できるだけ頭を白紙に近づけるための手段として計算を利用しているという考え方になる。

この辺りのことは、この不思議の解明の今後の考察に活かしていきたいところだ。

その本には、他にも多数のパッと思いつくものが紹介されている。それらすべてをここで紹介することは営業妨害になるだろうから、ひとつだけ紹介する。

「ヨーロッパの国と言われてパッと思いつくのは → イタリア」だそうだ。

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