【もっともっと】もっと便利に、もっと効率的に―とどまるところを知らない現代人のもっともっと
仕事がきついと感じたら、次回は工夫して少しでも楽な方法を採り入れるのが人間。楽になったら、今度はスピードを上げようと考え、更に生産を増やそうとする。そのために道具を作り、化石燃料を使って機械化、自動化する。
人間は、よりたくさんの食料を生み出すために森林を伐採して農地を広げ、化学肥料や農薬を使って収穫量を増やした。大型機械を使って効率を上げ、ハウスを作って季節を問わず野菜を収穫できるようにした。遺伝子組み換えによって強力な除草剤に耐える作物を生み出し、効率よく大量生産できるようにした。家畜にホルモン剤や抗生剤を投与して成長を早め、病気を防ぐ方法を見つけた。
人間はすぐにエスカレートする動物であり、エスカレートする欲求を満たすために文明が高度化してきたと言っても良いかもしれない。もっと快適に、もっと大量に、もっと楽に、もっと速く、もっと効率的に、もっと遠くへ、もっと便利に、もっと大きく、もっとおいしいものを、もっとオシャレに。とどまるところを知らない人間の「もっともっと」。人間以外にエスカレートする動物は知らない。みんな目の前の環境を受け入れながら何千、何万年と同じ営みを続けている。
考え、学び、改善するのが人間の英知であって、それが人間の人間たる所以であることはたしかだ。ところが人間には「反省しない」という決定的な短所がある。あらゆる分野で新たなことに挑戦するのだから当然、過ちも多くなる。しかし人間は過ちが大きければ大きいほど反省しないのである。
前述のとおり、人間が「もっともっと」とエスカレートするほど自然に反することをしなくてはならなくなる。そして今、世界は持続可能性の低いことばかりが幅を利かせるようになってしまった。持続できないことは子孫にとっての禍根であり、過ちである。過ちであれば反省し、やり直す道を探すのが本当の英知というものではないか。目の前のおいしそうな作物に目がくらみ「もっともっと」と食べ尽くしてしまっては、次世代のタネは採れない。
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