見出し画像

【一人前の生き方】自分で食べ物を作れない現代人は果たして一人前なのか?

 私は生まれてから50年以上、暮らしに必要な食べ物や道具などを「自力で生み出す」という経験をしたことがなかった。ところが社会人になってお金を稼ぐことだけはできるようになると、それで一人前の大人になったと錯覚していた。しかし自分を生物として見れば、これは極めて異常なことではないかと、40代の半ばになったときに初めて気づいたのである。野生動物は自力で餌をとれなければ死あるのみ。ところが私は人生の半分以上の歳月を生きてきて、自分の手で食べ物を育てたり獲ったりしたことが一度もなかったのだから。

 私が京都府綾部市に移住したもっとも大きな目的は、食べ物を自分で作るということだった。特に主食であるコメを自分の手で、しかも無肥料・無農薬の、できるだけ昔ながらのやり方で育ててみたいと思ったのだ。今年でコメ作りは8回目。野菜もできるだけタネを採り、毎年繋いでいくようにしている。木を切って薪を作り、道具を揃えて、自分で作れるものは作る。うまくいかないことばかりだが、それでもようやく「暮らしを営んでいる」と実感できるようになった。

 働けば働くほど暮らしが豊かになるため、労働に幸せを感じる。自力でできることは多くはないが、できることだけで満ち足りている。できることが増えて、生きる力が強くなれば、さらに喜びも大きくなるだろう。

 最近、友人たちも次々とコメや野菜を作り始めた。もしくは作るための準備を始めている。時代の変わり目を敏感に感じ取っている人たちだと思う。これからの世界では、お金が私たちに与えてくれる恩恵はどんどん小さくなっていくだろう。お金にばかり依存する生き方は私たちを決して幸せにはしてくれないということに、多くの人が気づいているのではないだろうか。

 自力で生きる術を身につけ、暮らしを取り戻すこと、すなわち「自給自立」が、これからの時代にとても重要な生き方になる。自力でできないことは家族で助け合えるように、大家族制の復活も必要な時代となるだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?