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【食料危機は来るのか】小農の時代がやってくる

 約10年後に日本の食料事情はどうなっているのだろう。それを予測するためには、既に相当危険なレベルになっている国内自給の状況を知ることが必要だ。現在、野菜は国内産が約80%を占めるが、タネの自給率はたったの10%に過ぎない。つまり国産とされる野菜の90%は、海外から輸入したタネで育てたものだ。鶏卵にしても、ヒナがほぼ100%海外依存のため、自給率はゼロに近いという。見かけ上、国産とされる農作物も、タネや飼料、農薬などの海外依存度が著しく高いため、実態としては国内自給率は驚くほど低いのである。化学肥料もほとんどが輸入であって、現在恐ろしい勢いで値上がりしている。鶏糞や牛糞といった有機肥料であっても、家畜の飼料がほとんど輸入頼みとあっては国内で供給できるとは言えない。そこに追い打ちをかけるように農家の高齢化、後継者不足だ。離農する人も後を絶たない。異常気象や獣害による被害も年々ひどくなるばかりだ。

 元農水官僚で、東京大学大学院教授の鈴木宣弘氏によると、2035年には野菜や果樹、精肉、鶏卵など、ほとんどの食料の実質的な国内自給率は数%まで落ち込むという。供給過剰と言われるコメでさえ、種子法の廃止により種籾の海外依存度が上がることが予想されるため、自給率はわずか11%まで低下すると鈴木氏は予測している。

 これで輸入が断たれたら日本の食はほぼ終わる。輸入が断たれることなどないだろうという見方は楽観的過ぎる。食料に限らず、サプライチェーンがいざという時にどれほど脆弱なものであるかは今回のパンデミック騒ぎやウクライナ危機ではっきりした。こんな状況になっても国がやることは新たな輸入先の開拓と、国内では農地の集約化による大規模農業の推進ばかりで、小農の支援や自然栽培の推進などはまったく眼中にないようだ。日本の食料事情はとっくの昔に危険水域に入っている。これでは、店頭から食料が消える日がいつ来るかだけの問題だと言っても過言ではない。

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