歯科矯正デジタルワークフロー日記 その2
# 今回も、矯正の未来予測 vol.2 のみ。。
私事ですが、今月、来月とセミナーがありスライド作成に追われ…来月生まれる2人目の準備等で更にバタバタしています…言い訳だらけ。。それでは、前回からの続きとなります。(話題の格安アライナー?について、格安という名前に違和感がありますが、世間ではそうなっているようなので…)
前置きは終わりにして。
いま、日本において確認できる格安アライナー矯正を提供している会社や技工所の数は…もう数えきれません!笑 毎月のように新たなものがスタートアップしていませんか?名前を変えただけ?なんていうものまで。これらの中でも今後は、
D2C型の格安アライナーが問題になってくるでしょう。
いわゆる歯科医院を介さない(歯科医師はオンラインで診断してる?)アライナーです。患者に直接、印象材とトレーを郵送、患者が自ら印象採得して会社に返送、その後自宅にアライナーが届くのです。どれ程の検査をしているのか?診断は??心配な面が多くあります。。もしかしたら歯科医師が直接、患者を診ているタイプはまだマシかもしれません…
このD2Cアライナーのビジネスモデルは決して新しいものではなく、かなり前に米国でスタートアップしたスマイルダイレクトクラブやCANDIDという会社の手法と小さな違いはあるでしょうが同様のものです。
この写真は私が2年前にインハウスアライナーを学んだテキサス州ダラスの街中にあるCANDIDのショップです。恐らく中にはIOS(口腔内スキャナー)があり、カウンセリングと口腔内スキャンを行っていると思われます。このようなショップが米国の都心部に次々と現れています。スマイルダイレクトクラブはトレーラーにIOSを載せて走り回っているという話も。。笑
このようなシステムのアライナー矯正が米国で問題となっているのは正確な検査、診断をせずにアライナーを提供しているため、重度歯周病の患者がアライナーにより歯を失い訴訟に発展しました。さらに弁護士たちが患者を巻き込んで集団訴訟を開始するというニュースもありました。ちなみにスマイルダイレクトクラブは2年程前に、大きな期待を持って株式市場に上場しましたが直後に訴訟、学会からの批判を受けて株価は低迷したまま。。テンバガーの期待をした方々もいると思われますが。。。話を戻しますが、いずれ日本においてもこのような被害が起こり、訴訟に発展する未来もみえてきますね…
ただ、私たち歯科医師、矯正医が、この状況下を批判して、憂いてもしょうがないでしょう。彼らもまた生きていかないといけない利益を追求している会社です。そして、可能な限り安く矯正治療を提供したいという理念もあるのでしょうし、そのような需要はあります。これは噂ではありますが、厚生労働省に対するロビー活動を積極的に行いコンセンサスを得ている会社もあるとの事です。。私たち歯科医師、矯正医が患者を幸せにするために出来ることはなんでしょうか??それは、
私たちが矯正治療、アライナー矯正治療の質を高めるということしかない。
米国の一部で始まっている、格安アライナーやD2Cアライナーとの競争に巻き込まれないためには患者が納得する質の高い治療とサービスを提供して格安アライナー矯正との差別化を図ることに尽きます。そのためには歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、歯科助手がチームでアライナー矯正、デジタルワークフローを学ぶしかないと思っています。
例えば、個人医院で格安アライナーと価格競争を行うことは、荒れた真紅のレッドオーシャンでクルーザーに乗った大手と小さなボートで争うという事かもしれませんね…。私たちはボートでも客船にしても安全に患者を目的地に送り届けるため、穏やかに晴れたブルーオーシャンを航行しないとですよね。
レッドオーシャンに突入したクリニックは、患者を安く沢山こなして経営する方針に傾き、結果的に格安アライナー矯正治療と同じレベルまで治療の質が低下していき、院長やスタッフの疲労が蓄積、アライナー以外の患者まで去っていくことになりかねないのです。そのような現実が一部地域では出て来ていてインビザライン、コンプリヘンシブを4〜50万円の費用で提供しているクリニックもあるようです。患者に対して、質の高い医療を提供していくためのコストを鑑みると安い費用設定は出来ないはずです。。インビザラインでも、私たちは質の高いアライナー矯正治療をおこなっているんだ。と患者に胸を張って言えるように学ばないといけないんです。これは自分への自戒の意味も込めて。。
2019年にインハウスアライナーを含めた歯科矯正デジタルワークフローを学びに米国へ…となったきっかけは以上のようなことを米国の当時の状況から、日本でも同じことが起こると予知していたからに他なりません。
あまり知られてないと思いますが、話題になっている「綺麗な線矯正」をスタートアップしたのは歯科医師でも矯正医でもない美容系クリニックを経営する医師(男性の医療脱毛を流行らせたのも、この先生かもしれません)だったということ。そして、彼はいち早く米国へ飛び北米で最も使用されているインハウスアライナー用のプランニングソフトメーカーと提携し、アライナー製作の効率化を図り今に至ったのです。私たち矯正医より早くに情報を仕入れ、行動を起こし、良くも悪くも米国の状況を見て日本の矯正歯科界の未来を予知していたのかもしれません。私たち、日本の矯正医がアライナー矯正を毛嫌いしていた数年の間に…彼らに文句を言っていても何も変わらない。。その間に次々と対抗策やアイデアを出してくるでしょう。
その中で、適切な精密検査を行い診断をした上で、歯科医師と歯科技工士が自ら考えプランニングして、アライナー製作をするインハウスアライナーを勉強していく必要があるし、インビザラインの質を高める必要があると考えています。これから色々と変化していく状況下で、患者に違いを知ってもらい、質の高い矯正治療、アライナー矯正を提供していくためにです。
次回はインハウスアライナーで新たに得られる価値や、その利点や欠点なども書いていきたいと思います。色々と落ちついた11月末から再開したいです。
それではオムツを買いに行きます〜
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