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神保町ブックフェス

大半の学者は、何が本質的に重要で何が重要でないかの見分けがつかないから、どうでもいいことを研究している人たちですよ。

利根川進

 家で懶惰を貪り、ただ時間を持て余しているのも退屈であるので、神保町のブックフェスティバルへ向かった。普段、書物を求めるならば丸の内の丸善で新刊を手に入れ、古書ならば神保町の澤口書店や明倫館書店を訪れる。学生時代から足繁く通っていた場所だ。また、昔、仙台では鈎取にある萬葉堂書店という古書の名店に通い詰めたものだ。古書店巡りとは、未知の本と巡り合うことを楽しむものであり、何か特定の本を求めていくわけではない。ただ、足を踏み入れ、その場の空気に身を委ねて衝動的に本を手にする。

 古書店巡りは得意とするところであるが、人込みの騒がしさが性に合わないゆえ、大勢の人々で賑わうブックフェスなどにはこれまで足を踏み入れたことがない。しかし、せっかくの機会なので重い腰を上げ、散策がてら見て回ることにした。

 救世軍前の神田すずらん通りには出版社ブースが設けられており、岩波、東大出版、朝倉書店という馴染深い出版社から、旗章学を中心に扱ったえにし書房、信州の鉄道や風俗を専門に扱う信州毎日新聞社等、普段見慣れない出版社も見受けられた。
 すずらん通りを一巡し、何冊か本を手に入れた。あらかじめ、小銭を多めに用意してきたが、実行委員会の本部テントでは両替もできるようであった。
 多くのブースでは半額セールが行われており、早川や国書刊行会のブースの前には長蛇の列ができていた。生来、行列とは無縁の生活なので、並ぶのも億劫で比較的空いているブースを見て回った。
 運よく、朝倉書店が1000円均一で書物を売り払っており、定価12000円の「家畜寄生虫病学」を安く手に入れることができた。さらに、せっかくならと普段なかなか出会うことない出版社であるえにし書房のチェ・ゲバラに関する書物を2000円で購入した。
 文句としては、人文系の本が多く、理工書を取り扱うブースがあまり見当たらなかったのが残念である。できれば、昭和の統計学の本を何冊か手に入れたかったのだが、また次の機会に期待しよう。

 歩き回って小腹がすいたので、神保町住みの友人を呼び出し、近くのじゅらく園という焼き肉屋で昼をとることにした。幸い、ランチタイムであったので、カルビ定食の1.5人前を1800円で食することができた。
 ただ、昼の営業が15時までだったようで、閉店30分前に駆け込みで入って、長々と雑談をしていたものだから、長居する私たちに呆れた店主たちは昼休憩に入ってしまった。なにやら、「営業は終わりだ、早く帰ってくれ」という圧を感じたので、場所を移すことにした。店を出ると準備中の立て札があり、文字通り最後の客だったようだ。
 それで、Trois Baguesというカフェが有名だというので行ってみることになった。神保町交差点から、白山通沿いに入ってすぐの古風なカフェへ向かった。しかしながら、休日ということもあって、長時間待たねばらなぬ様子だった。店主が「近くに系列店がございますので、そちらの方が早くご案内できますよ」と教えてくれたので、それならばと系列店へ足を運ぶことにした。
 白山通りから路地に入り、錦華通りに抜け、水道橋方面へ四分ほど歩き、カトリック教会の前あたりの路地に入ると、系列店であるヴェールに着いた。途中、子供向けのハロウィンの仮装パーティーが催されており、ちびっこがはしゃぎながら菓子を貰っていた。一昔前と比べ、ハロウィンはすっかり大衆化したのものだと、多少の老いを感じた。
 そうして、カフェに入り、特製ブレンドコーヒーとクレープのセット(1200円)を注文し、雑談にふけった。雑談内容は大抵、国際情勢に及ぶのだが、友人は最近、イスラエルに関する本を読んだらしく、ガザ虐殺が主な話題であったように思う。

Trois Bagues 系列店 ヴェール

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