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Revopoint MetroX vs POP3 vs Shining3D VEGA vs MAF THREE

Revopoint MetroXと POP3 と Shining3D VEGAと Matter & Form(MAF) THREE を使い比べよう、という趣旨の記事です。登場する機材は全部自腹切ってます。メーカーの宣伝じゃないよ。


ハードウェア

見たまんまなので詳しい解説は省略。本体とPCをつなぐケーブルは専用品で外部AC電源を必要とするタイプです。(Einstarと同じ感じ)

Einstarと比較
POP3と比較

スキャン品質

スキャン対象

比較のために、あえてスキャンしづらいアイテムを集めて性能を試すことにします。スキャン作業は条件を変えながら2~3回試行し、ベストな結果を選んでいます。
スキャンはメーカー純正のスキャンソフトのその時点での最新版を使い、最も細かいメッシュが得られる設定で使っています。
手ブレや技量によるスキャン品質への影響を抑えるため、スキャナは三脚に据え付けてターンテーブルを使ったスキャンを行っています。スキャン用のスプレーは使っていません。

1.石膏像
ディティールの再現度を評価しやすい。形状再現度を感覚的に比較することができる。

2.明るい色のレゴブロック 3.暗い色のレゴブロック
レゴは寸法が安定しており精度を評価するための安価な素材として優秀だ。さらに色による影響も評価しやすい。

4.コンセントのヤツ
正式名称不明。アース線は邪魔なので切り落とした。黒い部分とツヤがあるメッキ部分が混在しており典型的な3Dスキャンしづらい部品。細かいシボや溝がスキャンできるかどうかも評価項目のひとつ。

5.バイク部品
メッキされていて光沢があるうえアンダーカットが複数あり、3Dスキャンしづらい部品。

スキャン結果

スキャン結果

上表の部位欠損は何かというとこういう状態。大部分はスキャンできたが一部はスキャンができない状態。この例だと黒いレゴブロックだけスキャンできていない。

スキャンしづらいものをスキャンするためにセンサ感度やライト照度を上げていくことになるが、それにつれてノイズが乗り形状が崩れていく。そして部分的にスキャンできなくなる。「部位欠損」というのはちょうどスキャンできる、できないの境目の状態。

次いでスキャンマーカーの要否。MetroXだけはマーカーが必須なものがありました。MetroXはFOVがそこそこ広いのでマーカーさえ貼ればわりと快適にスキャンできました。

スキャンマーカーの要否。MetroXはレゴブロックを特徴で追尾できなかった。

スキャン1.石膏像

どれもうまくスキャンできている。詳細を見ていく。

上の比較画像ではMetroXのみポリゴンのエッジを非表示にした。メッシュ密度がとても高いためエッジを表示すると見にくい。

メッシュ密度に比例してデータサイズもバカ大きくなります。
ちなみにMetroXでスキャンした石膏像のポリゴン数は2000万です。

石膏像(高さ110mmm程度)でSTLが1GB弱ですから、MetroXの高品質設定ではあたりまえに数GBのSTLが生成されます。(5GB超までは確認)
こんな激重モデルを扱おうと思ったらPCスペックはいくらあっても足りません。
ちなみに900MBのSTLがどれくらいの規模感かというと、普通のスキャナーなら自転車1台分くらいです。

Fusionに読み込ませると動作がカクカクします・・・

スキャン2.明るい色のレゴブロック

MetroXは赤色のレゴブロックだけ撮れていません。
青色光を使うスキャナは赤色系のスキャンが苦手です。青色光を反射せず吸収するので。

MetroXは形状のディティールが悪いですね。面が汚く、エッジがにぶく、形状が不ぞろいです。

MetroXの問題のひとつが「平滑な面のスキャン品質の悪さ」です。
構造光の方向に沿った周期的な凹凸が発生します。(※最高品質 0.05mmで点群融合/ Point Fusionしたときのみ)

ここまで大きな凹凸はたまにしか出ません。しかしスキャン用スプレーを吹いても凸凹は無くなりません。これについての調査を記事の末尾に書いておきます。

現像液スプレー塗布済み

この問題によっておよそ0.1mm~1.0mmくらいの高さの凸凹が生成されるため、今回の場合は寸法精度もあまり良くありません。(寸法は複数点の平均値を代表値としています。)

MetroXは「リバースエンジニアリング向け」を自称するスキャナーなのでついでに注意喚起しておくと、ターンテーブルでスキャンするとピン角が膨らむ傾向にあります。他にもこういう傾向のスキャナーはあるけどね。

スキャン3.暗い色のレゴブロック

MetroXは全体的に低品質ですね。

スキャン4.コンセントのヤツ

MetroXはあまり品質が良くないですね。

MetroXはRevopointの過去機種、POP3やMiniと比較したとき細部のディティールやエッジの鋭さに進歩がありません。

他社の現行機種と比較すると品質の差がわかりやすいですね。

念のため、スキャンスプレーを使用してからスキャンしてみましたが変化はありませんでした。

スキャン5.バイク部品

MetroXは反射率が高い物体を苦手としているみたいですね。コンセントのヤツの刺すとこ、金属部も撮れていないですしね。

総評

総評:
スキャン品質は並程度なのに、マーカーやスプレーなど追加の手当が必須で準備が面倒、仕上がったデータはバカ重くて扱いづらい。
つまるところ、使いづらいスキャナ。

・メッシュ品質

今までのどの個人用スキャナーよりもメッシュ密度は高いです。密度は高いけれども凹凸がありメッシュの品質は悪いです。
メッシュ密度(点群密度)を下げれば凸凹はマシになりますが、他のスキャナと同水準になるのでMetroXのアドバンテージは消失します。それなら他のスキャナでええんちゃう?ってハナシ。

なお、Revopoint特有の悪癖(トラッキング失敗、角膨らみ、ノイズ過多等)は既存機種から引き継がれています。

・形状の再現度

中程度です。形状の解像度はPOP3と同程度で高いとは言えません。エッジの鋭さも少しは改善はしていますが、他機種と比較すると鋭いとまでは言えません。解像度が高いメッシュ密度に追いついておらず残念な性能です。

要するに「細かい形状は拾えないけどメッシュが細かい」ってことなんですが、これを生かせる方法が思いつかない。面のうねりを見る、という活用方法は思いつきましたが前述の周期的な凹凸のせいで面そのものの信頼性が低いし。。。とはいえエッジがにぶいので段差を捉えるのも苦手だし。。。

・寸法精度

レゴを使った寸法精度は中の下といった感じでした。

原因は不明ですが、どうやらソフトウェアの不具合があり、ターンテーブルでスキャンしたときのみ精度が悪化するようです。
手持ちスキャンでは精度が大幅に改善しました。
詳しくは別記事をどうぞ。

・汎用性

以下の特徴により、汎用性は低いです。

  1. 色差に弱い(e.g. レゴブロック)

  2. 反射率が高いものに弱い(e.g. レゴブロック、バイクの部品)

  3. 色差にも反射率にも弱いからスキャンスプレーの用意が必要

  4. 追尾が弱いため、スキャンマーカーの用意が必要

  5. ワイヤレスで使えない(POP3, VEGAは可能)

  6. データ処理が重い

・使い勝手

スキャナ本体の使い勝手は並です。特筆すべきところはありません。

使ってみて使いづらいと思ったところ

  1.  レーザーがClass2Mなので取り扱いに気を遣う

  2. 三脚との接続が別部品なのが手間 (別体のプラ部品にスキャナを嵌める)

  3. 本体とPCをつなぐケーブルが太く硬いので取り回しづらい(Einstar比)

  4. 手でつかんだとき、本体のボタンが遠く押しづらい。(Einstar比)

  5. スキャンマーカーがほぼ必須で設置が面倒。

  6. 色差や黒色、光沢に弱くトラッキングが外れやすい。

  7. 3Dデータがバカでかく、データ処理にとても時間がかかる

・PCスペック

私のPCスペックだとスキャン中はCPU使用率50%、RAMは20GBくらい使ってました。
私のPCスペック
 CPU: AMD Ryzen 9 5950X
 RAM: 64GB (DDR4-1333)
 GPU: GeForce RTX 3060
(※メーカー推奨スペックは満たしています)
スキャン中はともかく、その後のデータ処理はいくらCPUとRAMがあっても足りないのでPCスペックは高ければ高いほど良いです。逆にGPUは適当でいいです。

おまけ:周期的な凹凸の調査

周期的な凹凸の発生条件と回避方法を調査したので書いておく。先に行っておくと完全に回避する手段は無い。

似た形状のスキャン

似たような形状、光沢のものをスキャンしてみた。
微小な凹凸は再現したが、レゴブロックほど深い凹凸にはならなかった。

スキャンスプレーを吹いてみる

効果ないっぽい。凸凹は小さくなる傾向にあるけど。

現像液スプレー塗布済み

対処法:点間距離を広げる

点間距離をデフォルト設定の0.15mm程度まで広くすると周期的な凹凸は目立たなくなるようだ。

要するにMetroXの最高品質設定は使い物にならないということですね。

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