深圳で起きてしまった事件に対して

2024年9月18日、中国の北京・上海・広州と並ぶ一線都市とよばれる大都市の深圳(シェンジェン)にて、なんとも悲しい事件が起こってしまった。
深圳現地の日本人学校に通う日中ハーフの10歳の男の子が通学中に中国人の44歳の男にめった刺しにされ、翌日亡くなってしまったのだ。

基本的に世の中で起こる事件に対しては身の安全を考えてノーコメントを貫き通しているのだが、今回ばかりは中国に少しでも縁がある者として、あるいはそうでなくても無視できない事件として捉えているため、思っていることを少しばかりでも述べようと思い筆を執っている。

事件としてはこれが初めてではなく、今年2024年6月24日にも蘇州で日本人学校のスクールバスが男に襲われた事件が起こっている。日本人の母親と子供が怪我をし、そしてバスに同乗していった中国人の胡友平さんが二人をかばい亡くなってしまったという、非常に痛ましい事件である。

2024年6月13日には、吉林省の公園でアメリカ人大学講師4人が刃物で刺され負傷する事件が起こっている。

根底としては、やはり
・アメリカや日本に対するヘイト・愛国教育
・中国経済の低迷
が原因としてあるのではないかと思う。

1点目に関しては、上海のような大都市で行われている教育と、田舎地域で行われている教育には差異があるという意見も見られた。
この件に関することは私は周りの人に直接聞くのはナンセンスであるし、お互いに避けてきた話題の一つであったので、詳しくはわからない。
ただ中国のホテルに行ってテレビをつけたとき、反日ドラマを放送している話は本当だということはわかった。反日ドラマを放送するくらいであれば、反日教育を本当にやっていても不思議ではないと思う。
(あまりにチープな作りで、日本軍人役の日本語?もおかしくて何を言っているのかさっぱりわからなかった。当時は「アホらし、こんなん騙される人おるんか?」と思い、ベッドに寝転がってアイスを食べながら面白半分で見ていた。)

2点目については現状の経済的な厳しさで就職や生活がかなり不安定であることで、想像する以上にその事態が進行している状態である。そのような環境では、いわゆる『無敵の人』が生まれやすくなってしまう。

そして一連の多くの事件の中の共通点として、子供や女性など身体的に弱い者を狙っているという卑劣さがある。
そもそも真の『愛国心』とは、自身の生まれ持った・または努力して獲得した能力や知識、健全な身体によって達成される功績によってのみ国に寄与し、それを体現することができるものである。
決して、罪なき弱い者を虐げることによって体現できるものではない。それは文明に満ちた愛国行為ではなく、もはや陋劣で野蛮な最低行為である。

さらに私を失望させたのは、微博(ウェイボー:中国版twitter)上などでそうした野蛮な行為に対して『国の英雄』だの、『死んで然るべき』のようなコメントも多く見られたことだ。本当にこれには言葉を失った。

特徴的なのは、彼らが言う「歴史」に対するスタンスというのは、どうも過去から学んで未来のさらなる改善・発展を図るものでなく、何世代にもわたって敵を恨み続けなければならない、というものであることが読み取れることである。過去に日本軍が行ってきたことに間違いが多くあったことは長年我々多くの日本人も認めているが、彼らの今のスタンスは彼ら自身の未来をよくするための建設的な姿勢とはいえない。これには教育の間違いがあると言わざるを得ない。

そういった風潮になって困るのは我々日本人だけでなく、正常な判断力と善良な心を持つ聡明な一般の中国の人たちだ。彼らはそのような行為を国恥ととらえ、我々同様に怒りに震えている。
そして彼ら自身の未来の選択肢を狭めてしまう結果となる。
卑劣な行為を行うことで自国民の評判を落とし、同胞を苦しめているのだ。

そして今回の事件に対して日本人が決して取ってはいけない態度は、「中国人は全員速攻日本から出ていけ!」などと囃し立てることである。しかし残念ながら今はそのようなヘイト世論も多く出てきてしまっている。
その理論では、国単位で憎悪を向けるあの殺人鬼と同じ立場に立ってしまうことになる。


今まで出会ってきた中国の方は運よく日本人である自分に対して友好的な人ばかりで、日本人だから、という理由で排斥されたりなど特別嫌な思いをすることはなかった。
どこの国にも素晴らしい人もいれば極悪人もいて、かつ政治と国民は別物で国という単位で一辺倒にものを捉えることは愚の骨頂であることは重々理解しているつもりである。
ただ、今回を含めた一連の歪んだ認知とヘイトが原因で突き動かされいるとしか思えない事件を受けて、中国の良い面を知っている(つもりの)私ですら、一般的に中国から離れるという選択肢を取るに至るということは至極当然の結果だと思ってしまう。

中国の文化や人を深く愛する者として一言、どうか、これ以上失望させないでほしい。

現状を考えると難しいことは頭ではわかってはいるが、藁にも縋る思いでそう思ってしまう。

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