スマブラXウルフで気づいた「オンライン化の弊害」
対面が枯れないのなら、アビューズトキシックし放題では?
オンライン化により得た気づきは、碌でもないものだった。
▽ある一点のせいで白星配給係 哀しみのウルフ
スマブラXのウルフは、おそらく史上でも
上位に入る程に悲惨なキャラクターだ。
これは所謂おしおき調整により超絶弱体化し
見る影も無くなった面子よりも、である。
▼イケメン悪役隠しキャラクター 高まる期待
ウルフは隠しキャラクター扱いであり、おそらく最後に解禁されるであろう
ポジションに位置している。
当時はパーティゲームでもラインナップは主人公とその仲間が大半、
悪役キャラクターが使えるというのは珍しく
その特別感から、否が応でも期待が高まるものだった。
前作スマブラDXで一番嬉しかった隠しキャラクターは勿論ガノンドロフだ。
ほぼ全ての攻撃が撃墜に繋がりうる超破壊力に魅了され、
かつ技の発生や全体も悪くなく、弱点の機動力や復帰力も補える小ネタが
大きく支えてくれる。使えない死に技も少ない。
使えば使うだけ伸びていくが、その分読み合いが必要になり
決して理不尽ではない。大胆かつ繊細。
そして何よりカッコいい。
ガノンを知らなかったプレイヤーが、その格好良さに魅了され
原作での活躍を知りたくて時のオカリナを買いに走った位だ。
そして台詞と大魔法の格好良さに二度魅了され、
「スマブラでも大魔法が使えれば文句なく最強だろうが、
それは流石にバランス崩壊するだろうし取り上げも止むなし」に落ち着く。
理想形のひとつと言える落とし所に位置するキャラクターだった。
スマブラXで、その理想たるガノンドロフが
当時の開発の悪ノリにより
まさに大魔王に相応しい破壊力と格好良さの続投ではなく
かつ当時の最新作風タクに寄せたどこか哀愁漂うナイスミドルでもない、
ダッシュでイメージ損失も甚だしいダサいランニングするオッサンに劣化し
性能も何故か大きく落とされ「老衰」の二の字が叩きつけられた。
このどうしようもない「バグ」に愕然とする中、
スターフォックス64が大好きだった俺は
このウルフに期待を託し持ちキャラにしたのだが……?
▼奴が来る 森のおやつに成り下がる
ウルフの技性能は中々のものを取り揃えていた。
個は散々だが、キャンセル上スマッシュに対応のダッシュ攻撃。
強攻撃ながら撃墜に使える上A。
スキあらば差し込める、伸びが異常に長い横スマッシュ。
ダッシュ攻撃キャンセルで滑りながら出せる広範囲の上スマッシュ。
あのメタナイトに匹敵する超性能の下スマッシュ。
現行作品と比べても遜色ない扱いやすく高性能な空中後。
当時としては珍しくカス当たりのないメテオ技空中下。
崖際で使うと斜め下に飛ばせる下投げ。
いい感じに小ジャンプを潰せるNB。
裏当てで横に飛ばし早期撃墜が狙える上復帰としても優秀な横B。
そして死を呼ぶ1F無敵、着地保護もお任せな下Bリフレクター。
らしさが存分に溢れた独特の攻めはわからん殺しを誘発し、
分かっていても下スマッシュやリフレクターは食らってしまう。
不遜にこれら2つと空中後を軸とすれば、一定ラインまではラクに勝てる
お手軽さも兼ね備えていた。
奴が来るまでは。
「デデデに永久投げ連コンボがあるらしいぜ」という噂は、
当時のインターネットに疎い少年達でも知っている程の認知度を誇った。
これが高難易度でキッズには無理、とかならまだ救いはあったが
残念ながらお手軽を超えたお手軽、誰でもできるレベルの代物。
しかも完全に入るのはあくまでキャラクター限定であり、
崖際でしか入らない、高ダメージを貰うとは言えどこかで止まる、
何なら一切入らないキャラもいるのだが
ウルフは悲しいことにどこで掴まれてもこの永久の対象。
掴まれた瞬間に撃墜が確定してしまうのだ。
そのお手軽さ故、ウルフを出せば
向こうはスナック感覚でデデデを出してくる。
ウルフは機動力が高くなく、掴まれずに倒し切るのはほぼ不可能。
やる前から決着が決まっている勝負ほど興醒めするものはない。
お陰で今でも、当時を知らないオタク小僧から
「論ずるに値しない下位キャラ」「雑魚」「SPでは強いのにね」と
賢しら顔に烙印を押される悲愴極まりない立ち位置。
戦えるだけの手札がありながら、対戦自体が成立しないのだ。
▼それでも問題なし みんなで空気読み デデデを使うな
今から見ると上位と下位の差が最も激しく、上記のウルフ対デデデの様な「詰みマッチ」まであるのに楽しかったのか?そもそも大丈夫なのか?
答えは「楽しかったし問題なし」。
これは昔はおおらかだったという曖昧なものとか
今ほど環境が研究されていない未熟さ故を理由にしていない。
純粋に強さを競う大会でもない限り、
始めからメタナイトを使ったり、ウルフ相手にデデデを出すような輩は
コミュニティから省かれ、或いは対戦の機会自体を失う
サンクションが例外なく待ち受けているからだ。
碌でもない奴とスマブラをやった際を思い返して欲しい。
常に崖際で待ち飛び道具や投げ狙いをし、逃げていなかったか?
DXフォックスやXメタナイト、For初期ディディーといった
いわゆる厨房キャラを即ピックしていなかったか?
この手の輩は子供のコミュニティであっても省かれる程のタブー。
すぐに遊んで貰えなくなるし、何ならいじめの対象にもなりかねない。
なので好きキャラを出すことを優先し、お互いアツくなって
許諾を取ってから最後の〆として厨キャラ達の無法を堪能する。
あるいは対戦ゲームの苦手な友達や親へのハンデとしてもいい。
誰でも強くなれる下駄を履かせることで対等に近づけるのだ。
今よりももっとえげつない性能を当然のように備えている
昔のクソキャラが許されていたのはここに起因する。
使うこと自体に大きなリスクや条件が課されるので、
そもそも使用や対戦の機会自体が限られてくる。
これは仮にアーケード格ゲーであっても同じ。
「100円を守りたいから」「対戦故に勝てるキャラを選んで当然」は
担保してくれない。
厨房キャラや永久、激寒戦法に初心者狩りで勝ち続けて待っているのは、
対面が枯れるか怖いお兄さん。
或いは狩りの対象として見定められ、
草野球バーサスメジャーリーガーのマッチアップを組まされ
いなくなるまで完膚なきまでに腕の差で叩きのめされるのがオチだ。
空気を読めない奴は真っ先に脱落を余儀なくされる。
対戦ゲームで最も求められるのは
強さではなく、空気読みのスキルだった訳だ。
そこに加え、例えば勝ち過ぎたら敢えてどうしようもない
ネタキャラを選んで自らハンデを背負っていく遊び心があればなおいい。
▽では「対面の枯れない」オンラインなら……?
それでも対戦のオンライン化が望まれていたのは
「枯れない対面」を求めていたからに他ならない。
対戦が何十分も何時間も成立しない、
何なら友達がいなければ対戦自体が不可能という状況は
余りに不健全だからだ。
しかしオンラインにはメタナイトと投げ連含めた激寒戦法が溢れかえり
何ならバッドマナーや切断、おきらくリンチ問題にまで発展した。
これはマッチングシステムの未熟さによるものではない。
そもそもオンライン化した時点でこうなることは運命づけられていた。
対面が枯れないということは空気読みが不要になったということ。
幾らメタナイトを使おうが、バッドマナーしようがお咎めなし。
空気を読まないことが、ノーリスクハイリターンの
出し得モーションに変わってしまったのだ。
ウルフ対デデデのマッチングになったら、
デデデ側は永久投げ連で気持ちよくなれる。
オンラインという空気を読む必要がない環境にあって、
『相手プレイヤーの不快になる行為は絶対にやめましょう』などという
美辞麗句は尻拭き紙にもなりはしない。
対戦ゲームで勝つには、如何に相手の嫌がる行動を
振り続けられるジャイアンになれるかなのだから寧ろ矛盾にも程がある。
映画版ジャイアンなのは身内とフレンド相手だけ。
オンラインではのび太をいじめるジャイアンに変身する。
なので俺はオンラインが実装されていながら、
身内やフレンド限定に籠もるという回帰的選択をした。
アビューズトキシックバッドマナーし放題に気付いたが故に
スマブラという楽しいはずのゲームでこれをしたくなかったから。
どんなに下衆な奴でも、気に入らない勝ち方というものがある。
▽バッドマナーは快楽 故により楽しいゲームを
ここで大事なのが、「バッドマナー=悪!」と
水掛け論に終止し被害者面して逃げるオタク小僧にならないことだ。
バッドマナーがなぜ減らないかというのは「それを擦り付ける側は
ともすればセックスより強い快楽が得られるから」これに尽きる。
気持ちいいからやる。他に気持ちいいことがあれば少なくとも減る。
なので「バッドマナーは楽しいからこそ、
これ以上に楽しい要素が欲しいし見出したいよね」という
次のステージに行かなければならない。
対戦ゲームに高いクオリティが求められるのは、
ツールとしての楽しさが、そのままバッドマナー抑制の副次的効果をも
孕んでいることを無意識的にだろうが理解しているからだ。
仮に悪態をつくのが趣味の人種であっても、ゲーム自体が楽しいのなら
「これトキシックするより普通に遊ぶほうが楽しいんだよな」となり
誰も読まない注意書きより余程有効である。
異常者でも汚物を擦り付ける対象は選ぶものなのだ。
言い換えれば、つまらないのなら
海千山千の対戦ゲームすらも凌駕する低い民度を発揮しうるということだ。
民度を悪くする方法はとても簡単である。
単純に中身のない、ペラッペラの手抜きオンライン要素を作れば良い。
ラグの多発やオフライン要素を蔑ろにして導線を潰したり
高級IPに寄生したり、クオリティ不相応の高値で買い切らせたり
圧の強い課金要素を取り入れたりと事あるごとにカネをチラつかせる、
本来黒子であるはずの製作者がアイドル気取りでしゃしゃり出るなどの
盤外戦術があればジャックポット間違いなし。
普段は聖人君子のような人種であっても、
死臭が消えない環境では豹変する。
死臭に親近感を憶える毒蟲のような人種ですら
歓喜の咆哮をあげる前に素に戻る程のどうしようもない闇があるのだ。