コンビニへ釣瓶落しよ急ぎ足
季語:釣瓶落し(三秋)
こんびにへつるべおとしよいそぎあし
季語|釣瓶落し
鶴瓶ではありません。釣瓶です。
釣瓶とは井戸の底から水を汲み上げるための容器です。ロープの一方に水を汲むための釣瓶を括り付けられており、井戸の上に作られた滑車を経由した手元のロープを引いたり緩めたりして釣瓶を上下させます。
ロープを緩めれば釣瓶は井戸に落ちてゆき、中に水が入ります。ロープを引けば、釣瓶が上がってきて井戸水を汲み出すことができる、というシンプルな仕組みです。
海外の開拓地などではわかりませんが、日本国内で釣瓶が生活の中で実用されている場所はほとんどないのではないでしょうか。
そもそも地下水の汚染で井戸水自体使える土地が減っています。井戸水を生活用水に利用している土地場所でも、水道同様蛇口を捻れば井戸水が出るように工夫されています。そのような設備が作れない場合でも、手押しポンプを活用します。
ロープの片側を離すと、勢いよく鶴瓶が井戸に落ちてゆきます。その落下の勢いを、日の沈む速さに例えた季語で、秋の季語です。
実際には目にすることがほとんどない釣瓶。慣用句や季語としても、いつまで意味を理解して使われるか、将来はどうなっていくのでしょうね。
コンビニへ釣瓶落しよ急ぎ足
句の大意は難しくありません。釣瓶落しさえ知っていれば、他は身近な言葉です。
夕方コンピニに出かけ、店舗を出るともう日が暮れているので急ぎ足で帰った、くらいの意味です。
釣瓶落しは秋の日があっという間に沈んでしまうことの例えです。コンビニは大抵あちこちにありますから、出かけて買い物をすませるのに時間を要することもないでしょう。
釣瓶落しとコンビニを組み合わせることで、本当に短時間で日が沈むというスピード感を強調してみた、のが狙いです。まあ、うちの近所のような田舎町だとコンビニが遠いので当てはまらない例えですけど。
切れ字|よ
釣瓶落しは6文字しかありません。575の俳句の中7に使ったのでもう1文字必要です。そこで切れ字の「よ」を使うことにしました。
切れ字とは前の言葉の意味を強調し、俳句のリズムを整えるために使われる言葉です。かな、けり、などは耳にしたこともあるのではないでしょうか。芭蕉は48字全てが切れ字に使えると言ってます。
そこまでいくとかえってどうしたものやら迷ってしまいます。現代語俳句で使える切れ字をKusabueさんがまとめておられるので、わたしはよく参考にしています。
ただ、切れ字ならなんでもよいかというと日本語として意味が通らないとしょうがありません。
「よ」は文法上では終助詞のひとつです。文末につけて強調や念押しするときに使います。きれいだよ、遅れるよ、とかですね。「釣瓶落としよ」とすることで、もう日が沈んだのかという気持ちを強調します。だから、その後が「急ぎ足」なのです。
今日は事細かな言い訳と理屈付けと解説になってしまいました。素人俳句ゆえに解説抜きで意図を伝わるか不安ゆえの冗長さとお許しください。
本日もおつきあいありがとうございました。スキ・コメント・フォロー・俳句のアドバイスどれもありがたく頂戴いたします。