前提
昨今、「司法書士は契約書作成業務ができる」と殊更に主張する一部の司法書士のグループが存在する。しかし、法文上、司法書士の業務は、
と規定されている一方で(但し、六〜八については認定司法書士に限る)、行政書士法は、
と規定しており(但し第1条の3に掲げる業務は特定行政書士に限る)、一般的には権利義務に関する書類であると解される契約書については、それが依頼を受けた時点において法務局や裁判所又は検察庁に提出されるものであることが当時者の認識により明らかであるときは(例えば不動産所有権移転登記における登記原因証明情報としての契約書)、司法書士の独占業務になると解されるものの、それ以外の場合においては、契約書の作成は、行政書士の独占業務になるものと解される。
判例も同様に立場に立っており、最判平成12年2月8日の最高裁調査官解説でも、
との指摘がなされている。
つまり、契約書をはじめとする権利義務に関する書類は、原則としては行政書士が作成するべきものなのであるが、例外として、「初めから登記原因証書として作成される場合」は、法務局又は地方法務局に提出する書類に該当するから、司法書士が作成すべきものとされるのである。
このことは、前記最判の原審でもある福島地裁郡山支部平成8年4月25日判決が、行政書士法及び司法書士法の沿革を丹念に研究した上で、
と判示していることからも明らかであろう。
検討
しかし、冒頭に述べたとおり、「司法書士は契約書作成業務ができる」と殊更に主張する一部の司法書士のグループが存在するので、こうした「見解」の問題点について考察していきたい。
同グループは、司法書士が契約書作成を行うことができる理由として、多岐にわたる論拠を挙げるが、いずれも根拠が乏しいものと考える。
次回以降の記事で、詳細に見ていきたい。