
徒然んぐす④【主人公の要素】~即興暴君(インプロボーク)~
前回の投稿で、物語の構成について概観をお話しました。
以前に投稿した記事の中で、私としては、フルレングスインプロにおいては2つの重要な要素を持たせたいということをお伝えしました。
その2つのうちの1つは「主人公の変化」です。
ということで、物語の構成をさらに深堀りしていくのは次回以降にして、今回からは「主人公の変化」について見ていきたいと思います。
が、その前に、まず「主人公とは何か」について触れておきます。
物語の主人公がどんな人物であれば魅力的か、そして物語を進行させる上で重要な役割を果たす主人公とはどのようなものか、について簡単に書いてみます。
参考にするのはこちらの書籍です。
※この本は648ページと鈍器みたいですが、先にお話した「三幕構成」を進化させ、より緻密にプロットとキャラクターを組み立てるためのハウツーが凝縮されています。
そして、物語構造について、網羅的・徹底的に解剖されていて、観客の感情を最初から最後まで揺さぶりつづけるような、ドラマ性の強いストーリーづくりを目指す人にとって必読の脚本術かと思います。
本気で物語作りに取り組みたい人は、一度手に取ってみても良いかもしれません。
(ここから本題)
この本では、主人公には大きく分けて4つの重要な要素があるとされています。
まず1つ目ですが、これは「まあ、それはそうだろう」と思われるかもしれませんが、主人公が物語を通じて最初から最後まで観客の興味を引き続けることが必要不可欠だとされています。
この「興味を引き続ける」ということがどういうことかと言うと、主人公が観客に共感される存在であることが重要です。
ただし、この共感を強調しすぎると、逆にいやらしい感じになってしまうことがあるので、注意が必要です。
いずれにしても、共感できるという点が重要なポイントになります。
次に、2つ目の要素ですが、これは主人公が抱えている「欲求」と「欠陥」がポイントになります。
「欲求」というは分かりやすいと思うので、まあいいとして…
この「欠陥」というのは、主に道徳的な問題点を指します。
主人公が「こうしたい」「ああしたい」という欲求を持っている一方で、道徳的に何かしら問題を抱えている、という状態が共感を生みやすいとされています。
なお、この道徳的な欠陥は「他者に対する適切な態度を学ぶことに関係」しているとされています。
そして3つ目の要素ですが、多くの脚本術では、主人公に好感を持たせることが大切だとされています。
しかし、この本では必ずしも「好感を持てる主人公」である必要はないとされています。
むしろ、観客が感情移入できる主人公であることが重要とのことです。
感情移入ができるためには、観客が「なぜこの主人公はこんな行動をしているのか」を理解できることが必要です。
つまり、主人公の行動の意図が分かりやすく、観客がその行動を理解できることが大切だとされています。
ただし、この意図については、必ずしも物語の序盤から理解される必要はないです。
ものによっては物語が展開していくにつれて、徐々に明らかになってくる、あるいは、ある出来事やシーンをきっかけに、観客が理解できるようになる、といったケースもあります。
最後に、4つ目の要素として、心理的な欠陥を持つ主人公であることが挙げられています。
心理的な欠陥は(道徳的な欠陥と対比して)「主人公だけに関係する」とされています。
主人公には欲求がありますが、その欲求が道徳的な欠陥や心理的な欠陥によって満たされない状況にあります。
多くの脚本術では、欲求(ウォント)とニーズの違いが強調されます。
ウォントは心理的欠陥、ニーズは道徳的欠陥に紐づいていることが多いです。
物語としては、主人公が最初に求めているもの(ウォント)が、本当に必要なもの(ニード)とは異なることに気づくことが重要で、これが物語のテーマとなってくると、名作の香りが漂ってくることがあります。
この心理的な欠陥も主人公の思考や行動の原理や原動力になりますが、物語が進むにつれて、主人公が心理的な欠陥に向き合い、道徳的な欠陥に気づくことで成長していく、という構造が望ましいとされています。
これらが主人公の成長に繋がる重要な要素となります。
まとめると、以下のようになります。
◎素晴らしい主人公に不可欠な要素
1 最初から最後まで人々の興味をそそり続ける
2 観客が共感できる主人公であること(やりすぎ注意)
※共感:欲求と欠陥(道徳的問題点)
3 好感を持てる主人公ではなく、感情移入できる主人公であること
※観客が理解できるか(行動の意図が分かる)どうか
4 道徳的な欠陥だけでなく心理的な欠陥も持たせる
※心理的な欠陥…主人公だけに関係する
道徳的な欠陥…他者に対する適切な態度を学ぶことに関係
補足(本公演の稽古について)
今回の公演の稽古では、こうした内容は明示的にはまだ紹介されていないかもしれません。
(まあ、私が休んでいたときに説明されたことがあるかもしれません。私が全ての稽古に参加できているわけではないので、説明があったかどうかは定かではないです…)
ただ、これまでの稽古で、何度か軽い通しをして物語を即興で作り上げていく中で、こうした主人公の要素が自然と見え隠れしていることがいくつかありました。
これには、もちろん指導者である脚本家かつ演出家(そして本人曰くインプロバイザー)の園田さんの存在が大きいと思います。
当然ですが、園田さんは脚本理論に対しても非常に造詣が深いので、こうしたことを念頭に置きつつも、あえて説明をせずに稽古を進めることで、みんなが自然と理解していくように工夫されている様子がうかがえます。
その結果、こうした要素が稽古の中で自然に体に落とし込まれ、身についていくという流れができていて、僭越ですが「さすがプロだな」と感銘を受けました。
私自身がフルレングスインプロの指導・企画/演出をしていたときは、どうしても理論的な説明や話が長くて多くなってしまい、それを実際に実践に落とし込むまでに結構な時間がかかっていました。
今回の公演の稽古では、そのスピード感が私が以前やっていたものと比べると、遅くても3倍、あるいは5倍くらいの速さで、私が目指していたことが次々となされていく様子を見て、本当に勉強になっています。
(良い経験をさせてもらっています…)
次回は、これを受けて、主人公の変化について書いてみようかなぁと思います。
※SNSとかで反応をいただければ、続きを書くモチベになるのでぜひコメント等お願いします(^▽^)/
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【公演情報】

私が出演するのは、15日日曜日の15:00〜/19:30〜の2公演となります。
ぜひご興味がある方は、こちらの申し込みフォームからご予約をお願いします。
【ご予約フォーム:へちゃっぷりん扱い】
https://www.quartet-online.net/ticket/onestory60?m=00gabij