12. 自分の弱点を知る方法
自分自身の、英語の弱点を知っているという方は、何人くらいいらっしゃるでしょうか?
英語が苦手、自分は英語が下手だから…と言いつつ、実は、自分の弱点を知らないという方が意外に多いのではないでしょうか?
私も、以前は、漠然と、「私は日本語英語しか話せないし、私の英語はネイティブに通用するものではない」と思っていた時期があります。
その頃は、ネイティブの様に英語を使いこなせるようになりたいと、まだ、思っていた頃ですから。
さて、その頃の私は、「私の日本語英語」をひとまとめにして、全部が全部、ネイティブに通用するものではないと決めて掛かっていました。
というより、自信が無かったんですね。いや、自信が無かったというより、自信を持っていることが通用しなかったり、自信を持っているのに間違って恥をかくよりは、最初から自信を持たない方が良いと思っていたのかも知れません。
それが、英語圏で生活をするようになってから、自信が無いことを理由に、英語を使うことを避けている訳にもいかなくなってきました。
特に、当初、日常生活の中で極力日本語を使うことを避けていた私には、生活を続けていくには、下手な英語を使うしかありませんでした。
しばらくすると、自分の英語の中に、そのまま通じるものと、そうでないものがあることが、なんとなく見えてきました。
自分の英語の中にある通じない部分を自分自身で理解すると、これは、英語を使いこなせるようになる上で、とても大切なことだと思います。
例えば、書くこと。
私は、英語の日記の添削をしばらくしてもらっていたことがあります。元々、書くことが好きだったので、毎日数ページに渡ってその日の出来事を書き綴り、添削してもらいました。
文法やスペリングにはあまり問題は無かったものの(勿論、辞書を使ってのことです。ちなみに、その頃は、電子辞書ではなくて、時間を掛けて紙の辞書を使っていました)、a、 an、 theといった冠詞は、最後の最後まで直されていました。
これは、慣れるしかないと思いますが、慣れる為にも、下手な英語をそのまま使って、それをきちんと訂正してもらう必要があると思います。
話し言葉の中では、あまり訂正されることのない冠詞も、書き言葉の中では、きちんと訂正してもらうことが出来ます。(勿論、英語はネイティブという人の中にも、使い方を間違える人はいますが。)
次に話すこと。
話し言葉の弱点は、同じ人の輪の中でばかり話をしていると、残念ながら見つけ難くなってしまいます。
発音、そして言い回し、共に、私の英語を聞き取ることに慣れてしまった人は、訂正も聞き返すことも、直ぐにしなくなってしまいました。
話し易く、楽なのですが、その中にいては、いつまで経っても自分の弱点を知ることは出来ません。
大勢の人が集まる場所へ行っても、私の英語に慣れた人が、自然に通訳の様な役割をしてくれたりと、自分の下手な英語を現実の英語社会の中でぶつけることが難しくなってしまったことがあります。
そんな時、私はニュージーランド一周の一人旅に出ました。
ここで、私は、嫌というほど自分の英語の弱点を知ることになりました。
行く先々で、宿泊先の予約から観光の手配を自分で行い、世界中から来ている同じような旅行者と友達になっては、会話をする。
そんな中で、私は、BirdやBirthday、Girlといった「ir」音が通じ難いこと等を発見しました。
自分の英語の弱点を見つけただけでなく、下手な英語を、素直にそのままぶつけることで、いろんな出会いもありました。
カナダから来た女の子が、「R」と「L」の違いを私に解らせようと、必死になってくれたこともあります。
アフリカの赤十字で二年間ボランティアをした帰りだというアメリカの英語の先生からアドバイスを受けたこともあります。
テキストの英語でもなく、教室で習う英語でもなく、こういった現実の場面で自分の英語の弱点に気づいて、その場で恥をかいたり、誤解を解こうと必死になったり、嬉しいアドバイスをもらったことは、今日の私の英語に欠かせない「学習の場」だったような気がします。
今でも勿論、「W」の発音の発見など、日常生活の中で学び続けていますが、こうして学んだことは、覚えようと必死になることもなく、自然に頭の中に残っています。
そういえば、こんなこともありました。
コンピューターのコースに通っていた時に、グループでプレゼンテーションを行う機会があって、その予行演習をしていた時に、私の「various」の一言に、みんなが固まってしまったことがありました。
下手な英語をそのまま使い、何度も間違いを繰り返し、自分の弱点を見つけることにすっかり慣れてしまった私は、今では、他の人の表情を見て、「私の発音や言い回しに問題があるな」と直ぐに判断することが出来ます。
そこで、「私の”various”の発音って、分かり難い?」と聞き、そんなことは無いけど…と気を使ってくれるメンバーに、「”several”はどう?」と聞くと、そっちの方がいいよという笑顔が返ってきたので、「various」を「several」という単語に置き換えたことがあります。
グループでのプレゼンテーションでは、グループで評価を受けるので、出来るだけ私が足を引っ張らないように、下手な中にも通じ易い英語を使わなければと必死でした。
その後、仕事でプレゼンテーションを行う機会があっても、聞き取ってもらい易い単語を使い、コンピューター上でのドキュメントなどでフォローするようにし、私の英語は日本語英語だから、分からないことは遠慮なく聞いて欲しいと事前に伝えることにしています。
これも、自分の弱点に気づいた経験から学んだ「技」です。
自分の弱点を知る一番の方法は、自分の下手な英語を、下手なまま、相手にぶつけるしかありません。
練習に練習を重ねて、上手になった英語のみを使っていたのでは、いつまで経っても自分の弱点は見えてきません。
書くことでも、話すことでも、そのまま、今の自分の英語を相手にぶつけてみましょう。
きっと、自分の英語の弱点が自然に見えてくると思います。
そうしたら、後は、その弱点を克服する手段を見つけるだけです。
発音なら、集中的に練習して、苦手な発音を無くしてしまうという方法もあるでしょうし、言い回しや使い方を変えるという方法もあります。
弱点さえ掴んでおけば、対策はいろいろと考えることが出来ます。
自分の弱点を、最初に相手に伝えておくという「技」も使えます。
是非一度、自分の英語の弱点を探ってみて下さい。
今回の技は:
「下手な英語を使って、自分の弱点を発見しましょう!」
※この記事は、2003年に発行していた「下手英メールマガジン」で紹介していた「下手な英語を使うための技」に加筆修正を加えて、現在無料再掲載中のものです。令和版は、近日有料公開予定!
下手英メールマガジン発行から20年後、「2023年の後書き」:
英語圏での生活が長くなればなるほど、周囲には、自分より英語圏での生活歴が短いという人が自然と増えます。
日本人は勿論、日本以外の国から移民してきた、英語が母国語ではないという人たちと、英語で話す機会もあります。語学学校に通うことなく、日常生活やビジネスの場での英語を上達させる方法について、相談にのって欲しいと頼まれることもあります。また、ニュージーランドの暮らしや公的手続き等について、手伝って欲しいと頼まれることもあります。
長い間、そうやっていろいろな人たちの話を聞く内に、英語が使えるようになる人とそうでない人が、なんとなく分かるようになってきます。
「あっ、この人は、英語が使えるようになるな」と、すぐに分かる人というのは、自分の英語の間違いを素直に受け入れることが出来る人です。「そんなことくらい、私も出来る」と思う方は多いと思いますが、語学学校の授業中などではなく、実際に、英語環境で生活している中で、英語の間違いを指摘されて、すんなりと受け入れることが出来る人は、案外少ないものです。
間違いを素直に受け入れることが大切なのは、そうした方が、自分で自分の間違いを正すことがし易くなるからというよりは、そうした方が、周囲の人たちから間違いを指摘してもらえる確率が高くなるからです。
そのままにしておくと、その人がいずれ恥をかいてしまうとか、大きな失敗に繋がるかもしれないという英語の間違いに気づいた時には、その間違いをやんわりと指摘してあげることにしている英子です。そんな時に、とても嫌な顔をされたり、逆切れしたりされると、どうしても、次回は、黙っておこうという気になってしまいます。
間違いを指摘されることに慣れていないと、嫌な気分になるのは当然だと思いますが、そこは、英語環境での生活の出来るだけ早い段階で、慣れるように努力してみて下さい。
英子のように、何度も何度も、間違ったり、失敗したりすることを繰り返すと、間違いを指摘されることに慣れるだけでなく、指摘してもらえることが、本当に嬉しくなります。その域まで達すれば、楽しく英語を上達させることが出来るようになります。ぜひ、実践してみて下さい。
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