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【第15回】カーテンでぜんぶしゃだん…
執筆:副島 賢和(昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当)
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私が教員になった、平成元年。そうです。三十年前、二十歳未満の子どもの死亡者数は、約一万五千人でした。
最近は、約五千人です。三分の一です。
それはとても素敵なことだと思います。
そして、本当に医療はよくがんばってきたのだと思います。福祉も、社会も、そして何よりもご家族、本人のがんばりが表れた数字ではないでしょうか。
ただ、私としてはこの数字を見たときに忘れてはいけないことがあると考えています。それは、五千人の子どもは命を落としているということです。そこには一人ひとりの命があり、家族がいます。そこにかかわった人たちもいます。その方たちにとっては、とても大きな一人です。亡くなる人の数が減れば減るほど、そこにかかわる人や、想いを寄せる人の数も減っているのだと思うのです。私たち教育に携わる者は、そこに立つ必要があるのだと考えます。
そしてもう一つ忘れてはいけないことは、命がある子ども全員がいわゆる病気や障害がない状態でいるわけではないということです。病気や障害を抱えながら、生きている子どもたちも確実に増えています。そのような子どもたちやご家族が質の高い生活を送るためにはどうしていけばよいのかを考える必要があるでしょう。
また、病気を抱えながら、成長し成人期をむかえている子どもたちもいます。AYA世代(adolescent and young adult)といわれている人たちがいますが、みなさんご存知のように、小児から成人の移行期についてはまだまだ課題も大きいです。
その子との出会いは、今から十年以上前のことです。その子は今年、成人式を迎えました。再入院をしてきたのですが、もちろん成人病棟です。
メールが来ました。
「カーテンですべてが遮断されてる。今までにない経験ですね」
5〜6人の大部屋でもそれぞれのカーテンが閉まっている状態です。窓側の人には日光が当たっていても、廊下側の人までは届きません。みなさん、寝ているのでしょうか、ヘッドフォンをしているのでしょうか、病室はとても静かです。私も成人の病棟に顔を出すことがありますが、やはり気の使い方が小児科の病棟とは異なります。
小児科の病棟での経験が長かった子どもたちにとって、成人の病棟は、とても寂しいという話をよく聞きます。
小児科の病棟では、病状にもよりますが、カーテンは空いていることが多いように思います。とくに、子どもたち同士が仲良くなってくると、処置などの事情があるとき以外は、「おやすみなさい」というときまでほとんどカーテンは開けっぱなしです。
人はかかわりのなかで、成長したり癒されたりすることがあります。がんばる力も蓄えられるようです。小児科の病棟では、そのことも考えているのかもしれません。
「飲み物買えて、テレビが観られるのはいいね」
という子もいます。
確かに、小児科の病棟に比べたら、制限は少ないでしょう。それでも、そんな言葉を伝えてくれるのは、成人の病棟に入院をした初期のころだけです。
小児から成人の移行期を経験している子どもたちにどのようなかかわりをすることが必要なのでしょうか?
医療だけでなく、福祉や教育も一緒にその世代の子どもたちのことを考えなくてはいけないところに来ていると思うのです。
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※本記事は、へるす出版・月刊誌『小児看護』の連載記事を一部加筆・修正し、再掲したものです
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