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【第16回】だれ…?
執筆:副島 賢和(昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当)
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最近は、全国にある病院のなかの学校や学級に伺うことが増えました。
設置校の先生方のご尽力や病院のご協力をいただき、通っている子どもたちやご家族にもお会いする機会をいただいています。本当にありがたいことです。
初めて伺った教室には、できるだけ子どもたちがいるときに、子どもたちのあとから入らせてもらうように心がけています。先に教室に入っていて、子どもたちを出迎える形はできるだけ取らないようにしています。
なぜなら教室は、子どもたちにとってホームグラウンドだからです。私が先に着いたときも、子どもたちが来るときには、一度廊下に出ます。
「こんにちは、おじゃまします」
と、あとから入ることで、子どもはこの教室が自分たちのホームグラウンドであることを確認します。
入院をしている子どもたちにとって、病院のなかでは、アウェイ感を味わう瞬間がたくさんあります。
もちろん病院では、ベッドの上では痛いことをしないように処置室を設けたりしてくれます。できるだけカーテンを閉めたベッドの上は、その子の生活空間になるように最大の配慮をしてくれています。
それでも、病室のベッドの上を自分のホームグラウンドだと思えている子どもはそれほど多くはないでしょう。
そんな子どもたちにとって、病院のなかにある学校や学級、いわゆる院内学級は、病院のなかの数少ないホームグラウンドなのです。それをまず保障する必要があると考えています。
「だれ?」
私の顔を見ると、直接そう聞いてくる子どももいれば、表情でそれを伝えてくれる子どももいます。気がつかないように装う子もいます。
その子との距離を考えながら、私のほうから自己紹介をします。
そのときに伝えたいことは、
「あなたを傷つけません」
「あなたを尊重します」
ということ。
毎回、言葉にするわけではありませんが、表情や距離でそのことを伝えます。話す口調や内容も考えます。
子どもによって、最初から話をしても大丈夫だったり、さらっと自己紹介をしただけで、一度離れたりもします。その時々で、変えていきます。かなりの勝負です。
なぜなら、私は子どもたちにとって、自分たちの日常にやってきた、非日常だからです。お客であり、イベントだからです。
教育は、日常の営みです。子どもたちにとって、当たり前のことです。たとえどんな状態であったとしても、学びや遊びは常に子どもたちの傍にあるものです。
「学ぶことは生きること」なのです。
だからこそ、この日、この時間にだけやってきた私の役割があります。その役割を務めるために、よそ者である私をどうやって受け入れてもらうか、帰るときには、その子とどのような関係を築くことができるかを、懸命に考えています。今までも病院のなかでたくさんの子どもたちと出会ってきましたが、実は、毎回緊張しておなかが痛くなります。
「この人は何をしに来た人なのだろう?」
子どもたちは、自分の味方かどうかをすぐに見分けます。傷つきのある子どもたちは、その感覚が研ぎ澄まされているようです。
”あなたの味方は、ここにもいますよ”そんなメッセージを子どもたちに渡すことができたら嬉しいです。これからも、たくさんの教室に伺って、子どもたちに会いたいと思っています。
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※本記事は、へるす出版・月刊誌『小児看護』の連載記事を一部加筆・修正し、再掲したものです
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