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リエントリーショック

帰国して1か月が経った。

当初は目に映るものすべてに感謝できていた。

自分の足音だけが響く住宅街、
コップに注いでそのまま飲める水道水、
自分の可愛さを知っている幸福そうな犬、
コンビニで買えるシュークリーム。
なんて素晴らしい国なんだ!

と。

しかしその効果は1週間と保たない儚いものだった。

毎週中央線が人身事故で止まる。
大喜利会場になった都知事選ポスター掲示板。
片道2時間の通学路、車内広告は「脱毛」「婚活」「転職」。
降り続く雨が連れてくる鈍い頭痛。

そうだった、別に日本も天国じゃなかった。
むしろ渡航前よりディストピア感マシマシ。

インドは思ったよりいい国で、
日本は思ったよりいい国ではなかった。


ポジティブなことも書いておかないとと思ったので、以下、今月出会えてよかったものを紹介。


・BANANA FISH / 吉田秋生

家にあった全巻セットをようやく読破。Twitterのオタクが騒いでいたので大体展開が想像ついてしまったが、改めて自分で読んでみて、噂通り喪失感に苛まれ、読後しばらく落ち込んだ。『海街diary』の時は正直絵柄があまり好きではないなと思っていたけど、今作でガラッと印象が変わった。セリフがいちいち小洒落ているし、表情で人の心の機微を描くのが上手すぎる。


・はたらかないで、たらふく食べたい / 栗原康

タイトルに共感しすぎて購入。1記事につき1人歴史上の人物のエピソードを紹介しながら、明快に「働きたくない」「でも楽しく生きていきたい」という普遍的な欲望について語っている。素朴な文体に「何バカなこと言ってるんだコイツ」と見下しそうになるが、最終的には『結局この人も本1冊書けるくらいちゃんと働いてるよな」という感想に落ち着いた。あぁでも、やっぱり働きたくない。


・社会人大学人見知り学部卒業見込 / 若林正恭

前読んだ『ナナメの夕暮れ』より前に書かれた、オードリー若林さんのエッセイ。特に前半に収録されている尖ったエピソードは今の私と年齢が近いせいかうっかり共感させられるのに、読み進めるにつれてそれが「自意識過剰」だと年を重ねた筆者本人に唾棄されるという、罠のような仕上がり。スタバの「グランデ」はどうしても言いたくないし、ビレバンに行ったら岡本太郎のコーナーに目が行く。人見知り学部、私はまだ卒業を見込めない。


・No Busesとbetcover!!のツーマン

観客がほぼ大学生の男で、音楽ってファッションだよな、と自分を棚にあげた。No Busesは今までちゃんと聴いたことがなかったけど、ボーカルが掻き消されるほどの轟音に、前フェスで聴いたナンバーガールを思い出した。betcover!!はすごかった。なんか、見てしまった…!感。このすぐ後に柳瀬さんがドラマーを殴ったとかどうとかで騒ぎになって笑ったが、またライブ行きたい。


道端に落ちてる初心者マーク
ぼったくりカンジャンケジャン
プラスチックみたいなオウムガイ
寒そうなハト
西荻窪のミールス
切実な落書き
全然珍しくない星型のピュレグミ
もう1週間以上刺さってるプリキュア
渋谷で食べたカキフライ

暇なのでどうでもいいことをたくさん考えたし、本当はもっと書きたいことたくさんあったはずなのだけれど、ものを読めば読むほど書くことに対するハードルが上がって筆が進まなかった。私はわがままなので、他人の話は聞きたくないし、自分の話はいくらでもしたい。でもそれを面白く聞かせられるほどのトーク力はないので、こうして文章で思いっきり吐き出して、他者からの反応は構わないふりを装いつつ、実際は大いに期待して投稿する。もう7月のことを書きたくて仕方ない。

♪ 君の秘密になりたい / PK shampoo

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