4月15日〜4月21日
4月15日
・見ず知らずの人の家とは思えないほどくつろいでしまった。エアコンの代わりに働くファンの音以外は本当に静かで、気持ちが良くてうたた寝を繰り返した。
・おばあちゃんとおじいちゃんはマラヤーラム語で会話する。学生時代はヒンディー語を習っていたらしいけど、もう忘れてしまったとのこと。おじいちゃんは昔海外に出稼ぎに行っていたらしく英語がわかるが、耳が遠いのと滑舌の問題で私は意志疎通できなかった。けど、お二人とも完全なる他人の私にもとてもやさしかった。
・庭にバナナの木が生えていて、青い実がなっているのも見られた。ケーララではバナナは実だけでなく葉も幹も料理や生活用品に利用するので、庭に生えているのは普通のことらしい。SDGs がどうだ、とか言う環境保護活動家より、よほど持続可能な生活を実践しているなと思った。
・基本的に毎食おばあちゃんの作る手料理をいただいた。流石ケーララ、ジャックフルーツやパイナップルのカレーも出てきた。どれも手が込んでいて美味しかった。マンゴーの皮をむくときは、台所に備え付けてある専用のナイフを使っていた。
・猫が4匹ほど棲みついていて、食事を準備する匂いや物音を聞きつけて玄関に集まる。いつも食べ残しや骨などをあげているらしい。昼時になると「メシはまだか?」と言わんばかりに鳴く声が外から聞こえてくる。
4月16日
・近隣にあるご親戚のお宅に挨拶まわり。一軒目のお宅は川の近くにあって、そこで洗濯や入浴している人も見かけた。そんなにきれいな川には見えなかったが…。お家では手作りお菓子をたくさん振舞われた。Achappam、別名 Rose cookie という花のような可愛らしい見た目のスナックはほんのり甘くて美味しかった。インスタグラムのリール動画で作り方を見かけたことがあるが、たしか専用の型に生地を流し込んでスタンプを押すように油に浮かせて作っていた。インドのスナックは基本揚げ物か致死量の砂糖が使われているので、おなかのポッコリ具合には納得がいく。
・二軒目のお宅に向かう途中、大きな水道橋があった。長い階段をひいひい言いながら上ってみると、絶景だった。日本にあったら間違いなく観光名所になっているのに、地元の人はまるで興味がなさそうだった。マッディヤ・プラデーシュ州まで続くという大きな山脈や、ヤシの木の緑の海、うねった川などが一望できた。そんな大自然の脇で道路工事も行われていたりして、ケーララの豊かさが味わえるのも今のうちかもしれないと思った。
・二軒目のお宅に着いたころにはだいぶ暗くなっていた。マラヤーラム語の談笑に混じれるはずもなく、飼い犬を撫でまわしていた。英語で Sit down とか Stand up とか言っても聞かないのに、おじさんがマラヤーラム語で「ワ゛!」みたいなことを言うと急に大人しくなって面白かった。そりゃ犬は言語じゃなくて音で理解しているからなのだが、なんだか「マラヤーラム語は理解できるが、英語は理解できない犬」という事実がおかしかった。
4月17日
・ご実家から車で1時間ほどにある、インドの最南端・カンニャークマリへ。この日あたりから選挙の影響で店が閉まっていたり、アルコールの提供が禁止されていたりした。海辺の観光地特有の貝殻でできた土産物屋が多く立ち並んでいて、なんだかテンションが上がる。
・コモリン岬はアラビア海、ベンガル湾、インド洋の3つの大海が交わるところで、インドで唯一、日の出と日の入りが見られる。目視では海の違いはわからなかったけれど、大きな寺院から続く道の先にはガートがあって、この海が神聖視されていることはうかがえた。海岸から見てひときわ目を引くのは、大きな Thiruvalluvar という詩人の像。その脇にはヴィヴェーカーナンダが瞑想に使っていた講堂もあるらしい。船に乗ってその2つを間近に見ることもできたのだが、着くのが5分遅くて乗り損ねてしまった。まあ、遠くから見ても十分楽しめる。
・途中フィルターコーヒーを飲んだりして時間をつぶし、サンセットを見にまた海辺に戻った。砂を使って煎ったピーナッツをつまみながら、展望台へ。観光客とみられる人たちが話しているのを聞いて、そっか、しばらくヒンディー語使ってないなと思った。せっかくヒンディー語のために留学したのに、最近は英語英語で勉強できていない。展望台からは180度、弧を描く水平線を見渡せた。その端に落ちる夕陽を見て、インドの一番好きなところは夕焼けが美しいところかもしれないと思った。
4月18日
・朝、おじいちゃんとおばあちゃんも一緒に近所のガネーシュ・テンプルに行った。別に観光地になるような有名な寺ではなく、地元の人が日常的に参拝するところだった。とはいえ2000年の歴史があるとかないとかで、そういうのに興味がない私もなんとなく背筋が伸びるような、そういう雰囲気があった。寺院の中に入る前に、おもむろにディレクターさんとご子息がココナッツの実を取り出し、地面に叩きつけ始めた。ガネーシュを祀る寺院特有の習慣らしい。男性陣はトップスを脱ぎ、中に入る。むわっとした寺院の中には色々なところに色々な神様がいて、拝み方も人それぞれなようだった。寺院の周りには飼われている牛がいたり、大きなニームの木があったり。足の良くないおじいちゃんをおばあちゃんが手を取りながらゆっくり参拝する姿が、なんだか素敵だった。
・午後は山の中腹にあるハヌマーン・テンプルに連れて行ってもらった。30分以上またひいひい言いながら登ると、これまた絶景だった。今度は真っ白なキリスト教会とか、各都市につながる鉄道とか、その奥にゆるやかなカーブを描く水平線とかが見えた。やっぱり山登りは疲れるけど、またきっと思い出す光景が1つ増えた。
・夕方、昔の教え子だという女性と会った。昔からあるというアイス屋さんで、一緒にゼリーに乗ったバニラアイスを食べた。その後すぐ近くにある小さな店でジンジャー・コーヒーなるものを飲んだ。コーヒー要素はあまり感じなかったけど、美味しかった。夜ごはんは Prabhu Hotel というところで、ディレクターさんのご友人と食べた。私は人見知りを発動して完全にアウェーだったが、ご飯は美味しかったし、古い仲のつながりを大切にされているのは素敵だと思った。中学校を卒業したときに受験失敗のショックをこじらせて大半の人のLINEをブロックしてしまったこと、結構悔やんでいる。
4月19日
・朝ごはんを食べて、チェンナイに向けて出発。おばあちゃんとおじいちゃんとお別れするとき、なんだか泣きそうになった。たったの数日だったし、言葉も通じなかったのに、温かい人柄が伝わってきた。関係ないのに、亡くなった祖母に勝手に重ねて、別れるのが苦しかった。
・夕食はチェンナイから1時間ほどのところにある、マハーバリプラムというリゾート地でとった。ここでもまたディレクターさんのご友人とお会いした。やっぱり会話には参加できなかったが、波の音を聞きながら美味しいごはんとモクテルを味わうのは最高の贅沢だった。インドにもこんなビーチがあるなんて知らなかった。日付が変わる前にはチェンナイに着いた。
4月20日
・旅行の疲れが、とか言って、ただぐうたらしていただけ。気持ちの切り替えというものが苦手で、贅沢三昧の日々から現実に戻ってくるのには時間がかかった。
4月21日
・明日からいよいよ教師として授業を受け持つ、というのにどうにも緊張感というものがなく、またぐうたらしてしまった。本当の本当に直前になってから焦るのは、いつも通り。
インターンと銘打っていいものか、と思うほど、贅沢させてもらってしまった。しかも南インドの一般家庭の日常を覗かせてもらうなんて、願ってもなかなか叶わない体験をさせてもらったと思う。勢いで応募したインターンだったけど、本当に来てよかったと思った。あとは働きで恩を返さなくてはいけない…
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