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4月29日~5月5日

スマホのメモ帳に日記に書くことを箇条書きにメモしているのだけれど、今週のメモに関してはインド要素もインターン要素もほとんど見当たらなくて、そういったものを期待している読者様にはブラウザバックを推奨します。ただ、この1週間はいろいろ観たり読んだりしたので、メインはそれについて書いていきます。

4月29日
・受講生のイラストコンテストの審査を依頼された。応募総数の多さにも、絵のクオリティの高さにも驚かされた。水彩画のような淡い色使いというよりは、ビビッドで大胆な色調のアニメチックな作風が多かった印象。街中の壁は必ずイラストが描かれているし、インドには潜在神絵師が多いのかもしれない。
・朝ごはんのとき料理を作ってくれるアッカがまだ来ていなかったので、校長先生がサンドイッチを作ってくださった。久しぶりにクロワッサン食べられて幸せだった。
・帰国1か月後にある吹奏楽サークルの演奏会に出演することにした。軽い気持ちで引き受けたが、じわじわと後悔し始めている。ブランクもあるし、1か月で4曲も吹けるようになる気がしない。音源を聞き漁るくらいしかできない。でも、休学期間にちょっとは人と関わる機会ができてよかった。
・(世間では早いと言わない)早起きをしたら、1日中なんか気持ち悪かった。

4月30日
・授業内で初めて漢字を教えた。表意文字というものは外国人にとってかなり受け入れがたい概念なのだということがわかった。何回説明しても頭の上に「?」が浮かんでいるのが見える。他の先生に相談したら、そのうち慣れる、とのことだった。塾講師をやっていたときに、いかにも慶應生っぽい先輩が「成績がいいやつって聞き分けがいいやつで、それって頭がいいのとは別の才能ですよね」と話していたのを思い出す。疑問を呑み込んで、ひとまず暗記してしまうというのも一つの生存戦略ではあるが、それでは後々私のような空っぽ人間ができあがってしまう。今回の日本語授業の最終目的は最低限の日常会話フレーズを覚えることと、ひらがなカタカナの文を問題なく読めるようになることなので、正直漢字に時間を割く理由はない。ないのだが、どうしても学生側からの質問に「そういうもんだ」で答えるのはこちらとしても気持ちが悪い。綺麗事だろうか。

5月1日
・コウメ太夫の音MADシリーズを見ていたら眠れなくなり、11時過ぎにフロントからの電話で起床。事前に知らされていなかったのだが、とある先生がお待ちとのことで高速着替えをする羽目になった。最悪。授業の進め方についてレクチャーしてもらった後、学生からの質問が多い「が」と「は」 の違いについて聞いてみた。「どれ{は/が}○○さんのスマホですか」という例文を挙げて、「疑問詞の後は<が>になる」と説明していると言ったら、「どれ<は>○○さんのスマホですか」は正しい、何も間違っていない、と言って聞いてもらえなかった。たしかに非文とまでは言えないのかもしれないが、ネイティブスピーカーが「違和感がある」と言っているのに頑なに「これは正しい」と自分の意見が貫けるの、皮肉ではなくすごいなと感心した。自分の意見に自信をもてるのは、それを裏付ける努力があってこそだと思うので。
・もうすぐこどもの日ということで、教室にこいのぼりが飾られた。しかしメーデーとやらでほとんどの学生はオンラインで授業に参加していた。
・電力不足でドライヤーが使えなかった。
・寝る前に『アンナチュラル』が Netflix で配信されていると知って、「一話だけ…」のつもりで観始めたら、案の定徹夜で完走してしまった。野木脚本の時点で良いことは観る前から確定していたのだが、想像以上だった。全話に社会に一石を投じるような問題意識があると同時に、キャラクターそれぞれの人間的な葛藤も見られて、どこを切り取ってもセリフの奥に徹底的なリサーチと深い思考が感じられた。『ラストマイル』は這ってでも公開初日に観に行こうと心に決めた。

市川実日子さんかわいすぎないか

5月2日
・部屋を掃除してくれるアッカが家庭の事情で来られなくなってしまったという。床が白いと抜けた髪の毛が一目瞭然で、その量の多さに「どこかに10円ハゲでもできているんじゃないか」と心配になる。
・最近授業で学生からの質問責めにあう。聞き取るのに苦労するのはもちろん、内容も想像したこともないような頓珍漢なものばかりでどう答えていいのかわからず、「他の先生と相談して次回答えます」でやり過ごすしかない。シラバスからはどんどん遅れていくし、そういうたびに失望と呆れを雰囲気から感じ取って、心臓が痛くなる。台本を読み上げるだけのロボットなら、私である必要はないのに。
・昨日の出来心で、サブスクの元が取れていないなとふと思い、ネットで話題の『シティーハンター』を観た。内容はわたしの好みではなかったが、とにかく鈴木亮平の吹っ切れた演技が見ていて気持ちが良かった。

頭空っぽにして楽しめる

5月3日
・授業後、オードリー若林のエッセイ『ナナメの夕暮れ』が Kindle Unlimited で読んだ。読めると知らなかった。こうやって解除し忘れているサブスクがいくつあるのか考えてぞっとする。エッセイの感想としては、淡々とした語り口の中に見え隠れする繊細さとか攻撃性とかに、驚かされたりいたく共感したり、感情が忙しかった。私は未だに「スタバでLサイズをグランデと言うやつを心の中でバカにしてしまうタイプの人間」なので、もうちょっと寝かせてまた読みたい。

影響されやすいのでプロレス観に行きたくなった

・昼夜逆転というのは一回してしまうとなかなか治らない。眠れなくて、間違えて "The Matrix" を観てしまった。余計眠れなくなった。有名なバレット・タイムなどの撮影技法はもちろん、ストーリーも脳みそをカチ割ってくるような斬新さがあって、やはり評価されている作品にはそれなりの理由があるのだなと思った。宇多田ヒカルの "In My Room" の歌詞、『夢も現実も目を閉じれば同じ』という一節が一時期頭を離れなかったのだが、それを初めて知ったときと同じような衝撃を受けた。目の間に広がっている世界が「リアル」であると証明することはできないと気づいた時の、地面が揺らぐような感覚。あと、日本語の文字やカンフーアクションなど、オリエンタリズム的な部分も見受けられて面白かった。

わたしの知っているキアヌ・リーヴスとはだいぶ違った

5月4日
・やはり眠れず、これまた映画界では名の知れた “Interstellar” を観た。当時予告か何かで見たのでアンハサウェイが主役で寒そうなところにいる印象だったが、そこは全然メインではなかった。宇宙空間で起こる想定外のハプニングや新しい発見、誰も経験したことのない想像上の出来事を、どうしてあんなリアリティをもって表現できるのだろう。『マトリックス』もそうだが、「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」という名言が正しいのなら、もうなんでもアリじゃないか!と、ワクワクするような、絶望するような気持ちになる。海を隔てて生活しているだけでも日本にいる友人や家族とは隔絶されたような、自分だけ置いて行かれたような気持ちになるのに、地球と宇宙というバカでか規模の文字通り「冒険」をする宇宙飛行士という仕事に、尊敬と畏怖の念を改めて覚えた。

地球に居場所がないなら宇宙へ、って発想自体は脳筋?

5月5日
・妹のLINEのアイコンがディズニーで撮った男とのツーショットになっていて、しかもピアス開いてて、金髪で、怖かった。怖いと感じたのは、そもそも妹という人間に自我を認めていなかった自分がいたからかもしれなかった。そういえば自動車免許も簿記の資格も取ったと母が言っていた。妹の中ではとっくに時間は動き出していたのに、どこかそれを認めたくない自分がいる。停滞して周囲の流れに置いて行かれている自分を直視して、惨めになるのが恐ろしいからに違いない。どうしても見下して安心していたいと思ってしまう性根は変わりそうにないから、日本に帰ったら一人暮らしするなどして距離を置こうと思う。それがお互いのためだと思う。
・こどもの日のイベントで折り紙や言葉遊びのゲームをやる会があったのだが、30分ほど立っているだけでやたらと足が疲れて、1時間したころにはうっすらとした吐き気を覚えたり冷汗が出たりするようになった。不規則な生活習慣で自律神経がやられてしまったらしい。早寝早起き、そんなこともできない人間が生きている意味はあるんだろうか、とここ最近は朝起きた途端に希死念慮マシマシである。
・夜はスタッフの皆さんとバーベキューをした。N1の資格をもつインド人の方とお話して、その流暢な日本語が5年で習得したものだと知って驚いた。英語は小学生の時から英会話教室に通っていたし、ヒンディー語は学習を初めて3年になるというのに、ロクな会話もできない。努力の方向性を完全に間違えているうえに、その努力量も圧倒的に足りないことに気が付かされた。

BBQにもチャツネとパローターが出てくる

残り1か月になってもこんな感じでゴミみたいな生活をしているが、こんなにエンタメに恵まれているなら生きていける気がするような、いや、そんなに世間はあまくないような…帰国してからの将来について思うと憂鬱になるので、今はこのモラトリアムをどうやって延長するかばかり考えている。それはただの先延ばしで、未来の自分の負担を増やすだけなのだけれど。

♪ California coconuts / くるり

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