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5月6日~5月12日

5月6日
・この日は授業内の質問が多かった。やっぱり訊かれるのは、「は」と「が」の違い。Topic と Subject の違いなんて言ってみるものの、自分でもそれらの違いがわからない。他にも「おおい」は形容詞なのになぜ名詞の前では「多くの」「たくさんの」を使うのか、なぜ「多くの」は存在するのに「少なくの」は存在しないのか、などなど、ぱっと回答が思いつかない質問ばかりされてだいぶ時間を食った。ただ、学生の方から疑問が出る内は救いがある。少なくとも興味を持って話を聞いてくれている学生がいる。英語で検索していい記事がいくつか見つかったから、授業後に適当な記事をまとめて共有した。それくらいしかできることが思いつかない。

5月7日
・授業の後半で Wi-Fi が複数回切れ、Zoom の立ち上げ作業等で授業がだいぶ間延びしてしまった。復旧作業中は対面で受けている学生を待たせることになるし、かといってオンラインの学生のために授業を進めることもできない。こういう時に間を持たせる雑談力や英語力は持ちあわせていないので、気まずい沈黙が流れた。また信用を1つ失った気がする。
・『カラオケ行こ!』を観た。和山やま先生原作で脚本が野木亜紀子先生なので、まず間違いない。しかし冒頭のコンクールのシーンで、なんだか自分の吹奏楽関連の思い出が走馬灯のように脳裏に浮かんで、危うく視聴をやめそうになった。何度経験してもホールという空間独特の緊張感には慣れない。結局そこはほとんど本筋ではなくて、その後はひたすら面白かった。綾野剛も斎藤潤も、役者としてでなくそのキャラとして存在していて、観た後もどこかに狂児と聡実がいるんじゃないかと錯覚しそうになった。

『ファミレス行こ!』早く読みたい

5月8日
・パソコンの調子が悪かった。PDF を表示しようとすると目がバツ印になった困り顔が現れて、より一層苛立ちを覚えた。次第に症状は重くなり、ついには強制シャットダウンを繰り返すようになった。10回くらい再起動したり設定をいじったりしたら直ったけど、どうしてやる気が出たときに限って壊れるんだろう。
・流石にヒンディー語に触れてなさすぎて怖くなったので、Netflix のドラマ "Maamla Legal Hai" を1話だけ観た。わかっていたが明らかにリスニング能力は落ちていたし、0.75倍に落として字幕を付けても何を言っているのかよくわからなかった。でもこういうのを観ると、どうせ一生使うことのないだろうと思っていた『被告人』とか『起訴』みたいな法律用語に聞き馴染みがあったりして、大学の授業で先生が教えてくださったことはきちんと意味のあることだったのだなと思った。当たり前すぎる。真面目に受けていなかった私はもちろんそんな単語覚えているはずもなくて、途方もない時間を無駄にしたんだなと気が遠くなった。

日本語字幕もある珍しいパターン

5月9日
・綾野剛の演じるヤクザをもっと見てみたくなり、『ヤクザと家族』を観た。序盤は暴力、金、女、みたいな感じだった。この時の綾野剛の全身白い服に金髪の姿が色気たっぷりで良かった。しかしこの映画がすごいのはただの任侠モノで終わらないところだ。後半は1人の男が現代社会に取り残され、孤独な運命を辿る様を描いている。必要悪と呼ぶのは憚られるが、反社と呼ばれる勢力もまた、誰かにとってはセーフティーネット、最後の頼みの綱だったのかもしれない。「一度でも失敗したら終わり」というのは現代に生きる私たち誰もが感じている恐怖ではないかと思った。

最近の「晒す」ことの影響力が怖い

5月10日
・授業後に、いつも寝ている学生が英単語をノートにずらっと書いてみせ、日本語に直してくれと頼んできた。授業を聞かないでそんな内職をしていることを白状されても嬉しくないのだが、しかたなく全部書いた。最後の方はナンパ文句で、You are beautiful とか I love you の訳語を書かなくてはならなかった。どんな顔してこんなことを質問するのかと思って顔を見たらニヤニヤしていてさらに腹が立った。よっぽど Ask the google とでも書いてやろうかと思ったが、角を立てたくないので適当に書いた。私をからかっているのか職場の日本人女性に使いたいのかわからないけれど、外国語を教えるってこういう仕事か、とがっくりきた。

5月11日
・1か月ぶりに外に出た。日光を浴びないせいで体内リズムは崩れ、メンタルの調子もおかしくなりかけていた。それに、帰国までにお土産を買うチャンスがもうほとんどない。暑いので昼ごはんを食べてしばらくしてから街に出た。チェンナイのメトロはデリーに比べ本数が少なく空いている。駅から見える景色は清々しくて、なんでもない街並みが愛おしく思えた。Sancha tea bontique というモールの中にある老舗の紅茶屋で、お土産用にいくつかギフトボックスを買った。とはいえ紅茶だけでは寂しいので、また次の週末買い出しに出かけなければならない。

おもちゃみたいなリクシャー
光の差し込み方がよかった
タミル文字はいまだに読めない

5月12日
・ふと見始めた “Stranger Things” のやめ時がわからなくなり、この日から毎晩1シーズン丸ごとイッキ見するという最悪の習慣が出来上がった。それほど面白いかと言われるとそうでもなくて、最後の方はもはや義務感で観ていた。自分でも何がしたいのかよくわからない。

別に何があったわけでもないのに、ずっと部屋の中にいると病む。人間は光合成しないけど、太陽の光がないと萎びてしまうのだなと思った。
そして睡眠。最近ベッドに横たわると全身の至る所を蟻が這っているような感覚(文字通り蟻走感)があって眠れなくなる。問題なのは、私は今インドにいるので、それが実際に起きている事象であることも少なくない、ということである。
今週は3日連続で小さな蟻が手の上をのこのこと歩くのを目撃してしまった。払いのけた時に感触がしたから、幻ではない。では、寝る前のあの感覚は本物だというのか?そうだとしたら、一体何匹の蟻が知らぬ間に私と生活しているんだ?想像するだけで泣きたくなる。

♪ Are You Looking Up / Mk.gee

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