見出し画像

3月28日

無事朝起きることができたので、同室に泊まっている欧米人にバレないように準備し、バックウォーターの旅に出かけた。
約束通りの時間にホテルまで車で迎えに来てもらった。同じツアーに参加するドイツ人のお姉さんとフランス人のお兄さんも乗っていたが、軽く挨拶しただけだった。そこから船乗り場まで1時間ほどドライブ。
そこでまた別の4人家族と合流し、いよいよ乗船。あいにくの曇り空だったけど、ただ水の音や鳥の声が聞こえるだけの静かな空間に、既に「来てよかった」と思えた。
おじいさんが長い棒を使って漕ぐボートがゆっくりと進んでいくうちに、知らない水鳥が低く飛んでいくのが見えたり、ハイビスカスの花が咲いているのを見かけたりした。

波紋すら立たない静かな水面
おじいちゃん頑張ってた

別に何が起こるわけでもなく、舟は黙々と川の間を音も立てずに進んでいった。他の乗客もほとんど喋らず、静かに風に吹かれながら眺めを楽しんでいた。私の後ろに座っていた少年は退屈そうに本を読んでいたけど。
時折ジェットで進む小さなボートとすれ違う。網を持ったおじいさんが不意に川に潜って、魚を手で捕る。どんな魚が棲んでいるのだろう。
岸辺に住んでいる地元の子どもたちが手を振って、「どこから来たの?」と尋ねてきたり、洗濯物を洗っているおばあさんと目が合ったりした。
ある女の人が川にゴミを投げ捨てているのも見てしまった。それを見た欧米人は驚きと呆れにため息を漏らしていたけど、人の生活を覗き見する我々のことが気に入らなくて、わざとやったようにも見えた。いずれにせよ、ここで生活している人がいる、ここには生活があるということを再確認する出来事だった。

何かを運んでいる小舟
木が反射してるだけで、水は綺麗だったからOK
ジャングル・クルーズ
水鳥の親子、おもちゃみたいで可愛い

2時間ほどして、折り返し地点に来た。屋根が付いていてもすっかり晴れた空から差し込んでくる日差しは強くて、持ってきていたペットボトルの水は空になってしまっていた。デリーではあまり見かけないバナナ・チップスと一緒に買い足した。
そこでは可愛らしいおばあさんがココナッツの乾燥した繊維から紐を縒り出すところや、椰子の木の葉から屋根のパーツを編み込むところを見せてくれた。最初は観光客向けの演出の一環だろうと思ったが、実際乗っていた舟の屋根は椰子の葉でできていたし、出来上がった紐はどういうわけかとても頑丈だった。サステナブル、地球に優しい、自然との共生、そういう胡散臭い単語などがなくても、昔の人間はずっと知恵を絞って自然の中に生きてきたのだと思わされる。
あまりにも静かでのんびりとした旅だったので、気持ちが良くて帰りはほとんど眠ってしまった。勿体無い気もするけれど、あんなに贅沢な時間はなかった。

おばあちゃんもがんばりました

乗り場と同じところに戻ってきて、お昼ごはんを食べて終わった。
机の上には大きなバナナの葉が広げられ、おじさんたちが順々にごはんをのせていく。日本で初めてミールスを食べた時の感動が蘇る。北インドの料理とはまた違った美味しさ。他のお客さんはみんな食べきれず残していたのに、私ときたら誰よりも早く完食してしまい恥ずかしかった。
ずっとしたかったバックウォーターの旅ができて、しかも美味しいご飯も食べられて、大満足。15時にホテルの前に下ろしてもらって、1750ルピー。チップも強制ではなかった。
できることならアレッピーにも行きたかったが、限られた時間の中で最大限に楽しめたと思う。死ぬまでにもう一回、今度は貸切の舟の中で泊まりがけで乗りたい。

ごはんもおいしくて幸せ

バンガロールからポンディチェリーまでは車で6時間以上かかると聞いていたから、飛行機に乗るまではゆっくり過ごすと決めていた。
思いの外時間通りにホテルに戻ってこられたし、観光スポットは昨日まわりきった。本場のアーユルヴェーダを体感しようと1時間後にサロンを予約して、カフェに入った。
Kashi Art Cafe は、観光客が多いフォート・コーチンのエリアの中でも有名なカフェで、名前の通り近代美術作品に囲まれながら美味しいコーヒーが飲める。暑かったので Cold Coffee を飲みながら、バックウォーターの旅の余韻に浸った。
そして静かな通りにあるサロン Ayushveda Spa で、Shirodhara という頭にオイルを垂らす施術をしてもらった。ファンを止められた状態で思ったより熱いオイルを垂らされて最初は拷問かと思ったが、次第に気持ちよくなってくる。ベタベタになったけどシャワーも貸してもらえて、スッキリして出てきた。

私にはまだ早かった
脳みそについた垢が流れ出てた気がする

フライトは夜の10時。フォート・コーチンから空港までは1時間半はかかる。バスやメトロを乗り継ぐことも考えたが、1人でバックパックを背負いスーツケースを引きずって移動するのは現実的ではなかった。泣く泣く1500ルピーほど払って、タクシーで向かうことにした。
フライトをロスしたくない気持ちと昨日見れなかった夕陽が海に沈む様を見たい気持ちとが戦って出る時間を決めかねていたら、ホテルのフロントのおじさんが「一緒に観に行こうよ」と背中を押してくれた。看板犬のマリアちゃんを連れて、同じ部屋の女の子と一緒にビーチを歩いた。
海辺は多くの人で溢れていて写真映えこそしなかったが、やはり空と海がオレンジに染まっていくのはとても綺麗で、見られてよかった。
後ろ髪引かれながら、フェリーに乗って空港まで向かった。
コチ、想像以上だった。お金はかかるけれど、また絶対来ようと思った。

いいモデルさん
こういうのだけ見ていたい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?