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宮沢賢治と同じ日に生まれたけど

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモ負ケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル

…全てが正反対すぎる。7月は「雨」にも「夏ノ暑サ」にも敗北していて、心も体もどこか調子が悪く、散財しまくり、バイト先の客にも上司にもキレ散らかしていた。サウイフモノニワタシモナリタカッタナ。一生かかってもなれる気がしない。

インド人の友人が「おすすめの易しい日本語の小説はないか」と尋ねてきたので、『よだかの星』を勧めておいた。意地悪すぎただろうか。授業でやった『浦島太郎』は「なかなかつまらなかった」らしいから、日本昔ばなしを紹介するわけにもいかなかった。何をおすすめすればよかったんだろう。

そんな7月の記録👇


・サンシャイン水族館

週末の池袋だったので魚より人の方が多くてうんざりした。入り口近くの水槽でマイワシの群れが渦を巻いていた。解説文には「生き残るために群れ、子孫を残すために群れる」という一文があった。私は凄まじい勢いで旋回するマイワシよりも、その渦の中心でじっと佇むコブダイに目を引かれた。なんだか全てを諦めているようにも、呆気に取られているようにも見えた。コブダイに感情移入する日がくるなんて。

ペンギンやアシカも見たが、交尾しているリクガメを大勢の親子連れが囲んで見守っているのが1番面白かった。あるおばさんが「こんな衆人環視で…」と漏らしたのが聞こえてきて、笑いを堪えるのに必死だった。耳馴染みなさすぎるし、カメに使う言葉じゃなさすぎる。人間以外の動物の交尾を見てると、そうだった、私もただ種の保存とかいう誰かの馬鹿でかい思惑に巻き込まれた被害者だった、と思い出す。忘れてると生きてることに意味がある気がして苦しくなっちゃうから、動物の交尾は定期的に見た方がいいんじゃないか?

あと、最近の水族館はスマホのカメラでも映える写真が撮れるようにライティングなどにこだわっているのだなと感じた。星野源と新垣結衣が水族館デートした時の感想をラジオで話しているときに、魚には言及せず「光が綺麗だった」と言っていて、なんて素敵な夫婦なんだ!と興奮した。それがきっかけで水族館行ったのに、私と恋人は帰り道リクガメの交尾の話しかしなかった。だからダメなんだよ‼️

水族館で寿司食べたがる、みたいな擦られまくったノリ、反吐が出るけど、それを面白くなくても笑っておくのが社会性ってやつなんだろうな。私はイワシにもコブダイにもなれない。


・Serial Experiments Lain

中古でもゲームソフトが10万円するという、カルト的人気を誇るメディアミックス作品群。恋人に勧められたので履修した。

まず、アニメの方。ひたすら不気味。どこかチグハグな映像は、業界からアナログからデジタルへと移行する過渡期にその両方を取り入れた独特の手法が影響しているらしい。印象的だったのは、玲音の母親の食事中の口元のドアップのカット。必要なさそうで意味ありげで、とにかく見ていて不愉快になるリアルさ。『GANTZ』とかもそうだけど、人間の顔ってよく見れば見るほど気持ちが悪いよな、と思い出させる写実的な作画。なんでこんなものに私たちは美醜を見出せるのだろう、と冷静になる。

アマプラ的には「内向的=異常」らしい

アニメ本編とは対照的な雰囲気を持つのが、オープニングテーマの "Duvet" 。椎名林檎の “眩暈” という曲もそうなのだが、聴いた途端に湿度が変わるような、でも重たいどころか浮遊感があるような、不思議な雰囲気の音像。

一応全話見たものの釈然としないまま、精神科医・名越康文先生によるゲーム実況へ。こちらは現在進行形で投稿されているので、わりと今の生きがい。その道の専門である名越先生の観察眼には相変わらず圧倒されるし、その考察を導けるほど精巧に作り込まれたゲームの世界観にも驚かされる。新たな事実が明らかになるほど真相は見えなくなって、ゾクゾク。電脳世界と現実世界の葛藤を描く物語は世の中に溢れているけど、ここまでリアルに迫ったのは後にも先にもこの作品ぐらいなのかも。

アニメでもゲームでも、一貫して描かれているのは今日的な情報社会での自己のあり方だと思う。ペルソナという言葉は昔からあったけど、インターネットでの自己の言動を省みると、それはもう(ペルソナの語源である)【仮面】の付け替えで済む乖離具合ではなくなってきている。そうなるともはやその仮面を身につけたり外したりする主体の存在も疑わしい。このnoteを書いている私と、普段寝て起きてを繰り返している私は全くの別物だし、どちらが本物かと聞かれてもうまく答えられない。どちらも本物とも、偽物とも言い切れない。


・スタンリー・キューブリック監督作品

映画好きならみんな知ってるキューブリック監督。『時計じかけのオレンジ』『シャイニング』『2001年宇宙の旅』の代表3作を今更みた。ネットミームやマンガのパロディで見たことのあるシーンが盛りだくさんで、初見なのに初見じゃないところが多かった。クラシック音楽と暴力的なシーンの不調和とか、逆に恐ろしいまでに線対称にこだわった画面構成とか、正直内容はあんまり思い出せないのに脳裏に鮮烈に焼き付くような印象的なシーンが多い。有名な作品には有名になるだけの理由があるんだなーと思った。『時計じかけのオレンジ』見て「やっぱり下まつ毛長いと中顔面短縮で盛れるよな」っていうクソみたいな感想をもってしまい、もう私は取り返しのつかないところまで来てしまっていると思った。

・あとは『パッチギ!』とか、『ヴィーガンズ・ハム』とか、『エクソシスト』とか観た。感想書くのめんどくさくなってきたので割愛。

以下、なんか人に見せたくなるけどインスタに投稿するほどでもない写真。

帰国後初ドーサ
クワガタいるから町田は神奈川
相似の関係
なんか怖い花
あひる② 方向性の違いで解散
この見た目で美味しくなくてすごかった
モネの絵画みたいだった井の頭公園
花火で盛り上がる同期も内定持ち

『銀河鉄道の夜』も『セロ弾きのゴーシュ』も、読んで感動したはずなのにあまり思い出せない。「有名人の誰と誕生日同じなの?」の質問には、今度から「どんぐりたけし」と答えることにする。

♪ 寂しい宇宙 / Gateballers

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