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「ちゃんと踏める」とは?
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足部から骨盤・体幹、さらには上半身に至るまでの「連鎖」を踏まえつつ、「ちゃんと踏める」ことの意味と、その重要性・背景・改善アプローチをまとめています。最後に参考文献を掲載しておりますので、併せてご参照ください。
1. はじめに
多くのトレーナーやピラティスインストラクターが「ちゃんと踏めることは大事」と指摘する背景には、足部が全身の土台であるという事実があります。
足裏がしっかりと機能せずにアライメントが乱れると、その影響は膝・股関節、骨盤、脊柱を経て肩甲帯や頸部(首)にまで連鎖し、姿勢の崩れや慢性痛・パフォーマンス低下の原因になるからです。
2. 「ちゃんと踏める」とは何を指すのか
「ちゃんと踏める」とは、単に足裏を地面につけるだけでなく、
足裏(かかと、母趾球、小趾球)の3点に適切に荷重できる
足趾(特に小趾を含む全指)を使って地面を掴むような感覚を持てる
足首(足関節)・足趾の可動域を十分に活かし、足裏アーチが潰れずに働く
その反力を膝・股関節・体幹にスムーズに伝えている
という状態を指します。
この「踏む力」が崩れると、膝が内側に入りやすい、骨盤が前後左右に傾きやすい、上半身が不安定になる、といった連鎖が起こりやすくなります。
3. 足部の問題(小趾機能、足裏アーチ)
3-1. 小趾(足の小指)の機能低下
現代人の靴事情
幅の狭い靴やハイヒールなどにより、小趾側が圧迫されやすい。すると小趾をうまく使えず、足外側のアーチ(外側縦アーチ)が機能しにくくなる。バランス能力への影響
小趾側が使えないと、歩行や片脚立ち時の横方向のバランスが崩れやすい。さらに、重心が内側に偏り、足の内側アーチ(内側縦アーチ)が潰れたままになるなど、過回内(オーバープロネーション)を助長しやすい。
3-2. 足裏アーチの崩れ
アーチ機能の役割
足裏の内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチは、衝撃吸収・推進力発揮において不可欠。アーチ崩れの連鎖
アーチが潰れたり偏ったりすると、下肢全体のねじれが起こり、膝関節・股関節に負担がかかる。また骨盤も傾きやすくなり、全身に連鎖して姿勢を乱す原因となる。
4. 股関節~骨盤帯(恥骨筋含む)の影響
4-1. 恥骨筋 (Pectineus) の機能
骨盤前面を支える小さめの筋で、主に股関節の内転・屈曲を担う。
他の内転筋(大内転筋、長内転筋、短内転筋など)と協調して、骨盤~股関節の安定に寄与。
4-2. 機能不全や過緊張による姿勢への影響
弱化(使えない)場合
骨盤や股関節が不安定 → 脚の内外転コントロールが乱れる → 歩行や片脚立ちで骨盤が左右に大きく揺れる。
腰椎(L4–5、L5–S1)へ過度なストレスが集中し、腰痛を誘発。
過緊張(硬く短縮)場合
股関節が常に内転方向に引っ張られ、足部の回内(内側に傾く)をさらに助長する。
骨盤の前方牽引が強くなり、反り腰や骨盤前傾が強まる場合もある。
5. 上半身(胸椎、肩甲帯、頸部)との連動
5-1. 足部から脊柱への連鎖
足部不安定 → 骨盤傾き → 脊柱(腰椎・胸椎)のアライメント不良
足部アーチが潰れ、骨盤が前後や左右に傾いた状態が続くと、それを補正するために腰椎~胸椎~頸椎が代償的に伸展・屈曲・回旋などの負担を強いられる。
5-2. 肩甲帯・頸部への影響
肩甲骨の不安定 / 巻き肩
下半身の土台が安定せず体幹コントロールが乱れると、肩甲骨も胸郭上で安定しにくい。猫背や巻き肩になり、呼吸が浅くなる・肩こりが生じる、などの二次的問題を引き起こす。ストレートネック・頭部前方位
骨盤と胸椎の動きが悪くなっていると、視線を保とうと頸部が前に突き出す姿勢になりやすく、首コリや頭痛の原因にもなりうる。
5-3. スポーツ動作への影響
投球動作・スイング動作など、下半身からのパワー伝達が鍵となる競技では、足部の安定性が欠けると上半身(肩・肘・手首)に負担が集中する。
正しく地面を捉えられれば、効率よく体幹を通して腕に力を伝えられ、パフォーマンス向上やケガ予防が期待できる。
6. 改善アプローチ
6-1. 足部へのアプローチ
足趾エクササイズ(特に小趾も使う)
タオルギャザー、足指ジャンケン(グー・チョキ・パー)、足趾の開閉トレーニングなど。
小趾も含め、足指全体の可動性と床を掴む力を高める。
ショートフットエクササイズ
足裏の内在筋にスイッチを入れる代表的なトレーニング。
内側・外側・横アーチを意識して足底筋膜を適切に引き上げる。
靴選び・インソールの見直し
つま先に余裕のある幅広の靴を選ぶ。
必要に応じてオーダーメイドインソールで足裏アーチをサポート。
6-2. 股関節・骨盤帯へのアプローチ
内転筋群(恥骨筋含む)のリリース&ストレッチ
過緊張している筋をフォームローラーやボールなどでほぐす。
ストレッチで可動域を確保しつつ、筋力が弱化している場合は補強もする。
骨盤のニュートラルポジション獲得
ピラティスのブリッジやヒップローテーション系エクササイズなどで、骨盤の前後左右の傾きをコントロール。
内転筋と外転筋(中臀筋・小臀筋など)をバランスよく強化し、左右差を整える。
6-3. 上半身・体幹へのアプローチ
胸椎のモビリティ向上
キャット&カウ、スパインツイスト、胸椎伸展エクササイズなどで胸椎周りの柔軟性を高める。
肩甲骨の安定化エクササイズ
プッシュアップ・プラス(前鋸筋の強化)、ローイング系エクササイズ(僧帽筋中部・下部、菱形筋の強化)などで肩甲骨を正しい位置で動かす。
体幹の安定化トレーニング
プランク、サイドプランク、デッドバグ、ピラティス系コアエクササイズなどで体幹を安定。
地面を踏む力をしっかりコアで受け取り、上半身へ伝える感覚を養う。
7. まとめ
足部(小趾機能・足裏アーチ)の低下が起こると、足趾把持力の減少やアーチ崩れによって膝・股関節・骨盤・脊柱・肩甲帯・頸部へ不良姿勢が連鎖的に進む。
恥骨筋をはじめとする内転筋群の弱化や過緊張も、足部の不安定を補う形でアンバランスが生じ、骨盤の歪みや腰痛・股関節トラブルの原因となる。
上半身(胸椎・肩甲帯・頸部)まで含めて考えると、足元から頭部に至るまで一連の運動連鎖があり、どこかの崩れが全身に波及する。
改善には、足部・股関節・体幹・上半身を切り離さず、一体としてエクササイズやリリース・ストレッチを行うことが重要。
「ちゃんと踏める」足部を取り戻し、骨盤・体幹を正しくコントロールできれば、姿勢の改善・パフォーマンス向上・ケガの予防に大きく寄与する。
参考文献
Neumann, D. A. (2017). Kinesiology of the Musculoskeletal System: Foundations for Rehabilitation. Elsevier.
骨盤~脊柱~股関節~足部の機能解剖と運動学を包括的に解説。
Kendall, F. P., McCreary, E. K., Provance, P. G., Rodgers, M. M., & Romani, W. A. (2005). Muscles: Testing and Function, with Posture and Pain. Lippincott Williams & Wilkins.
姿勢評価や筋力テストの詳細が充実。足部と姿勢との関連も丁寧に扱っている。
Hertel, J. (2002). Functional Anatomy, Pathomechanics, and Pathophysiology of Lateral Ankle Instability. Journal of Athletic Training, 37(4), 364–375.
足関節周囲の不安定性が膝や股関節、さらには全身に及ぼす影響についてまとめられている。
Okuda, R. et al. (2006). Role of the toe flexor strength for forefoot deformities in Japanese female university students. Journal of Orthopaedic Science, 11(2), 148–154.
足趾の機能低下が外反母趾や足部アーチ崩れに及ぼす影響を示唆。小趾を含めた足指全体の強化の重要性が示されている。
Jung, D. Y., Kim, M. H., & Koh, E. K. (2016). The effects of short foot exercise and taping on navicular drop and lower extremity muscle activities during gait in subjects with flexible flatfoot. Journal of Physical Therapy Science, 28(11), 3136–3139.
ショートフットエクササイズが足部アーチや筋活動に与える効果を研究。
Kibler, W. B. & Sciascia, A. (2010). Kinetic chain contributions to elbow function and dysfunction in sports. Clinics in Sports Medicine, 29(4), 519–528.
下半身~体幹~上肢への力の伝達(kinetic chain)の重要性をスポーツの観点から解説。
以上の文献では、足部・股関節・体幹・肩甲帯に至るまでの連動性を多角的に示しており、「ちゃんと踏める」ための基礎知識やエビデンスを深めるうえでの参考になります。
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