脂質と炎症の関係
脂質と炎症の関係は非常に複雑であり、脂質の種類や代謝経路によって、炎症を促進する方向にも、抑制する(抗炎症)方向にも働きます。
ここでは、主に以下の観点から「脂質による炎症・抗炎症」のメカニズムを解説します。
1. 炎症性メディエーターとしての脂質
1-1. エイコサノイド(プロスタグランジン、ロイコトリエンなど)
エイコサノイドは、主に細胞膜のリン脂質に含まれるアラキドン酸(オメガ6系脂肪酸)から合成される生理活性物質です。
プロスタグランジン(PG)
COX(シクロオキシゲナーゼ)経路によって合成され、炎症や発熱、痛みの発生に深く関与します。例:PGE₂ は血管拡張、発熱などを引き起こし、急性炎症の症状に関与
トロンボキサン(TX)
同じくCOX経路で生成され、血小板凝集や血管収縮を促進する作用があります。ロイコトリエン(LT)
LOX(リポキシゲナーゼ)経路によって合成され、気管支収縮、血管透過性亢進などにより炎症を増悪させる作用が強いものが多いです。
アラキドン酸(n-6系)から生成されるエイコサノイド
一般に炎症を促進する働きが強い
しかし、必ずしもすべてが「悪」ではなく、組織修復などに必要な場面もあります。
1-2. n-3系脂肪酸由来のエイコサノイド・レゾルビン・プロテクチンなど
EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)といったn-3系脂肪酸からも、プロスタグランジン様物質やロイコトリエン様物質が生成されます。
ただし、n-6系よりも炎症促進作用が弱い(もしくは働きが異なる)傾向があります。
さらに、n-3系脂肪酸の代謝産物として合成されるレゾルビン(Resolvin)、プロテクチン(Protectin)、マレシン(Maresin) などは、炎症の終息や修復に重要な役割を果たすことが分かっています。
これらは解決相メディエーターと呼ばれ、慢性炎症や過剰な炎症を抑える可能性が注目されています。
2. 脂肪酸バランスと炎症
2-1. n-6系 vs n-3系のバランス
人の体内で合成されるエイコサノイドは、主にn-6系脂肪酸(アラキドン酸)を基質とします。n-6系脂肪酸が過剰になると、炎症を促進する物質が多く産生されやすくなる傾向があります。
一方で、n-3系脂肪酸(EPA, DHA)が十分に供給されると、EPAやDHAを基質とするエイコサノイドやレゾルビン等が作られるため、抗炎症もしくは炎症緩和に働く可能性が高まります。
現代の食生活ではn-6系脂肪酸が過剰になりがちで、n-3系の摂取が不足する傾向があります。このアンバランスが慢性的な炎症に寄与しているという説もあります。
2-2. 飽和脂肪酸・トランス脂肪酸との関連
飽和脂肪酸(主に動物性脂肪に多い)が過剰に摂取されると、インスリン抵抗性の亢進や慢性炎症が増強する可能性が指摘されています。
トランス脂肪酸(一部の加工食品に含まれる)は、慢性的な炎症、心血管疾患リスクの増大などとの関連が示唆されています。
3. 細胞膜のリン脂質と炎症
3-1. リン脂質からの脂肪酸放出
炎症が始まる際には、ホスホリパーゼA₂(PLA₂)によって細胞膜のリン脂質からアラキドン酸などが切り出されます。これがエイコサノイド合成の第一ステップです。
PLA₂の活性が高まると、より多くのアラキドン酸が放出され、炎症メディエーターの合成が促進されます。
3-2. 膜リン脂質の脂肪酸組成
細胞膜リン脂質中のn-3系とn-6系のバランスは、体内で合成されるエイコサノイドの質・量に影響します。
食事からのn-3系の十分な摂取は、細胞膜にn-3系を取り込み、PLA₂で放出される基質がn-3系寄りになり、より炎症を抑える方向のメディエーターが生成されやすくなります。
4. スフィンゴ脂質(セラミドなど)と炎症
4-1. スフィンゴ脂質とは
スフィンゴ脂質は細胞膜に存在する脂質の一種で、セラミドやスフィンゴミエリンなどが含まれます。これらは単に構造成分であるだけでなく、シグナル伝達にも深くかかわっており、炎症やアポトーシス、細胞増殖などに影響を及ぼします。
4-2. セラミドと炎症
セラミドは、TNF-αやIL-1βといったサイトカインのシグナル伝達過程で生成されることがあり、炎症シグナルを増強する方向に働くことが多いとされています。
ただし、セラミドは細胞死(アポトーシス)や分化の制御にも関与するため、一概に「悪い」だけとは言い切れず、状況に応じて多様な役割を果たします。
5. コレステロールと炎症
5-1. LDLコレステロールの酸化と炎症
LDL(低比重リポタンパク)が酸化LDL(oxLDL)になると、マクロファージへの貪食を通じて泡沫細胞が形成され、動脈硬化の進展に関与します。
動脈硬化は血管壁の慢性炎症と言われており、脂質異常症(高LDL血症など)は全身的な炎症リスクを高める要因の一つと考えられます。
5-2. HDLコレステロールとの関係
HDL(高比重リポタンパク)は、コレステロールの逆転送作用(末梢組織から肝臓へのコレステロール輸送)を担っており、動脈硬化や炎症を抑制する方向に働くとされています。
ただし、慢性炎症が強い環境では、HDLの機能が低下(炎症による修飾)してしまうことも報告されています。
6. 抗炎症作用を高めるアプローチ
6-1. 食事によるn-3系脂肪酸の摂取
魚油(EPA、DHAが豊富)やエゴマ油・亜麻仁油(α-リノレン酸が豊富)などの摂取により、n-3系脂肪酸の体内濃度を高める。
炎症メディエーターのバランスを変化させ、過剰な炎症反応を抑える可能性がある。
6-2. n-6系の過剰摂取を控える
リノール酸を多く含むサラダ油や大豆油、コーン油などの過剰摂取は控えめにすることで、アラキドン酸由来の炎症メディエーター過剰産生を抑制する可能性がある。
6-3. 抗酸化物質の摂取
ビタミンEやポリフェノールなどの抗酸化物質は、酸化ストレスを低減し、脂質の過酸化(酸化LDLの生成など)による炎症を抑えるのに寄与する。
6-4. 適度な運動と生活習慣
運動は脂質代謝を改善し、慢性的な炎症状態を緩和する効果がある。
規則正しい睡眠やストレス管理もサイトカインやホルモン分泌を正常化し、炎症の悪化を防ぐ方向に働く。
7. まとめ
エイコサノイドを中心とした脂質メディエーター
n-6系脂肪酸(アラキドン酸)由来:炎症促進の強いプロスタグランジンやロイコトリエンを産生。
n-3系脂肪酸(EPA、DHA)由来:比較的炎症促進作用が弱いプロスタグランジンや、解決相メディエーター(レゾルビンなど)を産生し、炎症を収束させる。
細胞膜のリン脂質の脂肪酸組成
食事によるn-3系/n-6系のバランスが、炎症反応の強弱に影響。
スフィンゴ脂質(セラミド)やコレステロール
スフィンゴ脂質は炎症シグナルの制御にかかわる。
酸化LDLなどは動脈硬化(慢性炎症)の発症・進展に寄与。
抗炎症を高めるためのアプローチ
n-3系脂肪酸の摂取(魚油、エゴマ油など)
n-6系の過剰摂取を控え、脂肪酸バランスを適正化
抗酸化物質の摂取、生活習慣の改善(運動、睡眠、ストレス管理)
脂質は単なるエネルギー源や細胞膜の構成成分というだけでなく、炎症の制御において重要な役割を担っています。
脂質の代謝経路や摂取バランスを理解し、適切にコントロールすることで、炎症を過剰化させず、逆に抗炎症・炎症の終息を促すことが期待できます。
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