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『ルート29』を観た

ふとコンビニに立ち寄ってみると
クリスマスケーキの予約が始まる広告を目の当たりにする
いよいよ今年も終わるんだな、という実感がふつふつと湧いてきたところで帰路につく


「土曜の夜はレイトショーに限る」
と誰かが呟いているのを目にした
友達と別れた直後、家から一番近い映画館へ足を運ぶ

最近、鑑賞した『こちらあみ子」の大沢一葉がこの作品に出演していることを知った
「タイムリーやな…」と何かの縁を感じてすぐに観に行くことに決めた


どこか一風変わったような
そんな狂気じみた世界のロードムービー
彼女らのように社会に上手く適応できないキャラは惹かれるものがある

開始早々に流れるサントラがすごく印象に残る
ピアノの音を中心に頭の中にスッと入ってくる
とても心地いい感触

それに絵作りがかなり好みだった
寂れた田舎の何でもないような風景
緑が広がっているわけでもない
大自然の美しさの欠片もない
しかしながら、構図といい、対照的に撮っているところに好感を持った


タイトルにもある29号線
幻想的で現実からはかけ離れた夢の中を駆け回っている気分に陥った
これが " あの世 " なのか…みたいな………
そこで出会う人物はみなまるで息をしていないようにも感じられた
ファンタジーな世界観なのにも関わらず、常に死が隣り合わせている

姉がトンボにひたすら話しかけるシーンが個人的な山場であった
適当に割り切ってやり過ごせばいいものを割り切れずに苦しむ人間の姿
この世界の生きずらさみたいなものを言葉にしようとする場面は特に印象的
フォロワーもタイムライン上で触れていた、正に " 支離滅裂 " の様子
「人間に興味がない」とまで言い捨てられるのもインパクトある
個人的にはトンボも口には出さないだけで思考は似ているのかもしれないと解釈できた


というか、綾瀬はるかがここまでコミュニケーション不全な役柄も新鮮
本作では全体の登場人物の表情にもほとんど変化がないように伺える

MUKANJO

大沢一葉はとにかく素敵だった
ちゃんと彼女自身の色がある上に見応えがある
最初から最後まで自分を貫いている
(映画で子役デビューを果たした彼女が作品を重ねるに連れて物理的な成長が目に見えてくるのはいいよな…とも、純粋にそう思わせてくれる)

正反対に見えるこの2人でも旅路を経て
最後には心を通わせていくところもポイント



何かのために旅をするのではなく
生きていく中で時間を消費して誰かに寄り添うことで何か気づく
現実の自分と重なる箇所がいくつかあって、気づけば涙が流れていた
誰かといる幸せを押し付けるのではなく誰かといる時間を大切にできる幸せ


『こちらあみ子』は現実味が溢れるテイストで胸糞悪い雰囲気もあった
対して『ルート29』は目に映るものをすべて美化して綺麗に映し出している


鑑賞後、

なんかもう自分の携帯ごと捨てたくなったな

あの映画の世界に一瞬でも憧れてしまう自分が、
間違いなくそこにいた


SNSを通じて、不必要な情報ばかり入ってくる現実世界で息をしていては、そりゃ息詰まることもあるよなっていう、それくらい濁ってなかった

Twitterとかインスタをやっている自分が馬鹿らしくなってくる、そう考えさせられるほど凄まじい勢いに飲み込まれた


「死んでてもまた会おうな」
「こんな自分を嫌いたいわけじゃない、毎日少しずつ許して、その度に大切なものが欠けている」
って台詞、すげぇ心の奥底に刻み込まれた


簡単には言えない
近くにいなくても繋がっているの具現化みたいな、ね

あといい意味で邦画っぽくないんよな………
それもかなりよかった

あとから調べてて知ったけど
『ルート29、解放』って原作は詩集なのね

やけにアート性があるというか
台詞一つ一つに重きを置いていたイメージ


言葉で通じ合って喜怒哀楽を表現できて
時には意思疎通ができて繋がることができる

言葉を大切にしたい、そんな自分も大切にしたい
自分自身のためにこれからも言葉を積み重ねていく


明日からまた仕事
毎日なんとなく生きるのも悪くないやろ



ほなまた……。

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