庭のビニールプールと、妹にあやまらなければならない「隊長システム」の話
昔...俺が小学生であった頃、ジャパンの夏は今より相当に涼しかった。気温が30度を超えることはぶっちゃけ珍しいことで、「水温が低い」とかいう、今思えばわけのわからない理由で学校のプール授業はほとんど中止。結果、家族連れでごった返す公共施設のプールは、トイレとプールの違いを理解できない未就学児たちの『おしっこパラダイス』であり、その水は“限りなく透明に近いイエロー”であった。
そんな中、母が膨らませてくれたビニールプールに水を満たし、人目につきにくい裏庭で楽しむ水遊びは、籾山家の夏の風物詩であった。冷たい水に半身をつけてパチャパチャとやり、浮き輪をつけて隣でプカプカ浮いている妹と水を掛け合って遊ぶのである。
そう俺には妹がいる。その名前はあかねという。俺は大変妹に優しい兄であった(今でも優しくしているつもりだが、嫁に行って子育てに忙しいので、最近はあまり会っていない)。どのぐらい優しかったというと、時に責任ある立場を任せたのである。それは俺たちの間で「隊長」と呼ばれる地位であり、それはものすごくえらいということだ。普段俺がいばっているのは、兄だからではなく、隊長であるからという理論である。それが隊長システムに他ならない。隊長はものすごくえらいのだ。
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