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種族解説:エルフ

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エルフは古き種族であり、ドワーフよりも早くハルクウーベンに栄えた民である。彼らは歌と星空を愛し、秩序だった世界を求める種族だ。上古かみふるよりも昔の時代…まだ人間が文字はおろか、言葉さえ知らなかった太古の黎明において、人の子らに言葉と歌を贈ったのがエルフであると伝わる。人間は、エルフやドワーフといった種族の助力があってこそ生存し、文化文明を発達させるにいたった。野人が昔ながらの暮らしをそのまま送っているのを見れば、文明諸国を興した人間の先人たちがエルフやドワーフから施された恩恵がいかほどであったか想像できよう。

こんにち、エルフと人間の交流はドワーフと人間の交流と比べてすこぶる珍しいものとなっている。エルフはその数を減らし続けており、残った者たちも、ほとんど人間と交わろうとしないからだ。

エルフは、人間に伝わる多くの伝説で不死と謳われるほど長命で、老化も極端に遅いため、人の子の目には永遠の若さと年ふりた知恵とが同居する、極めて美しい種族と映るだろう。事実、彼らの言葉は理知に溢れ、立ち居振る舞いも優美極まりない。

エルフは人間たちの間でなかば伝説的な存在となりつつあるが、現在でもなお、エルフが人間の町を訪れることも皆無ではない。ただでさえ稀他人まれびとは人々の耳目じもくを集めるものであるが、エルフ到来となれば、すぐに町中に噂が広まることだろう。庶民たちはおろか貴族であっても、エルフを見たことがある者は少ないからだ。

それゆえに、冒険者として流浪するエルフの中には、自らの出自を偽る者も少なくない。しかしながら、エルフ特有の麗しい顔立ちや優美な立ち居振る舞い、あるいはにじみ出る雰囲気を隠し切ることは難しく、エルフを知らぬ者は騙せても、エルフを見たことがある者にすれば、その正体を見破ることは難しいことではないだろう。

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その長い寿命から、エルフは物事の探求と研鑽に他種族の数十世代分に値する時間を費やせる。その結果エルフは、優れた剣士、職人、学者、建築家、芸術家、魔術師などを多く輩出してきた。エルフの中には優れた盗賊も存在するが、それは彼らが他人の物を盗む必要性からではなく、手業の芸術としての盗みに魅入られているからだ。

エルフの芸術は、繊細さと優美さが身上だ。歌と楽の音は精妙極まる和音で恍惚を呼び起こし、身衣みごろもの刺繍は光を受けてとりどりに色を変える。森深く建つは、幾重ものアーチに支えられた尖塔の群れ。それを目にした者は、機能美に溢れ、幾何きか紋様もんように彩られたドワーフ様式にはない有機的な麗しさに息をのむことになろう。

もちろんこれは、彼らが分けても情熱を注ぐ古き芸術……魔法においても同じだ。エルフの魔術師は総じて魔導師メイジと呼ばれ、人の用いる魔力よりはるかに精錬された力を操るという。エルフの魔法のわざは、悠久の研鑽によってしか達しえない高み(あるいは深み)に到って久しく、しばしば自身の力を制限して用いるとまで言われている。

エルフの長命と修練への執着がもたらす極致の一つと呼べるのが、魔法剣士の存在であろう。時間の流れが緩やかであるゆえに、そしてまた習得に対して偏執的な情熱を持つがゆえに、エルフは魔術と剣術の道をそれぞれに極めることができるのだ。

また他種族であれば多数の専門家が必要な分野……たとえば建築においても、エルフであれば単身で多くの分野に精通できる。問題は時間の感覚で、エルフの設計をもとに施工をしたとして、それを実行できるのは設計者と同じ時間の流れに生きる同族の職人たちだけだ。家を建てるに“種をまき、それが大樹となるのを待ってからその間伐材を用いる”感覚や、“育ちゆく樹木の根を用いて石を切り出す”といった発想自体、人間やドワーフの理解できる範疇を超えているのである。

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このように、エルフはさまざまな点で他種族に優越した文化と技術を持つが、それゆえにエルフはひどく高慢で、他種族をひどく見下しているか、良くて子供扱いするものだ。そうでないエルフでも、友誼を結んだ他種族が(彼らの基準では)あまりに早く死んでしまうため、悲しみを恐れて接触を持ちたがらない。逆に言えば、人間と共に暮らしたり、冒険者として人間らと各地を放浪するようなエルフはよほどの変わり者だが、現在人間が関わりを持てるエルフは、こうした変人のたぐいに限られている。

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