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種族解説:ドゥルゴリア(邪悪なるドワーフ)

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ドワーフの歴史からその存在ごと抹消された民がいる。自らをドゥルゴリア…彼らの言葉で“堅忍するもの”と称するこの民は、ドワーフの暗き側面をことごとく体現した種族と言えよう。

不浄ヶ原…彼らの名でいうところの灰土原はいつちはらの東側には、刺々しい漆黒の防壁がごとく連なる黒顎くろあぎと連山がそびえ、この穢れきった荒野とそれ以外の土地を隔てている。黒顎連山は草木一本生えぬ険しい岩山であり、麓から吹き上げる冷たい砂風を受けるたび、女の悲鳴にも似た風鳴りを起こすことで有名だ。

連山でもひときわ高く聳える山は原山はらやまと呼ばれ、ドゥルゴリアの故郷にして本拠である。天空に向けて突き立てられた悪意の槍がごときその頂には灰の雪が降り積もり、内部はおろか、その斜面までくまなく要塞化されているのだ。

原山からは数えきれないほどの煙の筋が立ちのぼるが、それは噴煙ではない。これらの煙はいずれも炉から出る排煙であり、山の内部で無数の炉が休むことなく稼働している証である。

縦横に走る坑道と居住区、鍛冶場と工場、そして拡張を続ける防衛施設により、原山はほぼ空洞に近い状態までくり抜かれている。昔日彼らの奉じた倫理や道徳こそ完全に狂っているものの、彼らは優れた採掘師にして建築家であり続けてきた。太古のむかしから伝わる技法をことごとく継承しつつも邪悪に歪めた暗黒のたくみたちは、見る者が怖気をふるうほどの悪辣な意匠で要塞を彩っているのだ。

ドワーフの砦町はそれぞれに個別の王をいただくが、原山のドゥルゴリアたちの場合、区画や層ごとに王が存在する。原山はそれだけ人口が密集しており、居住区の数も、坑道の長さも、鍛冶場と炉の数も、地下畑と井戸の数も、それぞれの区画や層ごとにドワーフの砦町ひとつと同じ規模なのだ。

それゆえ原山には複数の王が同時代に存在するが、その中でも別格と呼べる玉座が二つある。一つは、“決然たる”ゴズモント王の息子、“逆巻く髭”ロムグルツの治世から世代を超えて受け継がれる原山の筆頭玉座であり、それは原山の最深部に造られた王の間にある。

そしてもう一つが、彼らの守護神たる〈隠遁者〉の聖骸が鎮座まします神座かんのざだ。ザルガ=ドゥル=アムン最期の王にしてドゥルゴリア太祖……“決然たる”ゴズモント王の亡骸が今や聖域として封じられたザルガ=ドゥル=アムン王の間に腰を落ち着け、暗黒の虚無を見つめ続けている。

ゴズモント王の魂は原山に留まり、〈隠遁者〉の名で知られるドゥルゴリアの神となった。〈隠遁者〉は今なおドゥルゴリア王たちとその民を導き続けており、その御意志みむねは妖術師らを介して原山の王たちに届けられる。

王たちはそれぞれに相応の権力を持つが、特に重大な案件については、筆頭王たる原山の王にはからねばならない。彼らの統制は昔日のドワーフを想起させ、道義を重んじる気質と友愛の情は(発露の仕方こそ変わったが)、いささかも減じていない。

太古から上古にかけて、ドワーフたちは資源と空間を求めて砦町を方々にひらいたが、ドゥルゴリアは本拠を延々と拡張する方策を取り続けてきた。外部への移住や拠点の増加をする代わりに、子を増やし、いかなる敵にも陥としえぬ最上級の要塞を原山に作り上げ、その地下を掘り進めてきたのだ。すでに彼らは原山とその地下をとうに掘りぬき、黒顎連山の南北を繋ぐ勢いで広がり続けている。

だが堅忍の時代は終わりを迎えつつある。人口が増え、統制を再構築し、復興どころか発展をなし、今までになくドゥルゴリアは力をつけているからだ。

最近の情報によると、ドゥルゴリアはかつての仇敵であるケ=チャ湿地帯のヴァルアーテと結び、近年急激に力をつけるギルカトラス帝国の使節も受け入れたという。彼ら邪悪の連合が、ドワーフや人間、そしてわずかに残るエルフたちへ矛先を向けるのは、もはや時間の問題であろう。

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ドゥルゴリアが果たしてどこからやってきたのか。彼らはなにゆえに他者への飽くなき憎悪に駆られ、こと、かつての同族への報復と復讐を誓うに至ったのか。その答えを知るには、ケイポンにあるギムレス大図書館に収められた一冊の禁書を紐解かねばなるまい。

『おしびろ連山の破戒』と名付けられたこの書物は、その忌まわしさゆえに不出とされ、現在では、当時を記憶するエルフや年代記に触れられるドワーフの長老らは別として、人間の間ではごく一部の歴史家らの間で存在が知られるのみだ。かかる措置の背景に、現存する砦町を治めるドワーフ王族らの意向が強く働いたことは明白だ。人間に対して、種族の恥を後世に伝えないよう請願し、その代わりに、何らかの返礼を約束したに違いあるまい。

だが今回、ギムレス大図書館の特別な計らいにより、読者諸兄には真実の一片を届けよう。

なお、君の友人にドワーフがいる場合、ここで知った情報は絶対に共有しないこと。そのドワーフは君を裏切者か狂言者とみなして罵詈雑言をぶつけ、自身の斧に手をかけてでも、君との友情を断ち切るであろう。
これは、彼らの信じてきたもの(あるいは信じ続けようとしているもの)を真っ向から否定する隠された真実であり、ドワーフのような民にとっては到底受け入れられない事柄だからだ。

読者へ宛てた重要な覚書

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