ペイント大全ショウケース:クレリック パート6(丸めた毛布/乳白色系の布)
よくぞ来た。前回、革部分のペイントまで進んだクレリック。今回は、背中に背負う毛布のペイントを進めるとしよう。
冒険者はなぜ毛布や荷物を山ほど持ち歩くのか
冒険者ミニチュアの代名詞といえば、たくさんの荷物。クルクルと巻いた毛布や寝袋といった寝具を鞄と一緒に背負っているミニチュアは特に多い。寝具の素材は、冒険者の種族や文化や、旅をしている場所の気候風土、そして冒険者の懐具合によっても変わるだろう。動物の毛皮だったり、詰め物をした布だったり、あるいは厚手の綿や麻、あるいは毛糸の織物だったり……。寝具の素材が何であれ、気温の変化に十分な対策を取れているかどうかは、しばしば冒険者の生死を分かつものになる。
寒さへの対策をしておかなければ、いかに強い冒険者であっても、一度眠ればそのまま凍死するだろう。何枚もの重ね着で体温を保持し、また、睡眠の際には焚き火などで暖を取りつつ、毛布で温度を保たねばならぬ。たとえ雪の降りしきる季節であっても、野宿を強いられるのが冒険者の常なのだ。何も知らないジョン・スノウでも、厚着の重要性は知っていた。ゲーム・オブ・スローンズを観ろ。
砂漠も、夜になれば氷点下近くまで気温が下がりうることを覚えておくとよい。暑いからといって薄着で出かければ最後、昼間は太陽に肌と目を焼かれ、夜はガタガタと震えながら死ぬ。暑い場所だからこそ、厚着の用意が必要だったりするのである。現実世界の砂漠もそうだ。アメリカのカルフォルニアにある「死の谷」DEATH VALLEYにおいては、昼夜の温度差が41度に達した記録がある。砂漠を舐める奴は死ぬ。U.S.A.ならなおさらだ。
放浪生活の途上にある冒険者たちが、ふかふかのベッドに寝転がれる機会はあまりない。町や村にある宿屋で大枚をはたけば、清潔な羽毛布団の柔らかい寝所で何晩かはスヤスヤと眠れるかもしれないが、そんな生活は長く続かないだろう(金があっという間に底をついてしまうからだ)。そんな訳で、冒険者は野宿がつきものである。街道沿い(街中の場合もあろう)で野宿をしたり、あるいは、敵や獣のうろつく危険な森や洞穴の中で、ひとときの野営をするわけだ。
冒険者ミニチュアの多くが、背中や腰にたくさんの荷物を持っているのには理由がある。「自分の荷物は自分で持つ」のが冒険者の基本だ。荷物を運ばせる従者を雇うことはできても、その従者がいつ死体になるかわかったものではないしね。とはいえ、快適な野外生活を満喫できるほどの荷物を背負って歩くことも難しい。なぜならファンタジー世界においては、いつモンスターに襲われるともしれないし、ダンジョンなどでは仲間とはぐれる危険もあるからだ。だから冒険者は必要な荷物は自分で持ちつつ、余剰分(あると便利なものや、追加の水や食料、装備品など)を従者に運ばせるわけさ。
『バックパッキングとは、何を持っていかないかの策略のことである』と、かの高名なメイベル男爵はおっしゃった。しかも、ファンタジー世界は現実世界と違う。カッチンエッジなアウトドア用品は発達していない上、怖いモンスターがウヨウヨしている。冒険者は、自分の懐具合、体力、戦闘時の備え、そして野外生活に必要な物を吟味して、うまいことやらなきゃならんわけだ。
また、安全に眠れる場所を見つけることは、ファンタジー世界において非常に難しいものとなる。場合によっては、火をたけない場所での野宿もありうるだろうし、窪地や木のうろ、岩陰で眠ることもあろう。焚き火やテントすら贅沢となりうるのだ。それゆえに冒険者は、自分用の小さな毛布をいつでも持ち歩き、狭い場所でも確実に暖を取れるようにしているってわけだ。
冒険者のミニチュアを背中から見ると、彼らがどんな装備の選択をしているかで、何を重んじて、何を切り捨てているかが見えてきたりもするよ。手元の冒険者ミニチュアの装備を、ぜひ君も見直してみてくれ。そこにドラマがあるから。
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