見出し画像

幻想世界の窓辺から:ベースデコレート、ジオラマ、そして情景モデルの歴史と変遷

<<<ハーミット・カウンシル総合もくじ
<<<ペイント大全総合もくじ
<<<🔰趣味人への道(初めての人はこちら)

ミニチュアのベースを彩り、臨場感とドラマをもたらすこと…英語ではBasing、日本語ではベースデコレートと言う。それは小さな、しかし確かな世界創造の楽しみである。

その技法は、昔から今まで連綿と積み上げられてきたノウハウの上に成り立ってきた。様々な素材を駆使してベースデコレートし、ペイントし、実感ある情景を作ることは、ミニチュアペイントはもちろん、ジオラマや情景モデルの根底に流れるもの…想像と創造の楽しみそのものだ。

どんな色でペイントするかはもちろん、ミニチュアの立つ地面がどんな場所かで、作品が放つ印象や語るドラマは大きく変わる。ベースデコレートは、ペイントと同じく、趣味人の想像力と創造力を活かす絶好のチャンスだ。

石畳の上に立つ魔女にもなれば…
森の中をうろつく魔女にもなる。


ドラゴン。大型なのでベースに情景がある。
このまま仕上げてもいいけど…
もうちょっとドラマチックにできないか?
ベースデコレートすると、実存感と臨場感、安定性も超すごい!

幻想世界の窓辺から」シリーズの一つとして、今回はベースデコレートの歴史とシーンでの変遷、そしてジオラマと情景モデルについて掘りさげてみよう。

それじゃあ始めようか!


人生もペイントもベースデコレートも色々

オールドスクールファンタジーミニチュアの国内シーンも、かなり層が厚くなってきた。趣味人たちが思い思いに想像力と創造力を巡らせ、素晴らしい作品の数々を仕上げている。

2017年から毎年開催されているペイントコンテスト「ベイルファイア」の歴代参加作品を見れば、趣味人たちが本気で取り組んだ素晴らしい作品の数々を見ることができるだろう。



ベースデコレートの歴史

ベースデコレートは、ミニチュア製作と同じだけの歴史を持つと言っていい。ミニチュアのベース上に情景を作るという楽しみは、シタデルミニチュアがプラベースを考案したことで良い大きな広がりを生み、世界各地のシーンへと広がっていった。

ベースの歴史と変遷については、以下記事に詳しくまとめてあるよ。

ゲームズワークショップの70年代〜現在までの動きは以下で。

さて本題に戻ろう。ミニチュアの造形やペイント方法と同じく、ベースデコレートにも、時代ごとの「トレンド」ともいうべきアプローチの変遷がある。ゲームズワークショップのペインター部門、ヘヴィメタルチームが手がけたシタデルミニチュア公式作例を例に、ちょっと眺めてみよう。


ペイントはコリン・ディクソン。
ゲームズワークショップ初の
フルタイム・ペインターだ。

80年代中期。シタデルミニチュアがプラベースに載ってからは、フロック(粒の大きいカラーパウダー)を使ったベースデコレートがホワイトドワーフ誌やウォーハンマーのサプリメントに登場し、当時のスタンダードになった。

上のドワーフ魔術師なんかはその典型。フロックを上面にふりかけ、ベースのハカマ(横部分)を黄緑でペイントするのがトレンドだったんだ。これは当時、大掛かりなバトルショットを撮影するときに、フロックでベースを埋めてから撮影していたからというのが大きい。ハカマが黒いと、覗いた時に目立っちゃうもんな。


エキサイティング!

こんな風情だ。ミニチュアも情景モデルも台座がフロックの海に埋められ、まるでジオラマみたいな佇まいだね。今みたいにPhotoshopで修正もできない時代だ。撮影スタッフはミニチュアを並べ、一つ一つをフロックで埋めていたのである。


黒ハカマのミニチュアはマイク・マクベィによる改造とペイントがなされたもの。
ベースデコレートも含め、ひときわ目立つ別格の仕上がりだ。

80年代も後半になってくると、フロックではなく、細かいサンドを使うベースデコレートにトレンドが移行しはじめる。フロックは湿気を吸いやすく、ホコリがつきやすいためだ。

上のミニチュアたちは、どれもサンドで同じようなベースデコレートがされてるね。ハカマは基本黄緑だけど、塗り込まれた単体ミニチュアのハカマだけが黒だ。そしてページ下段は、茶色いフロックでベースを隠してのシーナリーショット。


レルム・オヴ・ケイオスのカラーセクションでも活躍した。

このシンプルで無個性なベースデコレートが流行したのは、部隊、あるいは軍勢としてまとまった時の統一感が大切にされたためだ。上は、88年から90年代前半までヘヴィメタルチームに在籍したイヴァン・バートレットによるケイオスウォリアー・オヴ・ナーグルのユニット。


中段は「火吹山の魔法使い」レンジ。

80年代中期から後期にかけては、様々なベースデコレートが入り乱れた。ウォーハンマーで戦場となじみやすくするためにハカマが黄緑になる一方、気合を入れて塗ったミニチュアのハカマは黒という、ナゾの不文律みたいなものもあったんだ。たとえば上はウォーロック誌に連載されたメタルミニチュアの紹介記事だけど、これは過渡期にあたる。ハカマは黒で、ベースデコレートはフロックにバラスト(小石)を散らしたものが多いね。


ここから先は

7,589字 / 33画像

オールドスクールファンタジーミニチュアとミニチュアペイントのすべて! ハーミットインが展開する全有料…

コンプリートプラン(ハーミット・カウンシル+ペイント大全)

¥1,000 / 月

寄せられたサポートは、ブルボンのお菓子やFUJIYAケーキ、あるいはコーヒー豆の購入に使用され、記事の品質向上に劇的な効果をもたらしています。また、大きな金額のサポートは、ハーミットイン全体の事業運営や新企画への投資に活かされています。